あなたに似た人

02-10-15
タイトル、「あなたに似た人」と言えば、そう、知ってる方もおられるでしょうが、ロアルド・ダール。
で、ロアルド・ダールと言えば、こちらはもう知ってる人は「かな〜り」少ないに違いないと思われる「星の時計のリデル」でのヒューのアシスタントですね。
で、ヒューと言えば、そのミドル・ネーム以降が、実在のジャズのトランペット奏者(だと思ったけど)ビックス・バイダーベックのパクリで、なんてコトまで知ってるヤツあ、まず居ないだろなあ・・・

さて、今日から治療のためプチ(?)入院となったりっきーさんから送られて来た「お宝映像」の第2段でございます。
Tin Pan 2000と題されたそれは、りっきーさんの言葉を借りれば「我が国の20世紀ポップスを造り上げた巨匠達のまさに世紀末を飾る Tin Pan のショー」( at 渋谷 NHK ホール、2000年 12月20日)の記録です。

オープニングはいきなり大貫妙子の「色彩都市」なんだけれど、dsとパーカッションが合計3人も居る変わったセット・アップです。
この曲自体はアルバム Cliche に収録されたもので、当時は「いつでも心は雨のち晴れ」の雨の「め」をブリっこっぽく口元をこわばらせて歌っておりましたが、さすがにこのライヴでは、そのようなコトもなく、素直に歌っていてケッコーでございます。
曲自体は良く出来た POPSなのに、その一点がどうにも「引っかかり」好きになれなかったものです。最初っから、こうやって歌ってたほが良かったんじゃないの?

やはり、このくらい歌唱力があると、かえってスナオに歌えないものなのかもしれないね。
彼女を TOSHIBA 系の加藤和彦がプロデュースした(と記憶してるけど・・・)ってゆうアルバム、『ROMANTIQUE』では(ワタクシが生理的に受け付けない、大っ嫌いな)荒井由美を意識したような粘着性(?)の作りで、曲の出来はいいのに、この歌い方は「さぶイボ」もんじゃのう。と、おおいにシラケさせてくれたものです。
ま、さいわい、と言うかこのアルバムに収録された「雨の夜明け」と「新しいシャツ」は後にクラシック系のアコースティック・セットでリメイクされ、見事によみがえっておりますが。(一方、「蜃気楼の街」は、SUGAR BABE のアルバム『SONGS』に収録されたテイクの方が良かった)

ただ、VICTOR 以前、クラウン時代の2枚、『Grey Skies』、『Sun Shower』の時代はまた唱法が異なり、まだ安定していない、と言うか、未完成というか、気持ちだけが前に出ているような印象を受けましたが。
VICTOR 移籍後の最初(だと思ったけど)のアルバム『MIGNONNE』でもその傾向は残っており、曲の持つ広がりを歌いきれていないような気がします。そして、このアルバムからも「横顔」と「突然の贈りもの」が後にリメイクされて、名曲化してますね。
もっとも、歌い方はともかく、「風のオルガン」など、曲としてはかなりな素材だな、という気はしますよ。ていねいに地声で歌う女性ヴォーカリストにジックリ歌ってもらえば、かなり活きるんじゃないかなあ?
あ、でも、あのメロが上にいった時、どしても裏返っちゃうか?かなり強引(?)なメロだもんね。

そんな彼女のヴォーカルが、イチバン自然な発声(?)に安住していたのが『アフリカ動物パズル』、『Comin' Soon』そして『A Slice Of Life』ではないでしょうか。
もちろん、それ以降の『Purissima』や『New Moon』あたりまで含めても良いのですが、この時期にはそろそろアコースティック・セットへの傾倒から、やや唱法にも変化を迎えているように思われます。
たとえば「Thema Purissima」、「朝の・・・」という歌詞がさらに「あ・さ・の・・・」と単音スタッカート化して行くのが、バッキングの弦楽器群の通奏和音との対比から来ているものと思われますがどうでしょうか?
その意味で先に挙げた3枚が、POPS として、もっとも「肉声化」に成功しているように感じます。

もっとも『アフリカ動物パズル』ってのはインストや現地での自然の収録音のトラックも多く、ヴォーカルのある曲が4曲だけなんですね( CM でもだいぶ使われた「お天気いい日」や、英語で歌われる静かなバラード「ソーン・トゥリーのうた」はかなりな支持を受けたようですが、残る2曲、特に「裸足のロンサム・カウボーイ」は実に「クサい」ある種の懐メロ系のビートでズッコケましたが、これがまた意外とクセになるんですよ)。このアルバムは、羽仁未央の監修した「BGV」のサウンド・トラックなんですね。だからインストが多いワケで。

続く『Comin' Soon』では再収録曲も多く、事実上の新曲は、12曲中8曲です。
このアルバムには、オンナのコから「かわいい!」と言われる「メトロポリタン美術館」や「ロボット・マーチ」などが収録されており、束の間の「童心ワールド」と言えるかも。
さて、続く『A Slice OF Life』ですが、それが一転、「オトナ」の世界が展開されております。
おフランスのユーモア溢れる映画監督、ジャック・タチの名作「ぼくの叔父さん」という映画に対するオマージュとも言える一曲、そのタイトルも同じ「ぼくの叔父さん」を除けば、他はすべて(あ、「人魚と水夫」はややメルヘンに振れてるけどね)日常の「重さ」、「倦怠」、「すれ違い」などを見据えたちょっとヒンヤリした作品がメインになっております。

特に、同名の映画の主題曲である「恋人達の時刻」は、間奏部分にジャズのテイストを盛り込んだ、なかなかアンニュイな仕上がりになってますねえ(でも、この曲に関しては、ミニコンポの拡販用景品として用意されたスペシャル CD に収録された別テイクのほうがさらにいい!)。
この『A Slice of Life』、この曲を探して辿り着いたようなところもあるのですが、でも一番の収穫は、大村憲司がマーク・ノップラー系の「一筋縄じゃ行かない」ギターで参加している一曲目「あなたに似た人」でしょう。(和田加奈子は彼女自身のアルバム『QUIET STORM』に、その歌詞だけを完全に変えて「ピンクのトゥ・シューズ」という曲にして収録しています)
クールな倦怠感をたたえた抑えめのヴォーカル、そしてそこに絡んでくるトリッキーな大村憲司のギター。仕上がりはスマートに、しかも控えめに突き放すような歌詞からなる上質な POPS として、独特な存在感を持つにいたった、と言っては誉めすぎか?
ん?Tin Pan 2000 の1曲目でこれだよ〜。

ま、いっか。だって、この時のレポート、もっといいのがこちらで読めますからねえ。
そう、りっきーさんの「ライヴ・レポート」!あれ見ちまった後じゃあ、同じよなコト書いてもねえ。で、こちとら絡め手から、ってんでちょと違う場所、掘ってみました。
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