My Love Coming Down

Goree Carter


2005-10-30 SUN.




当日記では初のお目見えとなる Goree Carter のスロー・ブルース(?)でございますが、イントロっからもう T ボーン臭がぷんぷんでございますねえ。
Texas 州は Houston で 1949 年の録音。
コロコロ・ピコピコと転げまわるキュート(?)なピアノは Lonnie Lyons ですが、これがなかなか利いてますねえ。
ま、モチロンのことブラス・セクションも揃っておりまして、テナーの Sam Williams、アルトの Conrad Johnson、トランペットの Nelson Mills も通奏和音的に参加はいたしておるのですが、今回はあくまでもバッキング扱いで、最初っから最後まで、殆ど「見せ場」はございません。
なんだかひとり「ちゃう」境地で淡々と遊んでるよに聞こえるベースの Louis "Nunu" Pitts ですが、ところがどっこい、ちょっと音を追ってよ〜く聴いてみると、Aja の Deacon Blues での Walter Becker みたいに、およよ〜!っちゅう音階を辿って行っておりますねえ。

ワタクシにとってのジャズのベースってえことじゃスコット・ラファロに尽きるのでございますが、こんなウォーキング・ベースでだったら、こゆ味のあるボソボソ・ベースもまたいいかもしんない⋯
なんて話が出てくるとこでもお判りかもしれませんが、この Goree Carter、はっきり言ってかなり「ジャズ色が強い」ブルースマンと言えるでしょう。

この曲はまだブルースに重心がありますが、Rock Awhile なんて聴きますと、いちおう「ろけんろー」テイストながら、ブラスなんぞはもろジャズっちゅう、これまた不思議なポジションで、サックス・ソロとリズムがなんともミス・マッチっちゅうか、そんなゾーンのフュージョンも「あり得た」ってとこが黎明期(?)のオモシロさなんでしょね(あ、蛇足ながら New York Times で Robert Palmer はこの曲こそ「ロックンロール」の始祖である!なんて言っておりましたが)。

あ、ドラムを忘れてましたねえ、このコンボ(バンドって言うより、このコトバのほが似合う感じなんですよ)では案外いちばん目立たないかもしれない、「過不足ない」ドラムは Allison Tucker で、この曲は Freedom 1525 としてリリースされているようでございます。

Goree Carter は 1930 年の12月31日に Texas 州の Houston で生まれています。
ただし、その後の彼はレコーディング・データに登場するまで、いまのとこ、なんの情報も発見されておりません。
おそらく成長過程で T ボーンから多大な影響を受けたのではないか?と思われますが。
その彼が 1949 年 3 月に Texas 州 Houston の独立レーベル、Sol Kahal(別な資料では Samuel Kahl の、となっています。エラい違いですねえ)の Freedom Records の最初のリリースとなった Freedom 1502 Sweet Ole Woman Blues でデビューしております。

同時に録音されたピアニスト Lonnie Lyons(つまり今日の My Love Coming Down でのピアノですね)のシングルでもそのままギタリストとしてレコーディング・セッションに参加しました。
そして正確な日時の記載は無いのですが、おそらく Freedom 後と思われる録音が、これも Houston の Sittin In With というレーベルに行ったもので、自己名義の

Love Crazy / Let's Rock : Sittin In With 556
Jumpin' AT Jeff's / True Love Is Hard To Find ; Sittin In With 572
( as-Henry Hayes ts-Ed Wiley p-Buster Pickens g-Skippy Brown, dr-Ben Turner )

テナー・サックスの Henry Hayes 名義ながら実質上ヴォーカルもとっている
I'm Just Another Fool / If It's True What They Tell Me : Jade 211(パースネルは前の Sittin In With 572 と「まったく」同じ)

などがあります。

この時期の Goree Carter の録音を集めたフル・アルバムが Blue Moon 6936829 Goree Carter : The Complete Recordings- Vol.1: 1949-1951 としてリリースされているようです。
また他にもセッションに参加したものでは、Southland 16 Joe Houston: Rockin' N Boppin'

Rockin' 'N' Boppin'
Flying Home
Walking Home
Earthquake* 1952 JUL. Houston
Waycross Mama Blues* 1949 NOV. at Houston
Moody* 1952 JUL. Houston
Hurricane* 1952 May Houston

Go Joe Go
Cornbread & Cabbage
Jay's Boogie
Doin' The Lindy Hop* 1951 Baton Rouge
Boogie Woogie Woman
Hog Maws Pt. 2
Dig It
Rock That Boogie
Joe's Gone
The Hully
All Night Long
Off Beat
Goofin' Joe's Rock
Tall Gal Blues


*に Goree Carter がギターで参加

しかし一部の資料によれば、ここで彼は陸軍に入隊し、レコーディング・キャリアは途絶えてしまった、とされておりますが、除隊後は演奏活動の機会が無かったのでしょうか?そこらもちょっと資料不足で詰められなかったのですが、ほぼ 1,2 年の活動で、これだけの作品が残せた、ってのが奇跡に近いのかも?

その Goree Carter は 1990 年12月29日に Houston で死亡。そして「やはり」地元では彼こそが「ロックンロール」の始祖である、とする説が人気あるみたいですよ。

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