Otis Redding 5 BIO. V 2005-10-06 THU. | ところで、いったん時間軸を逆行するようですが、彼の私生活はどうだったのでしょうか? 彼の妻 Zelma Redding の回想によれば、彼は事務所を設け、そこでは普通の事業所ならばとっくに終業している時間になっても帰る者はおらず、様々な案件をめぐって午前 2 時ころまで白熱し、なかなか家には帰ってこなかったのだそうです。 しかし、それで家庭が不和になったような気配はなく、彼女にとっても Otis の夢を実現させるのが最重要課題として合意していたように思われます(ただ、これは公式なステートメントですから「内心どうだったか」については、神様にしか判らないでしょが)。 まず 1962 年に録音された These Arms of Mine が「本格的に」売れ始めた 1963 年から、次々とチャート・インするヒット曲を連発したおかげで、発売元の STAX/Volt はモチロン、Otis Redding 本人にも「充分な」金額が届くようになり、それをもって 1965 年に Otis は夢のひとつを実現しています。 それは生活することに追われ、苦しかった少年時代にはまさに適わぬ夢であった「自らの牧場を持つこと」、それを実現したのでした。 当時 Otis のマネージャーであった Alan Walden によれば、「 Otis は馬にどうやって乗るのか、また魚釣りの仕方などを訊いて来たよ。少年時代にはそんな経験をしてなかったんだね」なんてコメントをしているようですが、この Alan ってヤツ、少なくとも「黒人の子弟」で「乗馬の経験がある」なんて「ほぼゼロに等しい」という視点がまったく欠落しているらしい能天気ぶりがスゴい。 ま、それはともかくとして、これはワタクシの「内心の声」ですから、あまり公言しちゃうのもナンなんですが(ってここで書いてたら意味無いか?)、Otis Redding が Alan Walden に乗馬の仕方を訊いた、ってのは Otis の処世術だったんではないか?って気がしてしょーがないんですけどねえ。 その同じ Alan の回想で Otis を知り合いの頑固な黒人差別維持論者のじいさんに紹介したときのエピソードが載っていますが、その差別論者はすっかり Otis が気に入って、次に行ってみたら部屋の壁に Otis の写真が飾られていたそうですが、そこらモチロン Otis の「誰にでも好かれる(子供は自然に Otis に歩み寄る ─ by Steve Cropper )」資質もあるでしょうが、同時に彼の「如才なさ」をも表しているように思います。 1965 年、Round Oak に念願だった牧場を持ち、そこを Big "O" Ranch と名付ける⋯ さて、ここで 1967 年にふたたび時間を進めましょう。 昨日のとこで紹介した、ヨーロッパでのライヴ・レコーディングによる Live In Europe : Volt 33-416 に収録された Shake ですが、これは以前に述べたように 1967 年 4 月27日、シングル Volt 45-149 として You Don't Miss Your Water をカップリングに発売され、R&B チャート 16 位、Pop チャート 47 位を達成しています。 その発売に先駆けて 4 月 8〜10 日には Good To Me Mr. Pitiful Just One More Day I'm Depend On You Ol' Man Trouble Any Ole Way Your One and Only Man Chained and Bound Papa's Got A Brand New Bag Security A Hard Day's Night などが別なライヴで録音され、1982 年に Rhino からリリースされた Otis Redding Recorded Live : Previously Unreleased Performances としてリリースされているようです( Atlantic 33-19346。1982 年 3 月)。 1967 年には、もうひとつのライヴ、Monterey International Pop Festival もまた彼にとっては重要なマイル・ストーンとなりました。 およそ、ソウルあるいは R&B というものにはほぼ馴染みがない、当時のコトバで言う「ヒッピー」が大半を占めるその聴衆たちは、Otis Redding にとっては、まったく未知の世界との遭遇だったかもしれません。 そこでは Shake Respect I've Been Loving You Too Long Satisfaction Try A Little Tenderness が収録され、Reprise 33-2029 Historic Performances Recorded At The Monterey International Pop Festival として 1970 年 8 月にリリースされています。 このアルバムはご存知のように同じ Monterey International Pop Festival での Jimi Hendrix と背中合わせのアルバムとなっていることから、多くの(普通なら Otis Redding の歌に触れる機会など無さそうな)ロックのファンにも買われて、彼の歌がより広い範囲に浸透することになった、と言うことが出来るかもしれません。 「つづく」 |
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No.1263