2005-01-26 WED.


さて、1952 年って言うと Chicago に出てきた Otis Spann がマディのバンドに入り、同じく Matt Murphy も Chicago に来て Memphis Slim のバンド入り、そして2004 年、青森市でのライヴをやった Willie Kent もこの年に Chicago に「現れた」とされてたんじゃなかったっけ?さらに、この年 Chicago に、ってのが Hound Dog Taylor の Houserockers でお馴染みの Brewer Phillips、それから Jesse Fortune もですね。あ、逆に Willie Cobbs はこの年から「州兵」の軍務につくため Chicago から「消えて」いますが。
そしてちょとちゃう方面(?)ですが、Lonnie Johnson はこの年に、イギリスに渡った最初のブルースマンとなってますねえ。

で、この年に生まれたレーベルもあります。
まずはこれまたみなさんお馴染みの Sam Phillips の Memphis Recording Service が、3 月21日のアメリカ初のロックンロールにまつわる「暴動」(例のペイオーラ事件で失脚する人気 DJ、Alan Freed の企画した Cleveland の Moondog Coronation Ball での「争乱」で、これがアメリカの保守層に「ロックンロール=悪」という刷り込みを補強したんじゃないでしょか)直後の 3 月27日にスタートさせた Sun Records。その年に Joe Hill Louis や Maxwell Street Jimmy Davis が Sun に吹き込み。
そして本稿でもお馴染みの Bihari Brothers の四人兄弟( Saul、Jules、Joe、そして Lester )のうち、社内では一番軽いポジションにいた末っ子の Lester が本拠である西海岸を離れ、Tennesse 州 Memphis で創立したのが Meteor で、先の Elmore のセッションもこの Lester のセッティングによるものだったようですが、しかし現場(のプロデュース)はすぐ上の兄 Joe が取り仕切ってるんだよね。すぐにリリースされなかったのは、そこらの力関係もあったのかも?

そしてその Meteor と同じ Tennessee 州ながら、こちらは Nashville で Ernest Lafayette Young、つまり Ernie Young が二年前に設立した Nashboro Records の傘下に「あの」 Excello を発足させたのが 1952 年 8 月のことでした。
ついでに(?)目についたこの 1952 年のレコーディングってえと、Little Walter が Checker Records から Juke と Can't Hold out Much Longer を出してます。Wilbert Harrison は例の大ヒット、Kansas City( Fury 1023 )だし、Eddie Boyd は J.O.B. から、かの名曲 Five Long Years をリリース。これなんて、実に 7 週間にわたって R&B チャートの 1 位に居続けたものです。
また、これも名曲と言っていい Willie Mabon の I Don't Know が Parrot に録音されたのもこの年。
もっと地味(シツレイ)なとこじゃ Big Joe Williams が Trumpet に Mama Don't Allow Me などを吹込んでいますし Homesick James は Lonesome Ole Train を吹き込み⋯

この 1952 年は大リーグの Southwestern International League に「初めての」黒人アンパイアが登場しています。
またイギリス首相 Winston Churchill が英国の核爆弾保有を発表。
日本の占領統治が終わったのもこの年で、西ドイツはイスラエルに対し巨額の補償支払いを決定。
アメリカでは大統領選挙が行われ Dwight D. Eisenhower が当選しています(余談ながら、その選挙戦のため、落選した方の候補 Adlai Stevenson を擁する民主党は TV 放送枠を 30 分買い取って公約などを流したのですが、局には I Love Lucy が見られなかったじゃないか!という抗議が殺到し、まさかそのせいじゃあないでしょうが 20 秒の CM だけにした Eisenhower が勝っております)。

てなところで Elmore James に話を戻しまして・・・
Chicago でのレコーディングは翌1953 年の 1 月17日にも行われ、ここでもメンバーは J. T. Brown のサックス、Johnny Jones のピアノ、Ransom Knowling のベースに Odie Payne Jr. のドラムです。ただし、これは前段でもちょっと触れましたが、Bihari Brothers によるものではありません。
そ、これが問題の(?) CHESS 録音なのよね。これと 1960 年の 4 月にもういちど CHESS に吹込んだナンバー(その時のバックはもちろん Elmore 以外全とっかえでしたが)、さらにナゼか John Brim のナンバーと組み合わせてリリースされた Whose Muddy Shoes を構成する曲が録音されています。
まず Country Boogie というインスト。これは後に Tool Bag Boogie と改題されて Whose Muddy Shoes に収められています。
続いては My Best Friend、そして See My Baby(アルバムでは I See My Baby になってますが⋯)。
さらに She Just Won't Do Right(これが問題のシングル Checker 777 で、「いったん」発売されたものの、Bihari Brothers からの抗議で回収したヤツですねえ。カップリングは Country Boogie。これもアルバムでは曲名が Dust My Broom になってます)と Whose Muddy Shoes の 5 曲を録音しました。
なんでまた Elmore が CHESS でリリースしたか、ってえとたぶん Bihari Brothers が録るだけは録ったけど、いっこうにリリースしてくれない、という事情があったのかもしれません。ま、ここらは、どのくらい不満に思ってたのか、本人にでも訊かなきゃ判りっこないんですけどね。

そんなことがあった後の 1953 年 4 月、ふたたび Joe Bihari のプロデュースにより、Chicago の Universal Studios でレコーディング・セッションが行われましたが、最初は Little Johnny Jones and the Chicago Hound Dogs(どひ~!)の名義で(つーことは、もちろんここでの主役は Johnny Jones で、もちろんヴォーカルもとってます) Sweet Little Woman と I May Be Wrong の二曲を録りました。これは Flair 1010 および Ace CH 68 としてリリースされています。
メンバーはそのまま、主役が Elmore に替わり、Elmore James and his Broomdusters 名義(ただし、いつものメンバーに Boyd Atkins のテナーあるいはアルト・サックスが加わっています)で Early in the Morning( Flair 1011、Kent LP 9010 など)、Hawaiian Boogie-ver. 2( Flair 1011、Kent LP 9010 など)、Can't Stop Lovin'( Flair 1014、Kent LP 9010 など)、Make a Little Love( Flair 1014、Kent LP 9010 など・・・この「など」ってのは例えば Red Lightnin' なんてえ他のアルバムにも収録されてる、ってこと。ここでは判りやすいので省きましたが LP とあるのはアルバムね)

次も同じメンバーで 1953年 8月に同じスタジオで
My Best Friend ( Make My Dreams Come True ): Kent LP 9010
Make My Dreams Come True-take 2: Kent LP 9010
Make My Dreams Come True-take 3: スタートを失敗
Make My Dreams Come True-take 4: Ace ABOXCD 4
Make My Dreams Come True-take 6: FL 162
Make My Dreams Come True-take 7: Flair 1031: Fire 1011: Ace ABOXCD 4
Strange Kinda Feeling-take 1: Ace ABOXCD 4
Strange Kinda Feeling-take 2: Ace CH 68: Ace ABOXCD 4
Strange Kinda Feeling-take 3: Ace ABOXCD 4
Strange Kinda Feeling-take 4: Ace ABOXCD 4
Strange Kinda Feeling-take 5: Kent LP 9010: Ace ABOXCD 4
Strange Kinda Feeling-take 6: Flair 1022: Ace LP CH 112: Ace ABOXCD 4
Dark and Dreary-take 1: Ace ABOXCD 4
Dark and Dreary-take 2: Ace CH 68: Ace ABOXCD 4
Dark and Dreary-take 4: Flair 1048: Crown LP 5168: Custom CS 1054: United US 716: United US 7716: Ace ABOXCD 4
をレコーディングしています。

続いては Joe Bihari がらみではなく、あの Atlantic の Jerry Wexler がプロデュースした Joe Turner のバックに Elmore James とピアノの Johnny Jones が参加しています。Chicago の Universal Studios で、他のパースネルはベースに Jimmy Richardson、ドラムに Red Saunders、これに Sonny Cohn のトランペット、Grady Jackson のテナー、Mack Easton のバリトン・サックスで 1953 年の10月 7 日に録音されたのが Oke-She-Make-She-Pop と TV Mama( Atlantic 1016 )。
そしてその直後の10月 9 日には Johnny Jones のためのセッションで、Chicago Blues 、Hoy Hoy ( Atlantic 1045?ただし後述の Blues Piano Chicago Plus 、ATLANTIC SD 7227 に収録されたのはそのシングルでリリースされたのとは「別な」ヴァージョンである、とする説もあります)、Wait Baby 、Up the Line ( Hoy Hoy とカップリングでリリース)の 4 曲をレコーディング。Chicago Blues とUp the Line の 2 曲では Elmore はアコースティック・ギターを使用しています。
他のパースネルは Blues Piano Chicago Plus ATLANTIC SD 7227 のライナーによれば J.T. Brown は「当確」かもしれないけど、他は不明となっており、ヒョっとするとオリジナル the Broomdusters ではなく、上の Joe Turner のバックの流用かも?と思ったのですが、そこに J.T. Brown が登場してるとなると、案外ドラムは Odie Payne、ベースは Ransom Knowlingっちゅう可能性だって無いとは言えません。

さらにこれも 1953 年の Chicago で、Junior Wells のバッキングをしています。他のメンツはピアノの Henry Gray、ベースの David Miles、ドラムは Fred Below で、Hoodoo Man と Junior's Wail の二曲で、これは States 134 としてリリースされました。

明けて 1954 年(何月か、またスタジオは不明)にはまた Joe Bihari のプロデュースで Quarter Past Nine を吹込んでいますが、この時のパースネルで判明しているのはピアノの Ike Turner とドラムの Odie Payne Jr. だけで、残りのサックス 2本、ベースは氏名不詳です。
さらに 1954 年の 3 月と 4 月に Chicago の Universal Studios では Raymond Hill のサックス(他にも氏名不詳のサックスが二人)、Johnny Jones のピアノ、Ike Turner のギター、Odie Payne Jr. のドラム(ベースも不明)で
Where Can My Baby Be-take 1: Ace ABOXCD 4
Where Can My Baby Be-take 8: Ace CH 68: Ace ABOXCD 4
Where Can My Baby Be-take 9: Kent LP 9001: Kent KST 538: United US 778 と 7778: Ace ABOXCD 4
Please Come Back to Me( Sho Nuff I Do ): Ace CH 68: Ace ABOXCD 4
Sho Nuff I Do (セッションの会話入り?) : Ace ABOXCD 4
Sho Nuff I Do ( alternate take ) : Flair 1039: Ace ABOXCD 4
Sho Nuff I Do: Kent LP 5022: Kent LP 9010: Ace ABOXCD 4
1839 Blues: Flair 1039: Kent 508: Kent LP 9001: Kent KST 538: etc.
I Got a Strange Baby (断片のみ) : Ace ABOXCD 4
Canton Mississippi Breakdown: Kent LP 9001: Kent KST 538: etc.
の各曲が録音されました。

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