Night Life

Willie Nelson


06-07-09 SUN.




午後も七時になろうというのに、いまだ上空は茜色の残照に染められて、近くの神社の宵宮に向かう人々のそぞろ歩き、かすかに風に乗って流れてくるソース系の匂い⋯
まるで「すでに」想い出の中にあるような夏の宵。

ふと、そんなとき、やはり聴きなれたお気に入りのナンバー、ザ・プラターズの Twilight Time などがココロの中を通り過ぎていくのですが、それ、ブルースでもないのに、もうとっくにこの日記で採り上げ済みだしなあ⋯
そして、おなじように、こんな情景にマッチしそうな

In the evening...と始まるこの曲。そう、Night Life ですが、主だったものは(って「おいおい、カンジンなのを採り上げてねえじゃねえか!」っちゅうドトーのような抗議は無視して、と)すでにこの日記でやっちゃってるんですよねー。
そこで苦し紛れに、先日の Nappy Brown の Right Time と同じよに、名曲のルーツを訪ねてシリーズ(あ、ウソですよん。そんなこと言い出したらまた収集がつかなくなっちゃう⋯)第二弾として、オリジナルの Willie Nelson を「聴いてみる」ことにいたしました。

そもワタクシがこの Willie Nelson っちゅうのを「知った」のは、某 T 社の乗用車、アメリカ車のセダンのプロポーションに近づけるため、全長を伸ばすんじゃなく、全高を「圧縮し」一見、マーキュリーみたいなシルエットになる、でも乗ってみると(屋根が低いんだから当たり前だけど)なかは天井が低くって狭い!っちゅうアホなクルマで「 ED 」とかゆう(いまだったら「 ED 」なんて名前じゃ抵抗を感じちゃう中高年男性も多いかも⋯)カリーナ系列のクルマを発売したときに、その TVCM にこの Willie Nelson の Stardust が使われてて、そのヘンに都会的なような、でも装飾過剰なのに、ミョーに寂しさもある、みたいな曲作りが印象に残り、おもろいやつがおるなあ、てな感じでした。

そしてそんな記憶もあらかた消えようとしていたときに、ブレイクダウンの房之助の Night Life を聴いて、それがもうモロ衝撃でしたねー。
実はその前に B.B. のでそれ、聴いていたのですが、はっきり言って近藤房之助の Night Life は、おそらくその下敷きとしたのではないか、と思われる B.B. のより遥かにココロに来たのです。
それは後に Aretha Franklin のライヴでの Night Life を聴くまでは、ワタシの中での Night Life の「最終形」として君臨しておりました。

しかし、一方、それをさらに遡った方、つまり、この Willie Nelson の Night Life にはまるで興味が湧かず、別に聴かんでも⋯てな調子だったのはたしかです。
そんな状態にちょっとした変化をもたらしてくれたのが、あの Austin City Limits での W.C. Clark による Ain't It Funny How Time Slips Away でした。
当初、これのオリジナルが Willie Nelson だなんてまったく知らずに(え?ライナーくらい読め?でへへ、そーなんですよねー)、いい曲じゃのう、なんて思っておったのですが、ひょんなことから、ここでも Willie Nelson の名前が出てきて、およよ、そうなの?と、初めて意識し始めた、てなていたらくで、いやもうまったく面目ない。

てなこって Willie Nelson の Night Life、予想してたのとはちょっと違って、スティール・ギターによる「とろとろ」ポルタメントも甘〜い、でも、どことなく寂寥感に溢れた、不思議なパースペクティヴで悠揚迫らず、まさに、夜の街をあてもなくそぞろ歩きするがごとき適度な孤独感をひきずったまま、ネオンの影を追うようにスローモーションで流れるクルマ⋯って、それは、カリーナ ED(ウロ覚えなんでちゃうかもしれません)のコマーシャルじゃん。
いやあ、CM ディレクターがこれ、バックに流したくなる気持ち、判りますねえ。ま、実際にゃ、これじゃなく Stardust なんですが。

ところで、前から謎だった「サビ」部分が、つまり街で見かけた情景描写だったことが判明いたしました。
なるほど、こゆとこから、この曲がブルース・フィールドでもひろく採り上げられた理由だったのねん。
ジャンル的には「カントリー」っつー分け方になってるようですが、でも、あの Stardust もそうだけど、スタンダードであろうが、なんでもこの Willie Nelson のスタンスで、サザン・ロックで使う意味での「レイド・バック」とはちゃう(あ、でも「正しい」のはこっちのよな気が⋯)後ろへのもたれ方で「とろんとした目つきで」捉えられると、なんだか、その曲のもっていた隠れた資質までが浮上してくるような気がいたします。
もっとも、そのサビ部分ですが、ブルース系のかたがたは例のサブ・ドミナントからディミニッシュ、トニックとそのセヴンス、ちゅう「あれ」にしちゃうんですが、オリジナルはそのスタイルじゃないんですねえ。 うん、なかなか面白い描写ですよ⋯

自分でも歌う曲としての Night Life はやはり房之助の投げかけた「道」を辿ることでしょうが、でも、こんな夜に聴いているぶんには、なかなか「来る」じゃないの。
ミョーに気に入っちゃったぜ⋯

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