No Screamin'

Alligator Tales vol.34


06-11-17 FRI.




こんな言い方は両方を侮辱してるよな気もするけど、ま、「フザケてない Screamin' Jay Hawkins 」てな印象だよねー。
でも、歌は Screamin' Jay のほうがアットーテキに「上」だけどさ。
なんて言うとミもフタも無いけど、ピアノに関しちゃあ、こっちが上かもね。
歌でフザケてないぶん、ピアノはこっちが余裕で遊んでる。

⋯あ、いきなりシツレーいたしました。
1989 年の Alligator 通常シリーズで Lucky Peterson に続くのが冒頭の「なんじゃそりゃ?」って紹介で登場させられちゃった Charles Brown でございます。
ま、そー言って、「おお! Charles Brown!」なんて顔を綻ばせる方ってのはどれだけいるんでしょか? ま、しょーじき、あまし多くはないんじゃないか、とニラんでおるのですが。
この Texas 州 Texas City で 1922 年に生まれた Charles Brown、10 才からクラシックのピアノを習い始め、しかし Art Tatum を聴いたあたりからジャズやブルースに傾倒してったようですね。
化学を専攻してカレッジを卒業した彼は地元の高校で化学の教師になったのでしたが、どうやら、そのあまりの薄給ぶりにイヤ気がさした彼は「公式どおり」西に向かい、Los Angeles に姿を見せたのが 1944 年のこと。
そこで Johnny Moore に雇われ、彼のバンドでピアノを担当することになります。
そして結成されたトリオ The Three Blazers はヒット曲 Driftin' Blues で、チャートのトップを独占していた Louis Jordan を「引きずり降ろした」のだそうで。

以前 Aladdin がらみで手がけた(?)Philo レーベルで Charles Brown が出てきています⋯

Philo P111 ( Nov.1945 / Re-released Aladdin A111; Mar./Apr. 1946 ) : Baby, Don't You Cry / Blazer's Boogie

最初の(?)P111 レコードのセンター・レーベルには作詞作曲 Johnson-Washington の名前。次の行には大きく「 JOHNNY MOORE'S THREE BLAZERS 」と演奏者名。
その下には例の細かい文字でもって Charles Brown, piano ; Eddie Williams, bass ; Johnny Moore, guitar(やはりギターはいっちゃん最後なのね⋯)と。

そしてレコードの穴のすぐ右には Vocal CHARLES BROWN と書かれております⋯とっこっろっがっ
困ったことに「まったく同じ」Philo P111 でありながらカラーがレッド系じゃなくブルーで曲名と作詞作曲者のとこまでは同じなのに演奏者名が「違う」P111 が存在するのです。

それは⋯ CHARLES BROWN and THE THREE BLAZERS っとなってるんですけどね。

別にワタクシ英語の権威ではございませんが演奏者名で「チャーリーと赤熱トリオ」とあったら、じゃ合計で四人だな?思うのが普通じゃない?

あ、赤レーベルは「ジョニーの赤熱トリオ」ですから、まあ全部で三人でいいな、なんですけどね。

さてセンター・レーベルのいっちゃん下には当然メンバー名が列挙されてるんですが「と~ぜん」赤レーベルとまったく同じ。そしてレコード穴の右の VOCAL はあるけど誰が歌ってるかは書いてません。つまり最初のはギターの Johnny Moore がヘッドで、こっちはピアノの Charles Brown がリーダー扱いなワケ?なんでそうなったんでしょねえ。

グループ内での勢力争い?でも、最初の JOHNNY MOORE'S THREE BLAZERS は Aladdin A111 として、もいっかい出てるけど CHARLES BROWN and THE THREE BLAZERS 版は Philo だけで終わり。

この二つはシングル(ちゅうても当然シェラックの 78rpm SP 盤ね )のコレクター向けサイトに出ておりましたがどっちもいまは「在庫なし」。ヒョっとして青盤のほうがレアで高いのかも?

その後もヒットを連発し、ほぼ彼自身の人気が固まった 1948 年には The Three Blazers から独立し、1950 年代半ばにかけて、ソロでも Find Yourself Another Fool や Black Night なんてヒットを連発して行きます。
ただ彼の栄光の日々もそこまで。

彼の「明らかに」クラブそのもの、っちゅうサウンドはやがて来るエレクトリック・ブルースのパワーの前で色を失い、ロスのクラブで自分の世界を理解してくれる少数のファンに心を込めて歌う、てな生活を送ってたようですね。
それでも 1970 年代に入るまでレコーディングは続けてはいたようですが、「ご想像どおり」そのセールスは芳しいものではなく、このまま消えていくか?てな雰囲気だったようですが、そこで形勢を逆転(?)させたのが 1980 年代に入ってから、Sweden のレーベル Route 66 からリリースされた彼の古い録音のリイシューでした。
それによって New York のクラブ Tramps に出演した際に共演した Billy Butler の知名度のおかげか New York Times にもその出演が採り上げられ、そのことが契機となって録音のチャンスが与えられた、ってのがこの AL-4771One More for the Road だったのです。
それが 1986 年のこと、そしてリリース元は Blue Side レーベルで、このリリースによって彼は数々のフェスティヴァルにも出演するようになりました。
しかし、その Blue Side は 1988 年に倒産してしまいます。それも TV ショーで Ruth Brown と組んで注目もされる、って直前に⋯

で、それを拾い上げ、リマスタリングして再発したのが Alligator っちゅうワケですね。
ですからプロデュースにも監修にも Bruce Iglauer の名前は登場いたしません。
そんなワケで、このアルバム、これまでの Alligator とは「まったく」肌合いの異なるサウンドで、良くも悪くも「クラブ」でございます。
なんだかハリウッド映画にでも出て来そうな、男女が語らうクラブでのシーン、背後に流れていそーな「音」、まさにそれですねえ。
テイストはあくまでもジャズィに、そしてマチガイなく「洗練された都会のナイト・シーン」でございます。けっして犯罪の多発する荒廃した「都市」なんぞではなく、ね。
お手元にはムーン・シャインなんて安酒ではなく、おっされ〜なカクテル(ドライ・マティーニ、そうだなヴェルモットは一滴だけ⋯)。そんなシチュエーションにこそマッチする Charles Brown、ワタクシもかって彼の Trouble Blues を採り上げておりますが、それはこの Alligator 盤の音源から 27 年も遡る昔の録音でございます。

AL-4772 のアルバムはまたまた登場!の Lil' Ed and the Blues Imperials の Chicken, Gravy and Biscuits でございました。
こちらはもう説明不要、てなもんですよね。
タイトル・チューンがやたら白人のロックンロールっぽい軽さで始まりますが、コリンズちゃんでお馴染みの Master Charge なんて、おいおい、こんなんもやるんかい?てな節制の無さでまことによろしい(?)
ただ、Blues for Jeanette や Got My Mind Made Up なんて聴くと、Hound Dog Taylor みたく連続 5 時間でも、みんなを踊り続けさしてやるぜ!っつうスタンスとはちょと違う、じっくり聴かせたい、なんてえ野心(?)も感じちゃうんですが⋯
ま、音の幅は広がってますが、問答無用でジジイババアまで席を立たせて踊らせちゃうぞ!てなパワーとしては「ダウンしてる」んじゃないかなあ。



なかなかいい色に染まった空がきれい。


南に向かう航跡だ⋯

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