Give You Some Air

Fenton Robinson


06-04-22 SAT.




1969 年というのは、彼が Giant へ

There Goes My Baby : Giant GT-1122
Fen-Ton A Soul : Giant GT-1122

を吹き込みした年だったのですが、この吹き込みとの前後関係は不明ながら、その同じ年に、彼はクラブでの演奏がはねて、帰宅する途中で自ら運転するクルマで、ひとりの黒人女性を轢いてしまい、その女性(高齢だったと言われる)が死亡してしまったために過失致死罪を適用され、裁判に持ち込まれてしまったのでした。
彼はそれでも演奏活動を続け、昨日の Nashville 録音や Fame Studio での録音なども行っていたワケです。

その Fenton Robinson の次のレコーディングは、ハーピストの Mac Simmons のレーベル PM に行われ

Find A-Way / Crying the Blues

の 2曲だけが PM 106 としてリリースされています。しかも、それはどうやら、この 2曲だけには Mac Simmons が参加しているかららしく、それ以外のナンバー

Blue Monday Blues / One Room Country Shack / Nothing But A Fool / You Don't Know What Love Is

は、後に P-Vine PLP-9001Mellow Blues Genius に収録されたことで「ようやく」陽の目を見ています。(あ、蛇足ながら、この Mellow Blues Genius ってのは「日本でだけ」通用するキャッチ・コピーらしく、海外のサイトでは、なにかってえと「日本人の言うところの Mellow Blues Genius 」って嗤う引用が出てくるくらい「アメリカでは通用しない」なにそれ?コピーらしい(同じくロバート・ロックウッド・ジュニアをロバート・ジュニア・ロックウッドゆうのも日本だけ)。
どうも日本人って Fenton がお好きなようで⋯ところで PM での最後の You Don't Know What Love Is だけ、Fenton 以外のギターが二人から一人になっているらしいので別な日の録音では?としている資料もある)

そして次こそ、彼自身も満足できたのではないか?と言われる Alligator での録音、アルバム Somebody Loan Me A Dime となります。
ここではスットコドッコイなプロデューサーに無理難題を押しつけられることもなく、むしろそのカタキをとるようなリメイクも含め、充分に彼らしさが発揮された、と言えるでしょう。
1974 年の 7 月から 8 月にかけて Chicago、Sound Studio。サイドに Mighty Joe Young、キーボードは Bill Heid、ベース Cornelius Boyson、ドラムは Tony Gooden。
同年 9 月12日、オリジナル・テイクの上にブラスとして Norval D. Hodges と Elmer Brown Jr.( tp.)、テナーの David Baldwin、トロンボーンの Bill McFarland を同スタジオでオーヴァーダブしています。

Pretty Lady ( take 1&2)
You Don't Know What Love Is ( take 1)
You Don't Know What Love Is ( take 2: over-dubbed ) : Alligator AL-4705
Somebody Loan Me A Dime ( take 1)
Somebody Loan Me A Dime ( take 2) : Alligator AL-4705
Candy Kisses ( take 1&2)
Checking On My Woman ( take 1)
Checking On My Woman ( take 2) : Alligator AL-4705
The Gateway ( take 1)
The Gateway ( take 2) : Alligator AL-4705
You Say You're Leaving ( over-dubbed) : Alligator AL-4705
My First Love
As the Years Go Passing By ( take 1&2)
Crying the Blues
I've Changed ( take 1&2)
I've Changed ( take 3) : Alligator AL-4705
Country Girl ( take 1)
Country Girl ( take 2) : Alligator AL-4705
Directly From My Heart To You ( over-dubbed ) : Alligator AL-4705
Gotta Wake Up ( take 1)
Gotta Wake Up ( take 2: over-dubbed) : Alligator AL-4705
Little Turch ( over-dubbed) : Alligator TD-13(?この TD-13というのは未確認)
Going To Chicago : Alligator AL-4705
Years Gone By
Texas Flood ( over-dubbed) : Alligator AL-4705

これとは別にアコースティック・ギター弾き語りの

Beautiful Stranger


という曲を 8月20日に吹き込んでいるようです。
この 1974 年の Alligator のアルバムによってようやく彼は正当に評価されるようになった、と言えるのでしょうが、その翌 1975 年の 2 月には、先の事故について過失致死罪で実刑判決が下され、刑務所に収監されてしまうことになったのでした。
本来の意味での「犯罪者」ではなく、受刑態度が良かったこと、また周囲からの減刑嘆願なども功を奏して僅か 8 ヶ月で仮出獄することが出来ました。
しかし、この一件が後々、とんだ騒動に発展してしまうワケで⋯

1976 年 1 月28日には Giles Oakley が監修して、アメリカ各地、ミシシッピー・デルタに始まり、都市と密接に関連したブルースと言う視点で St Louis、Chicago、Atlanta と採り上げてゆく BBC の TV ドキュメント、THE DEVIL'S MUSIC: A History of the Bluesの Chicago 編に Fenton も選ばれ(他には Billy Boy Arnold や the Aces )二曲を収録しています。キーボード Bill Heid、ベースは Bob Stroger、ドラム Jesse Green。

Somebody Loan Me A Dime
You Don't Know What Love Is


この二曲は Red Lightnin' RL 0033 に収録されました(現在は Indigo IGOTCD 2537 に収録)。
その翌年、1977 年 7 月17日には再び Alligatorに

Going West : Alligator AL-4710
I Wish For You : Alligator AL-4710
I'm So Tired : Alligator AL-4710
You Don't Know How I Feel

を吹き込んでいます。Chicago、Curtom Studio。このときのバックは、サイド・ギターに Steve Ditzell、キーボードに Bill Heid、ベースが Larry Exum、ドラム Ashward Gates, Jr.。
そして 8 月 2 日には残る

I Hear Some Blues Downstairs : Alligator AL-4710
Just Little Bit : Alligator AL-4710
West Side Baby : Alligator AL-4710
Killing Floor : Alligator AL-4710
As The Years Go Passing By : Alligator AL-4710
Tell Me What's The Reason : Alligator AL-4710
Look On Yonders Wall

を録音。こちらにはブラスが入っていますが、レコーディングから参加しているようです。そうして完成したのがアルバム、I Hear Some Blues Downstairs: AL 4710。
いえね、別にいいんですけど、この Chuck Nitti によるジャケットのイラストが、どうにも違和感があってねえ⋯
最初に見たとき、デッカいオーディトリウムのステージに立つ Fenton を見上げて描いたんかいな?なんて思ったら(あ、当時は紙ジャケのアナログ盤ですから「まるっと」正方形で、どこが下やら判らんデザインだったせいざます)、モチロンそじゃなくって、床に耳をつけて「階下」の物音を盗み聴きしてる図だったんですねえ。やれやれ⋯これ、ワタクシが選ぶブルース・レコードのジャケット・デザインの個別作品部門ワースト・ワン決定です。最低っ!
⋯つづく

permalink No.1461

Search Form