Wild Woman or
Wild Wild Woman


Danny "Boy" Thomas
and His Blue Guitar



06-06-30 FRI.




なんと言っても、このトラックの特徴は全体に漂う「熱の無さ」かもしれません。
ワタクシ、唯一ハープのポジションではセッションに参加したことはございませんが、それでも、ここでのべつ幕無しにいいかげんな(あ、ここでの「いいかげん」は「実にもってちょうど良い加減を心得た」ほうの「良い加減」じゃなく、もっと投げやりな、強いて表現すれば「どーだっていいじゃん」ってえニュアンスの「いーかげん」のほうでしょね)リフを吸ったり吐いたりしてる、コクもキレも、ついでにイミさえ無いよなバックのハープよりは、まだ「ブルースしてる」プレイが出来そうな気がします。

でも、この Danny Boy の声は嫌いじゃありません。
いなたいギターもさほどめざましくはなく、全体にべたっとした平板な印象の曲の流れではありますが、たぶん、「お!キミいい声してるねえ。どーだいいっちょ吹き込んでみないか?いまなら 25 ドルにしておくぜ」なんてダマされて(え?もらえるんじゃなく払うの?)ヒットを夢見てスタジオ入り⋯なんてのはモチロンなんのコンキョもないワタクシの妄想ではございますが。
唯一、この流れに陰影を与えているのがウッドと思われるウォーキング・ベースでしょか。
ただ、原資料ではヴォーカルとギターがこの Danny "Boy" Thomas ってのが判明しているだけで、さすがの Discogs でさえこの Georgia で Tifco 824 としてリリースされたというシングルについては、バックのハープ、ベース、ドラムについてはまったく記述がありません(どころか with unk. hca; gtr; dms となっていて Bass の Bの字も無い!)。


ただオリジナルのシングル Tifco 824 Wild Women / Kokomo Me Baby のセンターレーベル ↑ で見る限り、
DANNY BOY and His Blue Guitar っちゅう名義になってるんですわ。
Blue Guitar って呼ばれるバックバンドがあるんかいな?てな気もしますが、居合わせたサイドメン達を「とりあえず」そうゆう名でもって「あたかも専属のバックバンドがあるブルースマンであるぞよ」と思わせたかっただけ、っちゅう気もいたしますですね。

Neil Slaven による London GXF 2001 のライナーではこれを「スタイル的特徴が無い」と斬り捨て(?)ていますが、まあね〜。なにおぅっ!なんて反論なんて出来っこないか?この音源じゃ。
ただ、毎回このディスクをターン・テーブルに乗せ(そ、ウチのはアナログ・ディスクなのじゃ)メンド臭いからオートでアームを動かすと B 面一曲目はこいつですから必ず聴く、てなもんなんですが、どうしてか、ミョーに「和む」んですよ。
ある意味「スキだらけ」で、まあ、これじゃ、この後もう一枚シングルは出してる( 1966 年の GROOVY G 3002 : Have No Fear / My Love Is Over。そちらもパースネルについては不明⋯ )けど、そら消えるわなっちゅうブルースマン、てな感じが「ひしひし」なんですけど、Chess あたりの窮屈さとはまったく無縁の、時代の流れの表面に出来てはすぐに見失われてしまう「うたかたの泡」ならではの寄る辺無さみたいなものが、かえって「清々しい」なんて言うと、ま、言い過ぎだな。ぐふふ

さて、ご存知の方も多いでしょうが、その前述の Tifco 824 の B 面にはあの有名な(って書き方は誤解を与えますね。このテイクが有名なんじゃなく、曲そのものが「有名」ってことですからねん) Kokomo Me Baby がカップリングされており、まあ、一般の「覚え」がめでたいのはそちらの曲の方なのでしょうが、ワタクシ個人といたしましては、このふつーに「まあまあじゃん」てな出来のやつよりは、B 面アタマ(あ、アルバムの、ね)で「うへ〜」と思わせてくれる(?)この Wild Women(この曲名について、アルバム London GXF 2001では Wild Wild Women としていますが、多くの資料では Wild Women としております。オリジナルのシングルの画像のセンター・ラベルには Wild Women と記されておりますねえ)のほうが「素」が出ちゃった!みたいで面白いんですよ。

ところで、この Danny "Boy" Thomas、やっぱりっちゅうか、「まったく」その生涯に触れた資料は無いようで、どこでいつ生まれたのか、に始まり、いつどこで死んだのか、まるっきり判りません。
判っているのは、その Tifco(あるいは Teftron⋯どっちかが社名だと思う)に吹き込んだ 1961年と言われるシングル一枚と、おそらく 1966 年と思われるもう一枚のシングル、Groovy G 3002、Have No Fear / My Love Is Over をリリースしている( Blues Unlimited 誌によれば「 Otis Redding みたいな」曲らしい)ってことだけ⋯
あ、そうそう Otis Redding と言えば、この Danny "Boy" Thomas and his BLUE GUITAR のシングル Tifco 824 に続く次のシリアル Tifco 825は、なんと Johnny Jenkins で Pinetop / Love Twist というシングルなのです!
え?なにコーフンしてるのか、って?
あなたねえ、Johnny Jenkins 言うたら、このころはすでに Otis Redding がそのバンドにヴォーカリストとして在籍していたんですよ。

ってまあ、ただそれだけのことなんですけどね。
なんちて、こんな資料もほとんど無いブルースマンについて「こんなに」書くことがあった、なんてのが奇跡みたいなものかもしれませ〜ん⋯

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