Mustang Sally

Sir Mack Rice


06-04-26 WED.




みなさまのココロの(?)マスタング・サリーは誰のヴァージョンでしょ?
たいてーの方は、やはり Wilson Pickett でしょうね。なかにはワタシやとめごろおさんみたく、そりゃもうなんたって Albert Collins じゃなきゃあ!なんてヘソ曲がりもいるでしょが、間違い無く、この Sir. Mack Rice のがイチバン!なんてひとはレッド・データ・ブックに記録されちゃいそうです。

だいいち、この曲のオリジナルを唄ったのが、この Sir. Mack Rice である、ってこと自体、ほとんどのひとは知りません。
え〜っ?Wilson Pickett じゃないのぉ?
ってのが「もっとも多いリアクション」なのでございます。
その Sir. Mack Rice のオリジナル Mustang Sally が、2023 年現在では YOUTUBE で聴くことができます。
Sir Mack Rice Mustang Sally で検索すると出てきます!

さあ、いかがですか?このオリジナル Mustang Sally。意外としっとりとした仕上がりで、なかなか落ち着いたナンバーですねえ。
まだ「ファンク」なんてえ概念が誕生する前のサウンドって感じですが、それでも独特のスウェイ感が快いじゃあ〜りませんか。
1965 年のシングル Blue Rock 4014 としてリリースされ、カップリングは Daddy's Home To Stay でした。
そしてその翌年、こんどはこれを Wilson Pickett が唄って「大ヒット!」それで本家の Mack Rice は霞んじゃったんですねえ。
でも、こーやってオリジナルを聴いてみると、これはこれで悪くない、と思うんだけど、ま、ヒットってのは時代と密着してますから、「そんな」時期だったんでしょ、たぶん。

Mack Rice は 1933 年11月10日に Mississippi 州 Clarksdale で生まれています。そして Eddie Floyd 同様、Detroit でいつしか(?)活動していたようですが、その間の彼の軌跡を示唆する資料にはまだ出会っておりません。
そして、どうにも引っかかることがひとつ。「どの資料を見ても」彼の出生に関し、
Sir あるいは "Sir" Mack Rice ( born Bonnie Rice )と記されているのです。

ふつう Bonnie ってのは女性の名前ですよね?
Bonnie というワードで検索した画像は(変なウサギ以外は)みんな女性です。

変だ!としつっこ〜く追いかけて、ついに Sir Mack Rice の墓まで押しかけて墓碑銘を見てまいりました⋯したら!
えっ?Bonnie じゃないじゃん! Bonny Rice だぜ!
なっ、なんだと〜!と改めて「 Bonny 」で検索した画像を見たら⋯女性もいます。がっ!Anne Bonny ってひとで苗字が Bonny ? 
あ〜、オトコでファーストネームが Bonny ってのかなりいるっ!

いいですか墓碑銘に彫り込まれている出生時の名前 Bonny Rice こそが本名です!

Bonnie派(?)については、あまたある資料が「ぜ〜んぶ」まったく判で押したように「同じ記述」でかいている、ということは、出所が一緒、ってことじゃないでしょか。
しかも、どこもこれまたまったく口裏を合せたように、ふつうならこれは女性の名前なのだが⋯っていう一節が入るべきだと思うのに、それが皆無です。
もちろんオトコが Bonnie って名前をつけちゃいかん、なんて法律は無いでしょうが、ワタクシとしてはどうも納得が行かず、あくまで疑問符つきで、そんなハナシもあるけど、って紹介にとどめておいたんですよね〜。

ようやく今になって彼の本名は Bonnie ではなく、Bonny Rice なのだ!と宣告(?)いたしましょう。

さて、いつしかシンガーとなっていた Mack Rice は、いつから参加していたのかは不明ですが( 1956 年か?)、ともかく 1957 年に彼はそれまで所属していた the Five Scalders から、後にあの Knock On Wood で有名になる Eddie Floyd のいた the Falcons に移ってきています。さらに Four Tops の Levi Stubbs とは実の兄弟である Joe Stubbs をメイン・ヴォーカルとして補強し、Falcons としての最初のヒット You're So Fine を出したのですが、その Stubbs は the Contours に移ってしまいます。
その後釜で入ったのが Wilson Pickett でした。
Mack Rice は Falcons が解散した 1963 年までグループのメンバーでしたが、後期にはこのグループのマネージャー役に徹していたようです。
翌 1964 年、彼は Lu Pine 119、My Baby / Baby I'm Coming Home でソロ・デビューを果たし、続けて Lu Pine 125、The Whip / Fells Fine の 2 枚のシングルをリリース。

続く 1965 年には、今度は Blue Rock レーベルで録音した、この Mustang Sally が R&B チャート 15 位、という大ヒットとなります。
時あたかもアメリカ第二位の自動車メーカー、FORD MOTOR Co. から社運を賭けた(?)斬新なスポーティ・ハードトップ、FORD MUSTANG が発売され、さっそくこの二つはリンクして(つまり今で言うタイアップですね)互いに売り上げを伸ばして行った⋯
でも、追うようにリリースされた Wilson Pickett 版によって、次第に「世界的にも」彼の知名度は沈下していってしまったワケで。

それでも 1967 年末には STAX でメジャー・デビュー( 1968 年からは ATCO )し、そこそこの栄光は手にして行くのではございますが(でも厳密には、シンガーとしてよりは、コンポーザーとしての彼の方がプレゼンスは「あった」と言えるでしょう)。
あ、その STAX 以前、しかも Mustang Sally 後にも Blue Rock( 4028 : When You're Down And Out / You Shouldn't Throw Stones )、Mercury( 72541 It's Alright / You Can't Lose It )と 2 枚のシングルをリリースしています。

STAX から ATCO へ、さらに Capitol、そして Truth、もいちど ATCO を経て Fantasy 傘下の(名ばかりの?)STAX へ、と渡り歩いた彼ですが、最近では Kentucky 州 Lexington の Long Island Recording Studios の専属として、そのレーベル IN-FI から最新の(?)Mustang Sally ( up-dated? )の含まれたアルバム This What I Do などもリリースしておるようでございます。

追記ーこのブルース日記がアップされた 2006-04-26 からおよそ 10 年後の 2016-06-27、アルツハイマーの合併症で Detroito の自宅で死亡しています⋯

permalink No.1465

Search Form