おもてなし

2002-11-30
なんだか東北新幹線が、これまで盛岡までだったのが青森県東端の八戸市までになる、ってのが近づいてきてるみたいです。
当然、八戸市を中心とする南部一帯(県の東側は、昔っから東部、ではなく「南部」と呼ばれています。「南部藩」の名残でしょうね。その南部藩の「家来」だったハズの大浦為信が謀反を起こし、勝手に独立しちゃったのが「津軽藩」らしく、前も「田酒」の件で書きましたが、南部人の持つ「津軽」への根強い「反感」ってのは、そのヘンが原因となってるのかもしれませんね)は、かなり盛り上がっているようです。
一方、この辺ではいまひとつ盛り上がってないみたいですよ。弘前と八戸の間にあって、八戸まで新幹線が来ることによって、間違いなく「便利になる」青森市では、それなりの盛り上がりがあるようですが、ここ弘前では高速バスで盛岡まで行って、そこから新幹線に乗り継ぐ方がケッキョク早いし安い、って状況に変化はないので、まあ、めでたいっちゃあめでたいけど、青森まで来たのならともかく、八戸じゃなあ・・・ってムードでしょか。

同じようなコトが東北各地で言えるみたいで、在来線の線路を改良するだけで運行できるミニ新幹線ってのが山形新幹線(東京から福島までは東北新幹線と連結して走行し、福島駅で分離した後、旧奥羽本線に別れて山形→新庄まで)と、秋田新幹線(同様に盛岡まで来てから旧田沢湖線という在来線を使って角館・大曲を経て秋田に到る)のふたつの路線に採用されて、それまでの観光ルートや観光プランニングそのものに「劇的」な変化を与えたのですが、そのミニ新幹線のルートから外れた市町村にとっては、当然ながらその「功罪」などの捉え方がかなり違うようです。

秋田新幹線が通り、停車もする角館町が大きく集客量を伸ばしたのに対し、秋田市から海沿いに南下する羽越本線の本庄や象潟では観光客は減少し続けています。
そして「奥の細道」がらみで語られる象潟・最上川を前提として、山形県の庄内地方、酒田市や鶴岡市あたりでは、現在、県の内陸部を新庄市まで北上してきている山形新幹線を、そこから西に曲げ、酒田市まで延伸して欲しい、という声と、一方では、新潟まで来ている上越新幹線を海沿いに北上させ、鶴岡・酒田まで延ばして来る方が良い、という意見もあるようなのです。はたして、どちらが庄内地方にとってプラスとなるのか?

現在、その北の秋田県境まであと僅か、と迫っている山形新幹線には、それに接する秋田県南部の雄勝町、湯沢市、横手市、そしてもうすでに「秋田新幹線が通っている大曲市」までが、こっちまで来ませんか?と誘致の声をかけているらしいのです。
樹木が空を目指して伸びて行くように、東北地方の新幹線網は「末端」を分岐させて北上させる形となっていくのでしょうか?
また、東北新幹線という主幹から日本海側に向かう支線はミニ規格とする、という暗黙の諒解があるとしたら、いずれは盛岡から花輪線に入り、弘前に到る「津軽(?)新幹線」なんてのも出来ちゃうんでしょうか?

でもねえ、盛岡から八戸って、距離がたった(なんて言っちゃイケナイんだろけど)96km強なのに、30年かかってるんだって。年に3kmちょっとだよ!そのペースでいくと、いま誘致を考えている自治体に届くころには、もはや自動車文明すら革命的な変化を遂げ、交通体系そのものがカンゼンに新たな局面を迎えてる可能性もあるワケですよね。
法規が改正されて、ローカル空港とハブ空港を結ぶコミューター航空が普及してるかもしれないし、新幹線にしたって、リニア・モーター・カーだけじゃなく、今後トツゼン現れるかもしれない新技術によって、もはや「過去の遺物」でしかなくなっているかもしれません。
高速道路での全自動走行技術が普及したら、自分のクルマそのものが列車化し、目的地に着いてからは個走行、という時代が来るかもしれないし、その場合でも鉄道の未来は大きく影響を受けますよね。
たしかに新幹線が通る・停まる、ってのは観光客の入り込み数に影響を与えます。
でもねえ、そればっかりでいいんでしょうか?そんな、観光客が落としていってくれるカネにばっかり依存するような行き方って、なんだか「さもしい」ような気がするんですよ。
観光地のみやげ物屋さんの呼び込みの声とかを聞いててイヤになったコトはありませんか?観光ガイドの、まったく心のこもっていない「語り馴れた」口調にウンザリしたコトは?
観光客相手だから、とボッタクリみたいな商売してるなコイツ、と思ったコトは?

ホントは、その街が「その街ならでは」の産業なり、文化なりを大事にし、そのことによって、そこでしか味わえない「なにか」を楽しみたいが故に、そこを訪れる「旅人」が静かに増えていく。ってのが理想じゃないでしょか?
旅人を落ち着いて「もてなす」ことと、観光客を大量に集め、少しでも多くのおカネを使わせよう、と画策することの間には雲泥の差があります。ワタシなら後者の思想で固まった観光地になんぞ、なるべくカネ落とさねえぞ!って気になりますね。
八戸でも「屋台村」とか、いろいろな施設がオープンしているようです。でもね、最後はもてなすココロですよ。「田酒(でんしゅ:青森市そばの油川にある西田酒造の銘酒。いまや全国的に有名)」が呑みたい、って遠来の客に「ここは南部だ、津軽の酒は出さない」なんてやってるようじゃ、「もてなし」以前のモンダイですが。
最終的に青森まで新幹線が行っちゃう十何年かの間に、たとえ終点は青森でも、八戸でゼヒ降りたい、ってヒトをどのくらい生み出せるでしょうか?
ご健闘をお祈りいたしております。
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