THE NEW BLUEBLOODS - 1

Alligator Tales vol.20


06-11-02 THU.




1987 年という年は、ワタクシが考えるに Alligator にとっても「ブルース」そのものにとっても重要な音群が「浮上した」年だったのではないでしょうか。

それは、およそ 1980 年代に入ってから地元のクラブ・シーンなどでは頭角を表して来ていたものの、全国的にはほとんど無名の、しかし才能に溢れた新しい世代のブルースマンたちを Bruce Iglauer のプロデュースで「集めた」ある種、先駆的・冒険的とも言えるアンソロジー、AL-7707 THE NEW BLUEBLOODS でした。
そして当然ながら、そこに収録されているのは、すべて黒人がフロントをとるテイクのみ!
ホント、当たり前のことだけど、そこらにだらしない「自称ブルースファン」におもねって白人ミュージシャンなんぞを混ぜたりしなかったのはエラいっ!

あ、でも、なによりもこのアルバムで特筆に値いするのは Dion Payton のヒット、All Your Affection Is Gone の存在でしょう。
およそ 1950 年代、あるいは 1960 年代のシカゴ・ブルースを「神聖視」し、マディの悪口こくバカものには徹底的に聖戦をしかける C.B.F. =シカゴ・ブルース・ファンダメンタリストのみなさまには「ゼッタイ!」に認められることはないでしょうが、「現実のシカゴ」では、特に若い世代のブルースファンに熱狂的に支持され、Michael Burks などによっても採り上げられるなど、ある意味、1980 年代後半以降のシカゴのライヴ・シーンを席巻する「音」となって行きます。
まあ、特にここ日本では「シカゴ」と言うと「チェス!」ってえ声が返ってくる、っちゅう「常識」が出来ておりますから、この All Your Affection Is Gone が「まともに」認められるワケなぞなく、「これじゃロックだ!」なんて反応がほとんどだったようで⋯
ただ、この Dion Payton これだけの才能がありながら、ナゼかいまだにソロ・アルバムは一枚も無いんですねえ。
もしかすっと、意外と気難しくて、どこも条件が折り合わなかったりなんかして⋯?
もちろん、別に引退しちゃったワケじゃなく、現に昨年の Iowa 州 Sioux City で行われたフェスティヴァル、Saturday in the Park では Dion Payton and the 43rd Street Blues Band が出演しております。おそらく、ここでも All Your Affection Is Gone の「あの」音が鳴り出した瞬間、場内は「沸騰」したことでございましょう。

⋯と、アルバムの収録順を無視してトバしちゃいましたねえ。いかんいかん、え〜と、それではひとつっつ。
まず最初は、Albert King のバッキングからレゲエのピーター・トッシュ、そしてボブ・マーリィのバックも経験した「武者修行(?)」を活かし、独自の表現力を獲得した Donald Kinsey が率いる the Kinsey Report。
Kenneth Kinsey のシンコペート気味のベースからしてファンク系の「喰い方」とは違った、むしろロック寄りなテイストがありますが、ギターの「飛び」具合じゃやはり Dion Payton には負けてますねえ。

続いての Valerie Wellington は直前の 1984 年にすでに Million Dollar $ecret をリリースして、もはやある程度は知られておりましたから、「ただの」新人とは言えないのではございますが、なんたって、ここでのピアノがあのアリヨ、有吉須美人で、しかもベースも Nick Charles ですからねえ。ま、地域限定ネタとは言え(?)青森では二年続けてフェスティヴァルに来た二人が入っとるワケで。
あ、Valerie の歌だって(ウマ過ぎるけど)なかなかいいですよ。
日本にも来ていますし、1992 年にはアルバム Life In The Big City をリリース。またこの年には TVショウ Blues Goin' On にも出演、その時の録画は Oprah Winfrey's Harpoという媒体が保有しているらしいのですが、そのサプライ面は不明です。
そして 1993 年(一部のサイトで 1991 年に死亡、としてるのを見かけましたが、じゃあ Blues Goin' On に出てたのは「亡霊」?) 1 月 2 日、Illinois 州 Maywoodで、脳動脈瘤破裂に伴う「くも膜下出血」で、わずか 33 才の若さで急死してしまった悲劇のヒロイン⋯

そして「待ってました!」の Dion Payton!あのアタマの音を聴いただけで、もう自分のカラダの生体活性がアップしちゃうよな、このワクワク感!いやもう、この住宅事情の悪い日本ではなかなか難しいかとは思いますが、出来ることなら、お宅のオーディオが許す限りの大音量で(!)こいつの洗礼を浴びてくだされ。

次ぎの The Sons of Blues / Chi-Town Hustlers ですが、ここでの The Sons of Blues は名前は一緒でも、二年連続で青森に来た「現在の」S.O.B. とはメンバーが異なり、ギターが Carl Weathersby 時代のものです。
Sons of Blues 自体の起源を辿ると、1977 年の Berlin Jazz Festival に 、Jim O'Neal が委任されてブルースの若手を送り出すことになり、13 人のメンバー( James Kinds、Dead Eye Norris、Bombay Carter、Harmonica Hinds、Vernon Harrington なども含む)が選出されたのですが、その中から、自然に Freddie Dixon をベースに、そしてギターについては Jim O'Neal の薦めで Lurrie Bell、そしてドラマーには Clifton James の息子、Garland Whiteside を据えてでスタートした、このユニットこそが The Sons of Blues の出発点だったようです(ただし、その後ドラムが Jeff Ruffin に替わっております)。
つまり Billy Branch 以外はみな、ブルースマンの息子だったため、Sons of Blues と称することになった、と。
アメリカに帰ってきてからは小規模なギグをこなし始めたようですが、そのさなかに Lurrie Bell がバンドを去り、急遽 John Watkins をギターに据え、また Johnny B. Moore も一時いっしょにやってたこともあったようです。
John Watkinsもまたやがてバンドを去り( because he was a leader himself.─ by Billy )メンバーはいくつかの変遷を経て行くことになるのですが、ギターの Carlos Johnson が抜けた後に Carl Wearhersby が入った時点でこの録音が行われています。
この録音では J. W. Wilkins の Chi-Town Hustlers と Sons of Blues の合体(?)で収録されておりますが、ここでのヴォーカルは J. W. Wilkinsで Billy Branchではありません。

かわっては Professor's Blues Review Featuring Gloria Hardiman ですが、実は、このアルバム THE NEW BLUEBLOODS 中、最も良くリクエストされた曲らしいんですねえ。
実際、この Meet Me With Your Black Drawers On は 1987 年のトップ 40 に入っているのですから、これはなかなかの健闘、と言えるでしょう。
Gloria Hardiman はゴスペル出身シンガーらしいのですが、彼女のヴォーカルがまた、クール&ドライでキレのいいこと!
この一瞬、Fever の Peggy Lee を思い出させるよな、粘着性の少ない突き放すよな距離感、ただもんじゃありません。
いったんバンドを作ったのが内紛から解散し、しばらくセンプクしてたのが、また活動を開始した、とかいうウワサもあるので今後が楽しみです。
ところで、この Professor's Blues Review ってのは、教会の牧師の息子として生まれ、クラブで演奏をするようになるまでは教会で伴奏をしてたという Professor Eddie Lusk が率いるバンド名で、ここでは Gloria Hardiman ですが、後に Delmark に入れたアルバムでは Karen Carroll をヴォーカリストとして採用しています。ただ、1992 年に亡くなってるんですよね、この Professor⋯

— とまあ、ここまででこの THE NEW BLUEBLOODS の半分ですが、この調子だと今日に「突っ込む」と長くなり過ぎるんで、後半は明日!


いま、ヨーカドーの催事で近隣の洋菓子店を 15軒まとめた Sweets Collection ってのをやってるんだけど、その顔ぶれがなんともはや。
と言うのは、ワタクシが、これはウマい!と思ったケーキ屋さん、たとえば Courrone、La Poire、そして Croissant に「宮野」ってとこが「まったく」参加してないんですよ。
どころか以前、うへ〜、と思ったお菓子を作ってたお店ばっかり⋯


ま、なにごとも先入観で決めつけてはいけませんから、もしや?と意外な名品を期待したのですが、う〜ん、前半戦はあまり芳しくはございませんね。
マズくはない、ってのはありますが、でも今回、参加してない各店の「それ」と比べちゃうと、ややブが悪い、ってとこかなあ。
それでも、参加してる中には青森の 5th Avenue や、黒石の Bell Primtemp のように、ものによっちゃそこそこイケる、ってお店もあるのですが、そーじゃないとこで、うわ!こんな美味しいものがあったの?てな驚きに出会いたいのよねー。

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