Thinkin' Blues

Boll Weavil


06-01-24 TUE.




これまた、昨日の Albert Collins ちゃんとは実に対照的な演奏でございます。

Boll Weavil なんていうと、戦前のカントリー・ブルースに詳しい方でしたら、即座に 1920 年代半ばに Paramount のために Chicago で You Can't Keep No Brown などを吹き込んだ、Bo Weavil Jackson を想い起こされることでしょうが、これまたご存知の通り、まったくの別人で、レコーディングに際し、その Willie McNeal という本名を(おそらく ORA NELLE Records の意向で)Boll Weavil としたもののようでございますね。
あ、ただし barrel house BH-04 Chicago Boogie でのジャケットに表記された演奏者名では boll weevil と記されていますねえ。もっちろん、それを復活させたカタチの P-Vine PCD-1888「シカゴ・ブルースの誕生 1947 」でもそれに準じて Weevil が採用(?)されております。
本名を隠してその名前を選ぶ(?)段階で Bo Weavil Jackson の存在が「なんらかの」影響を与えておったのでしょうか?

ところで、おそらく今日の Thinkin' Blues と同時に録音されたんじゃないか?ちゅう彼のもう一曲、Christmas Time Blues を紹介している Spotify では「明らかに」Boll Weavil( Willie McNeil )となってるんですねえ。
さらに 1955 年の 78rpm SP とされる Willie McNeal(ほら、また異説!)の Things Ain't What They Used To Be / Streamline Woman の項では

Both titles are issued on a St. George LP (STG 1003) titled Southside Screamers Chicago 1948-58 by a group called "The Boll Weavil Blues Trio". Boll Weavil is thought to be Willie McNeal.
と The Boll Weavil Blues Trio と、ここでも Weavil になってます。

ええい!もうヤケだっ!お馴染みの discogs では

Big Mack (or Mac) – who may have been an Arkansas truck driver or the better known blues singer Willie McNeal – had a surprise hit with “Rough Dried Woman” in 1966. This raw, crude even, blues was produced by Chicago record man Don Clay who added Mack’s screaming uninhibited vocal to a Hubert Sumlin instrumental track he had in the can. When Clay leased it to Stanley Lewis it was a huge regional seller in the south and even made it to the national charts. Lewis put out a follow up, the excellent double sided “Bad Affair” and “That’s The Way You Treat Your Woman” which were considerably more sophisticated than the hit but lacked the novelty to make it a big seller, despite another uncompromising vocal from Mack.

ちゅう 1966 年には Rough Dried Woman ちゅうヒットを飛ばしたアーカンソーのトラック運転手 Willie McNeal と書かれてますがな⋯

もうね Boll Weevil なのか Weavil なのか、Willie も McNeal なのか McNeil なのかワケ判らんようになっちまったがな!もう⋯知らんっ!

さて、その演奏は、ってえと、とても戦後 Chicago の Maxwell Street の喧噪のなかでやってたとは思えないような「先祖帰り(?)」ぶりで、特にこれが収録されたオムニバス CHICAGO BOOGIE! では(私のだ~い好きな Money Talking Woman や I Just Keep Loving Her なんて、まさに「これからこのサウンドがベースになってバンド・スタイルのブルースになるんだぞ!」っちゅう元気バリバリですからねえ)複数のプレイヤーがコンビを組んでパワフルなチューンを刻んでいるワケですから、そこにいきなり(?)登場するこの Boll Weavil のスタイルはかなり目立ちます。

目立ちはいたしますが、それがそれ以降へとつながる発展性ということでは、多少の「?」もありますよね。
自ら弾いているギターのテンポなど、やはり「独り」に慣れた「自由な伸縮」があって、やはり誰かと一緒に、ってのが向かない質(タチ)だったのでしょうか。

John Lee "Sonny Boy" Williamson のナンバーを取り上げているのですが、まるで Bluebird サウンドに対するアンチテーゼのような「旧い衣」を纏わせて仕上げているところなど、じわじわと変わり行く「時代」からドロップ・アウトし始めているある種の悲哀、のようなものまでを感じてしまうのですが、それは大きなお世話ってものでしょう。

You Can't Keep No Brown の Bo Weavil Jackson と同様(?)この Boll Weavil もまた、その生涯については、なにひとつ(に限りなく近く)判っておりません。
ただひとつ、ライナーには、このアルバムに収録された演奏者の欄に、Boll Weavil Band という記載もありますので、案外これにハープなども加えて街頭ではやっていったのかもしれません。
たまたまこの日は、そのハープが顔を出さなかった、なんてことだった可能性もありますが。
もし、ここにハープなり別なギターなりが加わって「バンド」として演奏していたら、いったいどんなサウンドになっていたんでしょうか?
ま、案外、ハクをつけるために、たった独りでも「バンド」なんて名乗ってただけだったりして⋯

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