He's gone...

Rare blues enough !


07-05-08 TUE.




すでにみなさまもご存知のように Carey Bell が亡くなりました。


今日はそれを悼んで、彼のアルバムについて過去にアップした部分を再録させていただきます。

AL-4828 は Carey Bell の Deep Down!
2003 年の 7月に行われた第一回青森安方フェスティヴァルでのシカゴ・ブルース・オールスターズでは、Bob Stroger がベースを左右に揺らすようにしてそのリフを弾き始めて、ワタクシなんぞ思わず歓声を上げてしまった I Got To Go で始まる「ちょい」ファンキーなアルバムでございます。
ま、なんたってキーボードが Lucky Peterson ですからデジタル音源らしきピアノでくるくるまわすリフだってひと味ちがうし、ボトムをささえるベースが Johnny B. Gayden ですからねー。そりゃ旧来の「シカゴ・ブルース」なんてえワクに収まるワケございません。
もちろん Little Walter でお馴染みの I Got To Go、そのオリジナルの香りをよく残しておりますが(って、そー思わないひともいるんでしょね)、さすがバックのギターだって「あの」Carl Weathersby と Lurrie Bell ですから、リズムの取り方ひとつだって、実に柔軟で、でも出てくるリフとしちゃあタイト!っちゅう、いっつもそれを逆にしたのに苦しめられることが多いワタシとしちゃあ、もうヒジョーに「羨ましい」!
ベースだって、一見、ありがちなパターンを弾いてるように思うでしょが、そこはさすが Johnny B. Gayden、独特な送りピック⋯ってピック使ってないか?え〜、なんちゅうかオルタネイトっぽい、っちゅうのかな?その引っかけ具合がたまりまへん。
そして意外だったのは、Carey Bell 自身のヴォーカルもハープも、そんな「ファンキー」テイストに良くマッチしてる、ってこと。もう明らかに Chess の時代とは違う、まさに 1990 年代のブルースなんですよねー。
前述の 2003 年のライヴでもやってくれた(っつうか、この時の Carey Bell は、このアルバムに収録したナンバーをメインにしてたんじゃないかな)Low Down Dirty Shame なんて(青森ではベースが Bob Stroger じいさんだったんでそれほどのキレは無かったんですが)Johnny B. Gayden のベースが「シカゴ・ブルース・ファンダメンタリスト」のみなさまがゼッタイにユルさないだろな、っちゅうメッチャ Slappy で、もろ骨盤に来ます。

そして唯一、ワタシ「は」あんまりご存知じゃなかった、ドラムの Ray "Killer" Allison にしたって、Lonesome Stranger じゃ、まさに「とんでも」な超倍速刻みかいな?っちゅうハイハット・ワークで驚かせてくれるじゃないの。うん、それでこそ「現代の」リズム・セクションっつーものでございましょう。
かと言ってシャッフルがダメか?っちゅうとそんなこともございません。エラそなこと言ってもブーギひとつまともに叩けないなんて連中が多いなか、さすがプロはちゃうわい、てなドラミングを見せてくれてますよ。
またワタクシも(ナマイキにも)レパートリィに加えさせていただいとる I Got A Rich Man's Woman での重心の低い、でも決してモタっていない(スローっちゅうと「モタっていい」、いえそれどころか「モタらなきゃ」なんて手合いもいるようですが、それはちゃうぞ!)スムースさ!

いやもう、このアルバムについちゃあ、いくらでも語ってしまいそうになりますね。そのくらい気に入っているアルバムなのでございます。
もちろん、ご自分でもハープをおやりになる方ですと、またワタクシとは聴き方、あるいは聴きどころも違うでしょうから、異なった評価を下されるやもしれませんが、もともと偏向しとるワタクシめにとっては、マチガイなく、このアルバムこそが Carey Bell の「ベスト」!
ま、ハーピストの中じゃあ、ワタクシ、この Carey Bell がいっちゃん好き、ってなもんですから、その意味では「マイ・ベスト・ブルース・ハープ・アルバム」っつーことになりますね。
なんたってこの人にとってのハーピストってのが Little Walter、Sonny Boy Williamson II、そして Big Walter Horton ってあたりに(勝手に)ココロ通うものがあります。
たとえばこの Carey Bell がシカゴに出てきたのって 1956 年の 9 月、19 才のときだ、ってんですから、1946 年( 1948 年という説もある。最近はややそっちが優勢か?)に出てきてる、っちゅう Junior Wells とは 10 年の開きがあるワケです。
で、聴いていただけば判るとおり(え?判らん?そゆひとはここトバしてねん)、その Junior Wells と Carey Bell では、単に年代がどうこうじゃない、なんか本質的な違いがあると思うんですよね。ま、変な概念かもしれないけど、自分に対する「買い被り度」みたいなとこで。
そりゃ Wells はホントにウマい!
トークから入って自然に歌になっていくところ、曲の見せ方、聴かせ方、万事ソツがありません。ま、天与の才、っちゅう感じのエンターテインメントを身につけてるのかもしれません。
それからすると Carey Bell は、なんだかもっとナチュラルに、「生きているそのままのテンションで」当たり前なブルースを紡ぎだしているんじゃないか、てな印象があります。
そんな彼のアルバムのなかでは、この Deep Down、実に充実したバッキング陣を与えられて、珍しくアグレッシヴな Carey Bell が描き出されたのではないでしょうか。

今でもあの青森でのステージが鮮烈に思い出されます。
トップ画像はそのときのものですが、携帯でしたから、これが限度でした。(だって撮影していい、なんて聞いてなかったもんでカメラ持ってかなかったし⋯)

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