Right Time

Nappy Brown


06-07-06 THU.




実は、ワタシ自身もときどきセッションで取り上げてるミドル・テンポのブーギ、The Night Time Is the Right Time は、もはやその痕跡も残っておりませんが、元々は Ray Chaeles のテイクが「原典」でございました(ん?誰?今じゃ「減点だね」なんてウマいことぬかしたヤツ!)。

なんてこと言うと、え~?そんな曲やってたっけ?なんて突っ込まれそうなんで先に言っておきますが、例によってワタクシのことでございますから、どんな曲も自分流にアレンジし(ウソつけ、自然に変になったのをアレンジって言ってるだろ!っちゅう声も遠くで聞えておるようですが、無視するといたしましょ)、味付けを変えておりますから、ちょっと「あれ」がこの曲だ、とは気付かないかもしれませ〜ん。なははは

だって、オリジナル(この Nappy Brown のも Ray Charles のも)バッキング・コーラスを使ってコール&レスポンスっちゅうスタイルでやっておるのを、大胆にもバッサリと切り捨て、ふつーのブーギみたくしちゃってるんですよ。感じがちゃうのも「当たり前」。

さて、こうやって採り上げといて、こんなこと言うのはなんなんですが、ワタクシ、この Nappy Brown さん、それほど好き、ってワケじゃございません。
どうもこのひとの歌って、ワタクシのねじ曲がったスタンダードからするとウマ過ぎるんですよ。
やはりそこらゴスペル・グループ出身ってえとこが効いてるんでしょか?
ま、それならそれでヴェルヴェット・タッチ、はたまたシルキー・スムース、なんてえ方面に進んで、バラードなんぞをねっちょねちょに唄っていただくと、むしろ「あっぱれ」てなもんでソンケーもいたすのですが、どうも逆(とキメつけるのもどうか、とは思いますが)にブルース方向、はたまた R&Bでもリズムを立てたダンサブルなあたりに来ちゃうと、なんだかちょっと抵抗があります。

そんなこと言ったって、本人が唄いたい、ってもんにケチはつけられませんが、この Nappy Brown さん、そこらがややビミョーな存在なのかもしれません。
あまりブルースのフィールドで頻繁に出てくる名前ではないですが、それなりの「認知」はされていると思います。
でも、ことワタクシの感覚で言わせていただくなら、やはりハミ出る部分が多いとか、そゆモンダイではなく、もっと根源的なとこでヨワいんじゃないか?と、つまり、どうも「あまりブルースを感じない」んですよねー。
この Right Time だって、まあ捉えようによっちゃあ、Ray Charles よりブルースっぽい、と言えなくもないんですが、なんなんでしょうねー、そこで唄い手の感情が沸騰している、っちゅう「シズル感」が伝わってこない⋯あ、ここら自分のことは棚に上げて言ってますから、それ突っ込まないでね。
なんだか言い方は悪いけれど、憶い出の名曲を「世間では歌がウマい、と言われている今の歌手が」そつなく唄っちゃってるシーンを髣髴とさせるよな(?)「リアリティの無さ」が気になります。
ただ、それじゃ Nappy Brown が嫌いなのか?と言われると、そうでもないんですよね。
別に悪くはないんだけど、惚れ込めるほどの魅力には欠ける⋯そんなとこでしょうか。

ま、逆に言えば、ミョーな「熱」とかが放射されてませんから、気楽に聴くぶんにはいいのかもしれません。
この Right Time も、その本来のスタイルを訪ねる旅としては意義があったように思いますが、往々にして「旅」というものがはらんでいるひとつの「陥穽」、イメージしていたものと、実際とのギャップを目の当たりにして立ちすくむという局面はやはり付きまとっていた、と言うことなのかもしれません。

Napoleon Brown(スゴい名前ですねえ。なまじそんな名前だと、かえって重荷になりそうですよね。その意味では「 Nappy Brown 」って愛称が「良かった」んじゃないでしょうか)は、1929 年 North Carolina 州 Charlotte で生まれています。
若いころから数多くのゴスペル・グループを経験しているらしく、ある程度の声価もあったようで、The Heavenly Lights に在籍していた1950 年代に入ると Savoy と契約し、かなりの人気を得ています。
1950 年代後半には何度も R&Bチャートに登場し、「Don't Be Angry 」、「Pitter Patter( 1955 )」、「It Don't Hurt No More( 1958 )」、「I Cried Like A Baby( 1959 )」などがヒットしました。
しかし、なんと言っても忘れてならないのが 1957( alt.; 1954 )年の作品、この Right Time、つまり、Ray Charles の「Night Time Is The Right Time( 1958 ) 」のオリジネイターである、ってことでしょう。
その後 Elephant Records に移るけどパっとせず、Landslide Records で 1984 年に入れた『Tore Up 』で再び注目を浴びるようになりました。
その Landslide から Alligator に原盤が提供され1990 年に Alligator AL-4792 TORE UP として発売されております。

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