Angel of Mercy

Carl Weathersby


2005-05-23 MON.


三日連続になっちゃうけど、今日も Carl Weathersby の HOLD ON から。
このナンバーは、オリジナルの Albert King を「しっかり」意識したギターをモロ聴かせてくれます。
オープニングのギターは、そのトーン、チョーキングの「ありよう」に至るまで Albert King のテイストをたっぷり盛り込んでありますが、やはり、そこには Carl Weathersby ならではの「歌心」とでも言うか、より叙情的なカラーが滲んでいて、さらにウエットでチャーミングな滑らかさを感じます。
変なたとえだけど、より大人(?実際にゃこっちがう〜んと年下なんですけどね)っちゅう感じかな?

江戸川スリムさまもおっしゃっておられましたが、『鋭く突っ込みながらも粘っこいギター』は『弾きまくるのだけれど、押し引きがあって聴き疲れない』、というまさにそれでございます。
みなさま、お住まいになっておられる、それぞれのご家庭での事情はございましょうが、Dion Payton などと同様、このアルバムをお聴きになる際は、最近のシカゴのライヴ・シーンに合わせ、ヤワな引き戸など、ビビり出すほどの「腰の座った(?)」大音量で楽しんでくださいませ。 

Carlton Weathersby は 1953 年 2 月24日(カンケー無いけどワタクシは 2 月26日ですからほぼ 5 つ違いでおます)、Mississippi 州の Jackson で生まれています。
彼はそこで 8 才までを過ごし、やがて家族とともに Indiana 州の East Chicago に移って来ました。
おそらく出銭ランドのある浦安を東京都だと思ってるひとは多そうですが、ちょうどそれに似た関係というか、この East Chicago は Illinois 州の Chicago とは、もはや一体となったような「連続した都市」的ゾーンを成しています。
でも実際には本来の Chicago から Lake Michigan を左に見て南南東に下った、州境を越えてすぐのところにある「別な」街なのよね。
ただし、この街に来てからも、夏休みなどには Jackson の親類のところに戻ったりしていたようです。
その彼がギターに興味を持って弾き始めるようになったのは 10 代になってから、と言いますが、それには彼の父の交遊関係や親戚縁者の存在、またそれ以外にも周囲の環境が影響していたのかもしれません。

およそ彼の Biography では必ず登場する、有名な Albert King と、その Cross Cut Saw の逸話以外にも、まず彼の親類には Willie Dixon の Big Three Trio でピアノを弾いていた Leonard "Baby Doo" Caston がおり、その息子で CHESS から Voice Your Choice のヒットを出したソウル・グループ、the Radiants のメンバーだった Leonard Caston Jr. とは「いとこ」の関係だったようですし、さらに別な「いとこ」としては、あの G. C. Cameron もいました。さらに隣人は Hound Dog Taylor の「いとこ」だった・・・

注;稲荷町食堂 B.B. の Teacher 高橋氏によりますと、アメリカで Cousin と称するのは日本と違って、きわめて広範囲が含まれ、遠い親戚でも、そのよーに表現する場合がある、とのことでした。ですから、ここでの「いとこ」をすべて額面どおり、日本で言う「いとこ」と同じと思ってはいけないのかもしれません。

例の逸話が物語るように、彼は特に Albert King のギターを追いかけていたようで、その名残は今日の Angel of Mercy にも随所で表れておりますが、やがてその Albert King のツアーにリズム・ギター(つまり、「サイド」っちゅうほどじゃなく、リズムだけなら、って感じでしょか?)として同行するようになるのですが、それ以前の 1971 年から 1977 年までを、陸軍の兵士として「あの」ヴェトナムで過ごしています。
それ以外にも(ヴェトナム兵役との前後関係は不明ながら)製鉄所で働き、また警察でも働き、あるときは監獄の守衛の仕事もしていたようです。

その彼がフル・タイムのミュージシャンとして身を立てるようになったのは、あの Albert King のツアー・メンバーとして 1979 年と 1980 年、さらに 1982 年の経験をした直後、Billy Branch の Sons of Blues に、Carlos Johnson の後任ギタリストとして加入した時からでした。
そしてそこで 1996 年までの 14 年間を過ごした Carl Weathersby は遂に自らのデビュー・アルバム Don't Lay Your Blues on Me を EVIDENCE からリリースいたしますが、こっからの詳しいとこはゼヒとも江戸川スリムさまのページ*をご覧になってくださいませ。

なお、そこで見られるジャケットでの Carl Weathersby のギターですが、ちょっとオフ・センターな Fender Telecaster Custom(フロントには Fender 特有のメタルでカヴァーされたハムバッキング PU、でもセレクター SW. がレスポールみたいな位置についてて、ツマミ類も 2V/2T とギブソンっぽい)のメイプル・ネックで始まり、3 枚目では一転して Gibson Les Paul Standard Double Cut Plus( P.R.S. の元ネタになったみたいなソリッド・ボディのギター。MACさんのサイト もご参照くださいませ。そこでも解説されてますが、トップが湾曲成形されたメイプルで、そのぶん、内部に空洞ちゅうかスキマ?があります)となっています。
四枚目では同じ DC でも、カラーがグっと渋いウォールナット・カラーながら、おそらくキルテッド・メイプル(たぶんね)っちゅう豪華版になっててビックリ!
ライヴ盤はイラストなんで定かじゃないけど、これ Gibson の ES 335 TD っちゅうよりはゲイトマウスのシュツットガルト・ライヴ同様の Washburn に見えるなあ⋯

そして本作 HOLD ON ではドット・インレイの 335 ってワケですが、某サイトで使ってる画像じゃ、やはり Washburn を構えてるのが使われてましたから、それも一時期弾いてたようでございます。

江戸川スリムさまからの書き込みで、昨年、青森まで Willie Kent & the Gents を率いてきたその Willie Kent が病のため痩せ細ってしまったらしいことを知りました。
う〜ん、僅か一年でそんなことになるとは・・・

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