Scratch My PC?

WINDOWS CE


2005-11-16 WED.




今日はちょと道を外れて(?)いつもとは違うおハナシを。
と言うのも、実は昨日の Six Cold Feet In The Ground にも関連してるんですが、大体、戦前もののリイシューだと、オリジナルってのが「メタル・マスター」ならまだいいですが、大抵はそのメタル・マスターから起こしたマザー・スタンパー(つまり本来は溝になるとこが逆に出っ張ってて、こいつでシェラックをムギュ〜っとプレスすると 78 回転の SP 盤が出来る)で最終製品となった SP 盤しか「音源」が無いことが多く、そーなると、一応「民生用じゃない」プロ・スペックのプレーヤーで再生したとしても、どーしても音質は劣化してしまうワケですよね。
いくらプレーヤーが良くても、SP 盤の場合、かなりな針圧で再生してますから、当然、再生した回数に応じて音溝は「削られ」カスが「溜まり」どしたって「新品状態」でいられるハズがございません。

そして、当然の帰結として、そんな個人所有の SP盤から起こした「新しい」マスターには「ドたっぷりと」盛大なスクラッチ・ノイズが「乗って」くるワケです。
ふだん、BLUES 日記で採り上げる楽曲はなるべくヘッドフォーンで検聴して細かいところまで注意するようにしてはいるのですが、それ、新しい録音のもので、かつ CD だとそれでいいのですが、戦後でも 33 回転 LP や 45 回転 EP シングルなどのアナログ盤、あるいは逆に CD であっても戦前もののリイシューなどになると、その「スクラッチ・ノイズ」がジャマになって、かえって聴き込めなくなってしまうんですよ。

さて⋯と、ここでハナシは「かなり」ヘンな方向に行くことになりますが、およそ世の「オーディオ・マニア」と言われるよな方々、そう、再生装置に少なくとも百万単位のカネをかけておられる(あ、ちと判り難い言い方でしたね、つまりプレーヤーにも百万、アンプにも、スピーカーにも、って感じで、「入り口→アンプ→出口」の各部門が最低百万円、合計では「ン百万」はかかっとる、っちゅーレヴェルのこと)ひとたちって、まず「とりあえず」CD の悪口を言いますよね。
あんなのホントの音じゃない!とか。
で、ワタクシはここでもたびたび言っておりますように、そこらの家電量販店で数千円で売ってるポータブル CD プレーヤーとヘッドフォンのセットで聴ける程度の「いい音」が、そんな「ん百万」のオーディオ・セットで聴ける音とたいして「変わらん」と思っています。
そー言うと必ず「ヘッドフォンで聴く音楽なんて本当の音楽じゃない!」なんてお叱りを受けますが、でもねえ、オーディオ・セットにいくらカネかけようが、またそのリスニング・ルームにどんだけカネかけようが、「それも本当の音楽じゃない」のは一緒でしょ。

どっちみち「電気的にそれらしいもんを作った」ってことではアナログもデジタルも一緒。どーせ「イミテーション」でございます。コレ、覆すこと出来ない「絶対の真理!」

そんなオーディオ・マニアのみなさまが「これぞ最高の録音!」としている音源があったとして、そいつはどんな録音をしてる?
マイクのアレンジにしてもオン?それともオフ?
さらにカリオペみたいなワンポイント?
それともマルチ・マイクのミキシング?
それが演奏された場の音響特性は?
そしてご自慢のリスニング・ルームはライヴ or デッド?

もし教会の中でワンポイントで収録したものならば、それを聴くときにはそのライヴな残響成分と干渉しないウルトラ・デッドなリスニング・ルームでなければならないし、逆に「超」がつくほどの極端な「オン」のマイク・セッティングで、一切の「場」の残響成分を廃した(そんな録音なんてあるかどうかギモンだけど)録音だったら、「いかにもあなたのリスニング・ルームにその演奏者が来て実際に弾いてくれている」のに近い、と言えなくもないですが、お宅のリスニング・ルーム、最低でもボストン・フィルが入りきる百畳以上の広さがあるんでしょうね?えっ?
さらにオーケストラの人数分の完全に個別のスピーカーを並べてるんだろね?
まさか「左右の二箇所のスピーカーだけ」なんてことはないよね?えっ?

そして録音するマイクロフォン自体にだって固有の f 特はあるし位相回転だってある。それに準じたスピーカーでなきゃダメだよな⋯

ま、こんなこと言ってちくちくイジメてるのも、あまりにも「そのヘンのこと」を理解せずに、エラそーに言う輩が多いからなのでございますが。

ホントの音楽ってのは、実際に演奏してるその場にしか無い!⋯などと半可通なオーディオ・マニアどもを斬り捨てていたあの頃が懐かしいざます。
え?いま?
あのねえ、今は事態がもっとフクザツになっちまって、そもそも、「実際に演奏しているその場」ってのが存在しない音楽があるんですよ。
大半のポップスは昔っから「電気的に(まだ「電子的に」とは言えない時代から、ね)」残響成分を印加したり、実際にはあり得ない、ひとりで何重唱もやらせたりなんてことをしてきましたが、最近じゃあもっと手が込んできて、最終製品の CD になる直前に演奏者自身もやっと全体像が掴める、なんて時代になっておるワケです。
レコーディング自体が全員揃って、なんてことをしなくなり、しかもそんな演奏者たちの音を最終製品に仕上げるのはコンピューター制御でフェーダーが「自分で」動いてミックスダウンしてく(あ、もちろん、ここでベースすこし絞る、とかってのはちゃんとオペレーターが入力するんですが。するとコンピュータはそれを覚えて、そこにくるとさっきオペレーターが動かしたのと「完全に同じ」操作を再現するのだ。それを全部のチャンネルに対して覚えさせ、最後にプレイバックしながら細かく修正してく、と)ワケですから、ただの一度も、それらの音が実際の音場で「融合」したことが「無い」音楽が市場に大量に流れているワケです。

だいたいねえ、実際には何人ものプレイヤーがいるのに、左右二個だけの(ま、サラウンドってやつで五個?)スピーカーで全部の楽器をカヴァーできるワケはないんでして、それをヘッドフォーンで聴くのなんてホントの音楽じゃない!なんて抜かすのは「無知」のショーコ。
生ギターひとつとってみても、そっからの音の放射パターンを考えてみれば、完全に再現する!なんて言うんなら全方位、最低でも上下左右前後の 6方向からマイクで音を拾ってそれを完全に分離した 6チャンネルのマルチトラックで記録し、再生するときはそのマイクの向きに対応した 6方向に独立したスピーカーを設置して、そのマルチ・トラックを出す・・・てなことしても「まだ」完全じゃないんですぜ。
しかもそれだと、もしお宅のリスニング・ルームに本人が来て、弾いてくれたとしたら、って設定ですから、オーケストラだといったい何百チャンネル必要になることか。

ま、たいてーのオーディオ・マニアってのが、う〜んイイ音だ!なんて言ってるのが低域のエネルギー感だったり、各楽器の分離が、なんて次元の「さすがカネかけただけのことはあるわい」みたいなレヴェルですから、「そうゆう趣味の世界なんだ」と思えば、いちいちイジメるほどのこともないんでしょうが。
悪いこたあ言わない、そんなもんにカネかけるんだったら、ひとつでも多くライヴへ行け!っちゅうの。

ところで、スクラッチ・ノイズだらけのブルースを H/PC に内蔵された Microsoft Voice Recorder ってので録音してその内蔵スピーカーで再生すると、ナゼか、とっても「いい」雰囲気なんですよ。
ホントにちゃちなスピーカーしか使ってないらしく、もの凄〜い狭帯域の音なんですが、そいつで聴くとなんだかスクラッチ・ノイズがミョーに似合うというか、かえって愛嬌があって可愛いんですねえ。
ちっさい H/PC を開いて、その音を再生させてると、なんだか昔のポータブルな蓄音器みたいに見えて(くるのはワタシだけだと思うけど)、ちょっとヘンな感覚。
あ、それとスクラッチ・ノイズの多いヤツは、ステレオじゃなく、スピーカー一個から出すといいですね。
テープ自体はステレオだし、ヘッドフォンではステレオで聴けるんだけど、スピーカーもついてて、そっちから出すとモノーラルっちゅう SONY の「ウォークマンだけど、ちっさいラジカセでもある」っちゅうのがありまして、そんなとっから出すと戦前ものは特に「いい」!
それで聴くには、アンプのライン・アウトを TONEWORKS の PANDORA に入れ、FM で飛ばすワケです。

ま、キビシくチェックすんのには向きませんが、ゆったりと戦前ものを、コーヒーでも飲みながら聴きたい、なんてときにはその「ちびラジカセ」から流れ出てくる Oscar Wood や Black Ace がまた一段と味わい深いものに⋯なんて感じるのはワタシだけ?

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