Okie Dokie Stomp

Clarence "gatemouth" Brown


2005-04-15 FRI.


これまた例のライデンビンでございますが、いやあ Gibson Firebird Non-Reverse のハイ・フレット、いい音しておりますねえ。

あ〜さて、ワタクシ、これまでに何度か、そのノン・リヴァースのファイアーバードを「 IV 」と書いたことがあるよーに記憶しておるのですが、それはワタクシがその当時、参照した国内の某サイトがそう記述していたからでございまして、それをそのまま信じておりましたが、その後、本気で海外のサイトで当たってみましたところ、どーやらそれは「とんでも」なデタラメらしく、そもそも、Gibson Firebird には「奇数」の I、III、V、VII しか存在してないのですねえ。ショック!!

そして 1965 年から 1969 年にかけて、その各モデルにそれぞれ「 Non-Reverse モデルがあった(!)」のですねえ。
じゃあ、II と IV はどこ行ったんだ?ってえと、なんと Thunderbird Bass でそっちを使ってるっちゅーことなんざます。

Firebird I は 1 P.U.でテイルピース・ブリッジ、1V & 1T、ローズ指板はバインディング無しでドット・インレイのポジション・マーク。
それが III になると、2 P.U.で当然 2V & 2T で切り替えのトグル Sw が下のツノに貼られたピック・ガードの先端近くにマウントされており、チューン O マチックではなく、I 同様のテイルピース・ブリッジを使いながら金属板のスプリングを利用したヴィブラート・アーム(板状)が採用されています。したがってアームを使わないプレイヤーは I と同じように弦を巻き込んで使用していたようです。
ネックには細いながらもバインディングが施され、しかしポジション・マークはドットのまま。

それが V となると Tune-o-matic ブリッジが採用され(ただし 1963 年のごく初期の V モデルには III 同様のテイルピース・ブリッジがマウントされていたものがあるとか⋯)、ヴィブラート・ユニットのアームは丸断面となり、ユニットの金属製のカヴァーには飾り文字で「Gibson」が刻印されました。
III との一目で判る大きな違いはネックで、ポジション・マークが台形の(一部ではクラウン・インレイなどと言われているようですが)大きなものになったことでしょう。

VII は Firebird のトップ・レンジに位置するモデルで、Les Paul で言えば Custom、ES シリーズで言えば 355 に当たります。
当然、最高級モデルなワケですから、メタル・パーツはすべてゴールド・フィニッシュとなり、ポジション・マークはデカいブロック・インレイ、さらにその指板もローズウッドではなくエボニーが採用されました。そしてフレットまで違っていて、通常のフレットより幅広のものが打ち込まれ、出荷前に完全に調整されていた、と言われています。
で、そのまばゆいゴールドに光るピックアップは一個増えて 3 P.U.となりますが 2V & 2T のまま。

これらの I、III、V、VII の、いわゆるリヴァース・ボディの Firebird に共通しているのは「スルー・ネック(アメリカでは逆に Neck thru と表記する!)」と言われる構造、つまり一本の材からボディ中央部およびネック(指板は別貼り)を削り出し、それにボディの上下(つうか左右?)部分を後から「接着」して作られる、ということ。
そしてチューニング・ギアはすべてバンジョー・タイプのものが使用されています。
そして他の Gibson ギターに使用されているものとはまったく違う、より小さいサイズのハムバッキング P.U.(ポールピースが露出しないメタル・フル・カヴァード)を採用し、普通なら P.U.をマウントする際に使用されるプラスティックの枠(エスカッション)の代わりにこれも金属のプレートが使用されており、通常のエスカッションのような P.U.の上下調節の機能はありません。

ところが 1965 年から登場した各ヴァージョンの Non-Reverse モデルは、「意外なほど」違ってて、まず、Neck Thru 構造ではなくなっています。つまりボディは通常のギター同様の構造を持ち、それに Les Paul などと同様に「接着」する、というフツーの工法で作られているのです。
ペグは Fender などと同じ構造で普通の位置になり、使い易さは向上しました。
また I、III はそれぞれの各リヴァース・モデルとは「対応していない」部分として P.U.のアレンジが挙げられます。
Non-Reverse の I は 1 P.U.ではなく、P-90 が 2つマウントされ、さらに III では P-90 が 3つになります。
Non-Reverse の V はリヴァース・モデルと同じメタルのフル・カヴァードのハムバッキングを 2つ、そして VII では 3つとなりますが、共通している特徴としては、まずピックガードが下だけではなく、ボディ前半分を広くカヴァーする形状になったこと、そして P.U.の切り替え SW もトグルからスライド Sw に換えられております。
さらに最大の違いはそのネックで、すべてローズウッド指板の Non-Reverse Firebird はバインディング無しのドット・インレイが採用されています。

・・・と、ここまでくどくど説明すりゃ、みなさまもお判りのように、なんと 11フレットにカポタストをして、キー E♭で Okie Dokie Stomp を演奏しておる Clarence "Gatemouth" Brown が弾いているこのギターは、Gibson Firebird V Non-Reverse なのでございます。
もちろんヴィブラート・ユニットは撤去され、スタッド・ボルトに一見バダスのような各弦ごとにファイン・チューニングが出来る小さなノブが 6個ついたテイルピース(ワタクシの記憶が確かならば、これはひところ Gibson の SG などのテイル・ピースにも採用されていたハズ・・・でも、今回は資料に辿り着けず「未確認」でございます)をマウントしてあるようですねえ。

しかしまあ、それにしても 11フレットにカポタストとはまたずいぶん「もったいない」ギターの使い方⋯と思ったのですが、おそらくバックのホーンのみなさまに合わせて(単なる想像です) E♭のキーで弾くためにそーなっちまったのかもしれません。
でも、それで音がショボくなってるか?ってえとゼンゼンそんなことないのよねー。
ま、Gatemouth なりゃこそで、ワシらがやったらそーはゆかんのかもしれませんが。

でも、ドイツの TV スタジオでのライヴじゃ Washburn 使ってましたけど、やっぱ彼には Firebird です!

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