Rock Star?

Alligator Tales vol.16


06-10-29 SUN.




1985 年の Alligator Records はひとつの節目を迎えます。
1971 年に Bruce Iglauer のアパートを「本社」として発足した Alligator は 1975 年には彼自身の住まいを兼ねた一戸建てに移転しておりましたが、それがこの年、ついに「本社」を近くの別なビルに「独立」させたのでした。
この時点ではフルタイムの正規従業員はたった 7 名で、宣伝広告、プロデュース、配送から場合によっては所属アーティストのプロモーションまでもこなしていたようです。
そんなふうに会社を新たな場所に移転させたってのは、それだけ、次第にその製品が「売れる」ようになって来たということなのでしょうが、案外、それを支えていたのは、ワタクシにはあまり興味の持てない一連の「ブルース以外の」ものだったのかもしれません。
この 1985 年には、Alligator はこれまでにない動きをします。
それは AL-4739 として登場した、この Lonnie Mack のアルバム、Lonnie Mack with Stevie Ray Vaughan : Strike Like Lightning から始まりました。
⋯なんて書くと、「おいおい、その前にジョニー・ウィンターがあったじゃねえか!」なんて言われそうですが、ま、ワタクシの「つまらない」こだわりとしちゃあ、この Lonnie Mack は「ブルースっぽいけど」れっきとした「ロック」のアルバムであり、そこら、ロックじゃなく、「ブルース」にしちゃったジョニー・ウィンターのアルバムには「あまり感心しない」からなのですよ。

その V 字形の谷間に金属製の橋を渡し、それをテイルピース代わりにビグスビーのフリップ・タイプのトレモロ・ユニットをムリヤリ装着した「イミ判んな~い!」っちゅう Gibson Flying V がトレードマークらしい 1941 年生まれの「白人の」Lonnie Mack はワタシは「まったく」知りませんでしたが、Freddie King や James Brown とも共演したことがあるんだそうで。
また Stevie Ray Vaughan とも交流があったらしく、Alligator からこの録音の話があったときにさっそく参加してくれるように頼んだみたいです。
その効果もあってか、このアルバムはインデペンデント系としては画期的な売り上げをマークし、数々の評で「 1985 年のベスト・アルバム」の称賛を受けることとなりました。
これと、この後に出てくる Roy Buchanan によって、それまではブルース・フィールドで「だけ」名を知られていた Alligator というレーベルが、これまではあまり縁が無かったロックのファンや、ロック専門の FM ステーション、また雑誌媒体などの広範囲なマスコミにも認知されるようになり、それが販路を拡大する際の「助け」になったことは「当然」のことで、そのような戦略的な意味合いから、この「変節」をポジティヴに捉えることも出来るかも、と考えています。

もちろん、そのようなロックあるいはポップスへの「すり寄り」をキョヒし、孤高の境地を死守するレーベルもあるでしょうし、その「強固な姿勢」故に評価されているケースもあるようですが、でもねえ、逆にそのようなレーベルじゃ「トラディショナル!」っちゅうスタイルに固執するあまり、マニア受けする作品を、というバイアスがかかり、ある意味、すでに「伝統芸」でしかないものを再演させているだけ、のようなプロデュースやら、実際には現実とは遊離してしまっているにもかかわらず、「これがブルースだ!」みたいな一種の詐術で売っていたりするとこもあるよな気がすんだけどなあ。
⋯なんてことを書くと支障があるかな?ぐふっ。

で、上でも名前が出てきた Roy Buchanan の前に Koko Taylor のアルバム AL-4740、Queen of the Blues がリリースされています。
このアルバムの特徴は、Alligator の所属ミュージシャンが大挙してレコーディング・セッションに参加していることで、録音を行っていた Chicago の Streetville Studios には Albert Collins、Abb Locke、Lonnie Brooks、James Cotton、Son Seals といった錚々たる顔ぶれが出入りしております。
で、ベースは全曲 Johnny B. Gayden!

そして次の AL-4741 が Roy Buchanan の When A Guitar Plays the Blues でした。
それまでにそこそこのキャリアもあった Roy Buchanan ですが、彼自身の「思うがまま」、やりたいことを好きなだけやらしてくれた、初めてのアルバム、というふうに Alligator の Biography では書いています。
と同時に、初めての「ブルースのアルバム」とも記されておりますが、まあ、それは Roy Buchanan が考える「ブルース」という意味でしょ。
てなことはともかく、このアルバムはファンにはウケがよろしかったようで、発売されるやチャート入りし、実に 13 週間も居残り続けたのだそうですから。
確かに、世の「ギター好き」にはかなり好評だったようで、一部には「神様」のように崇め奉る層まで出現していたよな記憶があります。
ただし、このアルバム全体を通していえることは、やはり「ギターが主役である」ということ。
そりゃ Otis Clay( A Nickel and A Nail )や Gloria Hardiman( Why Don't You Want Me )がヴォーカルで参加した曲などでは、上質のソウルにも近い味わいがあるのですが、やはり「歌」よりも「ギター」のアルバムです。

もちろん、それが戦略的に間違っていなかったからこそ「ちゃ〜んと」ヒットして、そのおかげで Alligator だってぐんと知名度を上げたワケですから、経営基盤が安定する=もっとブルースのアルバムもリリース出来る、ってえ「良い」結果となった、と言えないこともないような気がするようなしないよな⋯(?)


某キャンパスの並木も次第に色を鮮やかにしております。


午前中はパっとせず、午後も曇ったままでしたが、紅葉ってヤツ、キレイに晴れた日に見るのも悪くはないけど、こんな「冬めいた」拡散した光で見るのも嫌いじゃありません。

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