Travelin' Blues

Blind Willie McTell


06-01-27 FRI.




ここでの Blind Willie McTell のギターは、まさに列車の「音」を模した表現を巧みに行っています。
みなさまもご存知のように、ハープでもよく蒸気機関車のブラスト音を表現するテクニックがありますよね。
やはり、南部から北部へ、はたまた南部諸州をさまよい歩く多くのブルースマンたちにとって、「旅」とはすなわち有蓋・無蓋を問わず、タダ乗りするために飛び乗った貨車の振動や機関音、そのようなものにまつわる一切の「音」の記憶として深くココロに刻みつけられたものなのでしょう。

まったく個人的なハナシで恐縮ですが、ワタクシの最初の旅の記憶、というのが、母の実家があった東京へと夜汽車に揺られておよそ十数時間以上も過ごした客車内での、座席の匂い、汽笛の音、動き始めるときの前方からゴツゴツ、と伝わってくる衝撃であったり、あるいは通過する踏切の警報器の音、線路の継ぎ目で車輪が立てる、規則的なようでいてときに乱調になるあの音としていまでもまだうっすらと記憶に残っています。
それはまだ 4,5才の頃でしたから、さすがにさほど鮮明なものではありませんが、列車での旅、というものの「原風景」となっているようで⋯
アメリカでの列車の旅ではどうなのかは判りませんが、機関車のブラスト音であったり、あるいは汽笛の音を模した演奏というのはありますが、踏切の音、ってのが登場することはないみたいですね。

ま、クルマ社会となって、鉄道線路網というものが十分に発達しきる前に萎縮に転じてしまったアメリカでは、次第に列車での移動の機会が減り、また早い時期では、まだ踏切などというものも、電気的な回路によって自動で警報が鳴る、なんてもんじゃなく、踏切番がクルマを停止させる旗を手に「見張っていた」のかもしれません。
だとしたら、警報器なんてものの音がまだ「旅」のサウンド・エフェクトとしては意識されていなかった可能性がありますね。

ところで Yazoo のこの曲の解説では、ギターのチューニングを Sebastopol Tuning と記しておりました。
それはどうやら D-Open や E-Open などの Vestapol Tuning と対比する場合の正しい(?)G-Open の名称であるらしく、その内容は 6 弦から 1 弦にかけて D - G - D - G - B - D という、いわゆる G の Spanish Tuning といわれるものとまったく同じでございます。
Blind Willie McTell は、そのギターのフィンガリング・リズムで時に列車のブラスト音を表現しつつも、スライドで汽笛の「ロング・ブロウ」を表していきます。
自らのヴォーカルをときには忠実に追いつつ、疾走してゆく列車の「ひたすら」進むさまをよく描きだしているのではないでしょうか。

やはりブルースマンの旅には貨車のタダ乗りがふさわしいのかもしれませんね⋯

ま、実際、ジェットにタダ乗りなんて、テロ対策がキビシい昨今、ほぼ不可能に近いし、それに忍び込めたとしても、主脚収納庫のなかで凍死寸前で⋯なんて報道を聞いたことがありますから、まあ、物理的に「自殺するよなもんだ」てなハナシもありますけど。
え?ちゃんとチケット買えよ、って?
あんたねえ、そんなカネあったら誰も苦労しませんがな。

あ、そうそう、昨日ブルースマンは「XXXXXでなきゃあ」なんてのはナンセンスだ、てなことを言いましたが、それを逆手にとって茶化してるのが Tokyo Blues の Joke コーナーでしょ。

★こんなひとはブルースマンになれない!ー なんてタイトルで列挙してくんですが、「メンフィスで人を殺していない」とか(!)「スーツを着てるヤツはブルースは歌えん!もっとも寝るときもそのスーツのまま、ってんなら話は別だが」だなんてなかなか笑かしてくれます。
でもいっちゃん「キタ」のは最後のヤツでしょ。
「ちゃんと自分のパソコンを持ってるよなヤツにブルースは歌えん!」⋯これには爆笑でございました。 ぎゃはははは!

え?ワタシっすか? Tokyo Blues に対抗(?)してHirosaki Blues やってみろ?
そうねえ⋯ブルース以前に「コピーしてるヤツはミュージシャンじゃねえっ!」だろな。これでフルイにかけたら音楽人口がドバ!っと減るぞ! 楽器産業から刺客が送られてくる⋯

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