冬の旅

2002-11-20
新聞のテレビ欄に某番組の予告が載っており、弘前市の幼稚園児が市内のスーパーで冬仕度のお買い物、とあったので見てみたら、な〜んだ青森市じゃん、ウソばっかり!

なんだこりゃあ?局のプレス・リリースが間違ってたのか?
でなきゃ、それ出した後で VTR にモンダイのある内容が含まれてんのが発覚して急遽、差し替えか?
ま、別に、知り合いから「ウチの下のコが出るから見てやって」なんてハナシがあったワケじゃないから、いーんですが。

それより、そのコーナーに続いて入った秋田のローカル線が良かったなあ。
秋田県ってのは、この夏にクルマで北上して来たエピちゃんと彼とハナビ(ペットのハムスター)が、マジであきれるほどデカかった(つーか、南北に長かった)っちゅう、あの岩手県とほぼ同じようなサイズなんですが、その南から2/5のあたりで右(つまり岩手県)の盛岡から→小岩井農場→雫石と来る秋田新幹線が、武家屋敷の続くたたずまいや、春の桜でも有名な角館町を通って秋田市に向かって行くのですが、その角館から分かれて、田沢湖の西を通って北上し、秋田県北部ギリギリを東から西に流れる米代川(よねしろがわ)に並行する奥羽本線・鷹巣駅まで辿り着く(たぶん)第三セクター運営の「秋田内陸縦貫鉄道」ってのがそれです。

一度だけ角館から鷹巣へ、という「下り」列車で通ったことがあるのですが、最初の田園地帯はすぐに終り、すぐに緑濃い山合いに分け入ります。
所々で現れる駅周辺の集落以外は、人影はおろか、道すら見当たらず、深い谷間を抜け、秋田杉の鬱蒼とした森や、落葉樹林などを縫うように進む、なかなかに快い「心細さ(?)」を味わえるルートとなっていました。

これがクルマですと、角館から県北部の米代川流域に出るにはもう一本ルートがあり、そちらは田沢湖の東側から北上する国道341号線です。
途中、もはや全国的に有名になったらしい「鶴の湯温泉」への入り口を通過し、さらに北上を続けると、天然ラジウムによる治療効果などから遠来の湯治客も集める「玉川温泉」があり、やがて八幡平を経て、青森県との県境の町、小坂に到る。このルートも山間部を通るのですが、冬季間は閉鎖されています。

秋田内陸縦貫鉄道と、つかず離れず北上する国道105号線もまた、かなりの山間部を走るのですが、こちらは冬も通れるみたいですよ。
ま、鉄道の維持管理のためにも、道路は必要なのでしょうか。
この鉄道にも最近は観光客のための「展望列車」みたいのが投入されてるようですが、12年ほど前だったので、乗ったのは普通の客車でした。
当時としては珍しかった女性の運転士さん、てのも話題になってはおりましたが、乗ったのはそれじゃなかったようです。

角館を出て最初のトンネルまではまだひらけた光景でしたが、その後は山合いを走ります。西木村の戸沢駅を出てすぐ全長6kmものトンネルに入り、出たところは「阿仁(あに)マタギ」という駅で、大覚野街道と言われる国道105号線から最も遠ざかる部分です。
ここには打当(うっとう)温泉が森吉(もりよし)山の南面を眺める位置にあり、熊鍋定食とかゆう恐ろしげな料理もあるとか(予約しなきゃダメみたい)。
ここからはまた大覚野街道方向に向かい、比立内(ひたちない)で合流します。
その先はほとんどトンネルは無く、谷間を国道とともに北上して行くのですが、阿仁合(あにあい)駅には、隣接して 1880年に建造されたドイツ人(だと思ったけど)鉱山技師のための煉瓦造りの洋館があります。
小ぶりなかわいい洋館ですが、なかなか味があります。とは言っても、いかにローカル列車とは言え、ここをゆっくりと見学してても間に合うほどの停車時間はありませんから、見ようと思ったら、一列車見送って、次のに乗るカクゴが要りますが。

その阿仁合の三つ先の阿仁前田(あにまえだ)駅には、テレビでもやってましたが、駅舎内に「クウィンス森吉」ってえ温泉があります。
ここでも列車を何本か見送る気合があれば、手ブラで入浴が出来ますよ。タオルセットや浴衣まで「レンタル」がありますから。ジェット・バスに打たせ湯もあるようです。朝10時から夜10時まで、(1月以外は)第一月曜日がお休み。

もうこの先、米内沢(よないざわ)のあたりからは五城目(ごじょうめ)街道、国道285号線と一緒になった大覚野街道は「阿仁街道」と名を変えて、秋田内陸縦貫鉄道とは離れて行きます。
やがて車窓には大野台の工業団地が見え始め、丘陵部から米代川流域に下ってゆくともうすぐ終点の鷹巣(たかのす)町。

角館から鷹巣までを最短時間で行こうとするなら、クルマでトバすのがイチバンでしょう。でも、この秋田内陸縦貫鉄道で、秋田の森林を眺めつつ、山里での暮らしに思いを馳せる、なんてのは、自分でクルマ運転してちゃ、そりゃムリ、っつうもの。
これから春までの間、平野部で横に飛びすさる雪を眺め、山合いでは静かに舞い降りてゆく天使の羽根のような大きな雪と、白く静まりかえった谷間の小さな町並みを味わうのも「旅人」の贅沢、と言うものかもしれません。
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