Take Me In Your Arms

Lazy Lester


06-04-02 SUN.




昨日は遊び過ぎ(?)で「どたま」が「いつにも増して」働かなかったようで、いつもなら初出のブルースマンだったら、いちおうその来歴とかを「さらう」ことにしておるのに、この Lazy Lester、もうとっくにやってたような気がしてて、あんなカタチになっちゃったんですが、今日になってワタクシの CPU がようやく復旧して気付きました。
なんだか Excello Story に収録されたナンバーをやったときに名前が出て来たことがあって、それでもう採り上げ済みみたいな気になってたけど、実はまだだった、って!

しっかしまあ、それもそうですが、なんと今まで Lazy Lester を採り上げて「いなかった」ことが奇跡(?)だよ!
とゆーワケで、本日は彼のカムバック第一作(と思わせて、実は二作目⋯)Alligator AL 4768、Harp & Soul から、彼の Lazy さたっぷりのナンバー Take Me In Your Arms でございます。
え?Take Me In Your Arms ?それってドゥビーの『スタンピード』に収録されてるアレ?
がははははは!そ〜だったら笑える(?)んですが⋯ちゃいますっ!
基本的には Those Lonely Lonely Night みたいな感じの曲ですからドゥビーのアレとは「ぜんぜん」ちゃいます!
ところで曲調としては Those Lonely Lonely Night 系(?)なのですが、ワタクシが連想したのは、ナゼか久保田麻琴ちゃんの通称ゴジラ・アルバム『久保田麻琴 II サンセットギャング』に収録された「帰っておくれ」、のほうなんですよねえ。
え?そりゃ久保田麻琴が Lazy Lester のこれをモトにしたんじゃないか、って?おいおいバカこくでねえ。このゴジラアルバムって 1974 年にリリースされてんですぜ。
逆に Lazy Lester のこれは 1987 & 1988 年の録音なんだから、それでいくと、こっちが影響された(ワケはないけど)ってんならともかく!
と、ちょっと脱線しちゃいましたが、なんと言っても、ここでの Lazy Lester はその "Lazy" っちゅう名に恥じない、ゆるゆるっぷりで魅了してくれます。

ハープも例によって例の如しな「我が道を往く」っちゅう流儀でして、もうここまでくるともうアッパレ、てなもんでしょ。
バックのギターには Kenny Neal、キーボードには Lucky Peterson が参加してるようですが(あ、ピアノは Teo Leyasmeyer の可能性もあるかな?)、曲が曲ですからねえ、そんな目覚ましい活躍なんてのはしておりませ〜ん。

さて、かなり強力な Google Local、あるいは Wikipedia でも出てこない Louisiana 州 Torras(どうやら Pointe Coupee 郡にあるのではないか?と示唆する一文にまでは辿りつけたのですが、カンジンの郡内を見渡しても、そのような地名は発見出来ません⋯
と思って( 2023 年になって Apple のマップで検索したら「ありました」Simmesport の東、ミシシッピー河の岸辺が Torras みたいですよ)その Pointe Coupee に「あるとすれば」、そこはミシシッピー河の西岸にあって、その大河と、かって河であったものが本流から取り残された出来た「三日月湖」に囲まれた一帯で、ルイジアナ州をアルファベットの「L」の文字に見立てると屈曲部の内側にあたります)で生まれた、とされる Leslie Johnson ですが、その生年月日にはちと混乱が見られます。
たいていは 1933 年 6 月20日、としているのですが、なんでかひとつだけ 6/30/23 と表記しているものがありました。
おそらく 6/20/33 を見誤って 6/30/23 と「打ってしまった」だけだとは思うのですが⋯

ただし、彼が成長したのはそこではなく Baton Rouge の近郊だったようです。
Little Walter のハープ(それと Jimmy Reed のハープも?)に影響を受けて彼のハープはスタートした、てなことになってるようですが、それにはもうひとつ、楽器の価格も絡んでいたのではないでしょうか。
彼の兄はギターを所有しており、彼は兄が不在のスキを狙って(?)こっそりそのギターを弾いたりはしていたようですが、やはりそんな状態では腕も上がるワケもなく、ポケットに入れてどこへでもお供させることができたハープの方に傾斜して行ったのかもしれません。
そのせいか、彼は後に一度ギターに転向しかけてるんですねえ。ま、そのときもケッキョク自分のギターを買うまでにはいたらなかったようですけど。

1950 年代には、シカゴに行く前の Buddu Guy とともに演奏を行っていたらしく、その Buddy Guy が 1957 年にシカゴに去った後、そのアナを埋めるために彼がギターを弾いていた一時期があった、と Rolling Stone 誌のインタビューで語っています。

ただし、その少し前に彼は偶然乗り込んだバスの隣の席にいたのが、少し前からレコードも出していた(ローカル?)スター、Lightnin' Slim であることに気付き、これから録音するんだ、という彼に一緒についていったところ、なんと録音に参加する予定だったハーピストが、急なギグが入った、とかで来られなくなっていたのでした。
そこで彼も一緒になってあちこち代役がいないか、と探しまわったらしいのですが、万策尽きたとき、自分も少しは出来る、と言ったところ、それじゃ、ってんでそのまま録音することになります。
こうして彼の初録音は J.D. Miller のセッションとして知られる Lightnin' Slim のバッキングからスタートしたのでした。続いて彼名義での初録音も行われたのが 1956 年のことです。
で、あの Cornelious Green を Lonesome Sundown と名づけることで成功した(?)と同様、Leslie Johnson はその Lazy な歌いっぷりから Jay Miller によって Lazy Lester( Leslie の愛称)という芸名を頂戴することとなりました。

そこからの Lazy Lester は一連の Excello 作品によって「ひとつの」ピークを迎えます。特に Slim Harpo との仕事はワタクシの「お気に入り」でございます。
この時期の彼の作品群、たとえば I'm A Lover Not A Fighter をはじめとする一連のヒットはほとんど彼自身の手になるものだったようですが、「公式には」すべて、あるいはほとんどが J.D. Miller の名義で「登録」されてしまったのでした。
おそらくそれによる経済的な窮状は、彼の音楽に対する情熱を大いにスポイルしてしまったらしく、1960 年代も末のころには、Michigan 州 Pontiac に引っ込んでしまい、生きて行くのにそこそこの仕事をしつつ、Slim Harpo の妹( Slim Harpo 自身が 1924 年生まれですから「姉」だとしたら最低でも 10 才以上は年上ってことになるので、たぶん妹、と判断しましたが、あるいは姉かも?)と一緒に大好きな「釣り」に打ち込む生活に入ってしまいます。

それでも 1971 年には University of Chicago で行われた Folk Festival では昔の「よしみ」で Lightnin' Slim のバックとして一日限りのステージを努めました。そして、このときにその話をまとめたブルース愛好家の Fred Reif が後に Lazy Lester カムバックのキーパースンとなる⋯

1980 年代の後半、その Fred Reif と Lazy Lester は互いに同じ Michigan 州にいることに気付き、交流を持つようになり、やがて Fred は Lazy Lester にカムバックを薦める立場になり、自ら運転手、伴奏者となって各地のツアーを開始したのでした。
そのツアーでの聴衆の反応は Lazy Lester にカムバックを決意させるに充分なほどのものだったようで、ふたたび音楽の世界に身を置くことにした彼は 1987 年、Alligator と契約し Harp & Soul をその翌年にかけて吹き込んでいます。
つまり、それこそが本日の主題である Take Me In Your Arms を含む Alligator AL 4768 なのですねえ。

彼の録音はこの後も続くのですが、それはそっちのアルバムからのナンバーを採り上げる日のためにとっときましょ。

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