South of the Border

Sunset Gangs


06-07-29 SAT.



たぶん「梅雨明け宣言」なんてもの、まだ聞いてないよな気がするんで、気象学的にはまだ梅雨の内なのかもしれませんが、それでも「いっちょまえに」充分に暑い⋯いえいえ、明けてないぶん、湿気が籠って、これはこれでなかなかに「まとわりつくよな」暑さで。これもまた「日本の夏〜っ！」ちゅう感じではございます。
これがホントに梅雨が明けて「真夏」になればなったでそりゃもうキョーレツな暑さで（あ、弘前は正確には三方を山塊に囲まれた、津軽平野の南の果てみたいな位置にあり、岩木川流域の平坦部で一カ所塞がれていないものの、半分「盆地」みたいなもんですから、盛夏にはそりゃもうバクレツな暑さになったりするのです）ノックアウトしてくれるんでしょが、ちょーどこのくらいの「暑さ」さだと、まだココロに余裕（？）がありますから、夏らしい音楽を楽しもう、てな度量の大きさ（？）を見せてられるっちゅーワケ。

そんな気分でナニ聴こうかな？ってなったとき出して来た（そう、ごくタマ〜に聴くけど、普段はその存在も忘れられがちな、アナログ・ディスク・ラックのいっちゃん端っこで、知るひとぞ知る富墓林なんてのの隣りにひっそりと眠っておるのでございますよ）この 1975 年の、久保田麻琴ちゃんとしては二枚目となるアルバム『ハワイ・チャンプルー』、これなんてまさにそんな気分にうってつけでございましょ。
ただ、これに収録されておる「初夏の香り」はあの初出のシングルでの井上ケンちゃんのモロ Amos Garrett かいな？っちゅうトロけるギターが良かったものでございましたが、ここではスティール・ギターになっちまってて（そりゃトロけ過ぎだ、っちゅうの！）、あの清冽な印象はかなり「失せ」、なんだかやたら「練れ」ちゃったありきたりなスタンダード・ナンバーみたく仕上がっちゃったってのはどーしたことでしょ？
ま、そこらへんはプロデュースの細野晴臣のセキニンっちゅうよりは、むしろ久保田麻琴ちゃんの「心変わり」じゃないかな、と睨んでおりますが、そんなことはさておき、このアルバムでは全編、そのタイトルに恥じず、ハワイアン・テイストに沖縄風味を大量投入してパシッフィカン・トロピック（あ、正確には「トロピック」っちゅうのは南北の回帰線までのゾーンを言うのですから、ハワイも沖縄もそっからは「実は」遠いのではございますが）なムードを「過剰なまでに」演出したサウンドとなっております。

そこらが前述の「初夏の香り」が漂わせている本土の、それも首都圏近郊のやや閑静な住宅街的シチュエーションとはハレーションを起こしておるのかもしれませんが、このアルバム、喜納昌吉の「ハイサイおじさん」を「紹介した」という意味ではまことに重要なプレゼンスを発揮していた、と言うことが出来そうです。
全編に流れるスティール・ギターが良くも悪くも染め上げているそのトロピック・ムードは、聴き過ぎると多少鼻につくけれど、この「国境の南」では、いわゆるメキシコ的な、たとえばマリアッチ的な風味なんてものを払拭しちゃってるようですが、かえってその国籍不明なサウンドに Down in Mexico way なんて歌詞がミョーに似合っちゃってます。
この曲自体は、遥か昔（ 40 才以上の読者以外は「まだ生まれてもいないころ」！）、まだ Shadows の足下にたむろしてたころのワタクシにとって憧れの Hank Marvin 師の演奏で初めて知ったように記憶しておりますが、それは「意識したのが」という意味であって、そのオリジナル（？）ははたしていつのことであったのか、はたまた誰の演奏によるものであったのか、なんてことはもはや遠い記憶の彼方のこととてまるっきり定かではございません。

それがこの久保田麻琴ちゃんのヴァージョンに出会ったとき、そのメロディと歌詞が初めて融合し（確かそれ以前は全部英語の歌詞で知っていたよな「あいまいな」記憶が⋯）、まったく新たな「国境の南」として焼き付けられたものでした。
当初はやはり「ハイサイおじさん」や「上海帰り」なんてとこに「引っかかってた（つまり、ちょっとナットクいかない、って感じね）」記憶がありますが、それからはや 30 年以上の年月が流れた今となっては、このアルバムを出してくるのは決まってこの「国境の南」を聴くため、というように変化してきております。

あ、これまた蛇足ながら、りっきーさんのヴォーカルで大江戸組のみなさまにもよく知られておる「バイ・バイ・ベイビー」も収録されておるのですが、ワタシ、これもシングルで先に出たあっちのヴァージョンのほうがゼッタイいいなあ。どっか Huey Smith みたいなバカ騒ぎチックなとこがあって。
ここに収められてるヤツはタル過ぎる！

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