粗挽きかあ・・・

2002-12-02
ある出版社の書籍に、「秋田県は蕎麦文化の不毛地帯である」とあったそうです。
たしかに、かって天庵のオヤジも同じようなコトを言ってましたっけ。

なんで、こんなコトを言い出したかというと、「妹尾みえ」さんという方からメールをいただき、弘前でのブルースの旧事について訊ねられたのですが、その折りにご本人のお仕事を拝見できる、というサイトに飛んでみたところ、その一角に蕎麦関連のリンクを発見し、そこを探っているうちに、冒頭の言葉にショックを受けた、とかいう秋田県のお蕎麦屋さんが出てきたからです。

秋田県本荘市の蕎麦屋、とありますが、そもそも本荘市は羽越本線の列車に乗って通過した事はあっても、実際に市内に降り立ってみたこともなく、どんな町なのか、さっぱり実感が湧きません。
いろいろな手段で探ってみたところ、かっては六郷氏の統べる本荘藩二万石の本拠地だったようで、羽後本荘の駅からほど遠くないところに城跡もあるらしく、そのあたり、弘前に似通ったところもあるかもしれません。

さすが、武士の居住者も多かったのか禅宗の古刹があり、そのひとつ曹洞宗の長谷寺(ちょうこくじ)の仏像など、赤田の大仏と呼ばれる日本三大観音の一つだそうです。(でも正式には十一面観世音菩薩なんだって)てなことが判っても、やはり行ってみないことには、その「空気」みたいなものが掴めませんね。
こっからだと距離もそーとーあるし(とめごろおさんの大曲からだって、およそ70kmはあります。弘前からだと130km くらいでしょか?)行ってみなきゃウマいかどうかも判らない蕎麦のためだけにワザワザ行けるってえキョリじゃありませんやね。  
その蕎麦屋さんのHPを見てみたら、ちょっと気になるのが「当店の手打ち蕎麦は、石臼でゆっくりと丁寧に毎日自家製粉した碾き経ての粗碾き蕎麦粉100%を、一切何の繋ぎも使わず水だけで生粉打ちにします。その蕎麦は茹で上げるまで全く加熱されることが無く、薫り高く腰の強い蕎麦に打ちあがります。」とあるのですが、粗挽き(20メッシュ)という点がさてどうか?

実は弘前市内の某店でも、同様に「石臼による粗挽き」を標榜しているのですが、そこで出来上がった蕎麦というのが、ノド越しの良さがどうこうと言う前に、まず舌触りが実に「良くない」のです。まるで天然ゴムでもツナギに使ってるんじゃないの?って(もちろん、そんなコトはありえないのですが)妙にゴワついた蕎麦でして、田舎蕎麦なんて分類にも収まりきらない「不埒」な違和感だらけの仕上がりになっています。
ま、そんな蕎麦でも、あ、これこそホンモノの蕎麦に違いない、とカン違いしてる客も多いようで、それなりに常連客もいるようですから、別にいいのですが。
粗挽き、と聞くと、そのソバを思い出しちゃうもんで、さて、この秋田の蕎麦屋さん、どんなものでしょ?
やはり「蕎麦文化の不毛地帯だ」と確認するコトになるのか?
いやあ、そのヘン難しいですよね。お店の方の努力ってのは「ものすごい」ものがあるんですよ。リキ入ってる割に味はイマイチ、ってお店は。

みんな、一家言を持って(実はそれが良くないみたいなんですがね)、蕎麦哲学みたいなところまで昇りつめ、真剣に作っていらっしゃる、というのはよ〜く判るんですよ。よく判るんですが、力点が間違っているんじゃないでしょうか?
とくに蕎麦の「割り」「挽き」「篩い」「つなぎ」「水合わせ」「こね」「打ち」「茹で」などにこだわればこだわるほど、最終的に客が口にする「ツユとあいまった」味わい、ということを忘れて行く傾向が強くなるみたいなんですよ。
この手のお店は大抵、ツユがあまりにも疎かになっている場合が多いんですねえ。
たしかに、かってソバを純粋に(という言い方もヘンなんですが)主食として、かつコストを抑える必要があった時代には、大根のおろし汁に醤油だけをさして(それも無い時は梅干をツブして)ツユとして食べたりしていたらしいのですが、それを偲んで、ってワケでもないでしょうが、いまだにシンプル指向というか、ツユはミニマムで良い、という思想の残滓が、「まずソバだけで食べてみてください」だの「こちらのお水で食べてみてください」なんてくだらない風潮を支えてるんじゃないのかな。
そういう粗食回帰指向で行くなら、もり一枚三百円以下にして欲しいね。それだったら大根のおろし汁に醤油でも「意味はある」から。
さて、本荘市の、まだ行ったこともない蕎麦屋を肴にして、いつもの蕎麦論をやっちゃいましたが、蕎麦の味は食べてみなきゃあ判りません。
場所が場所なんで、いつの日にか行けるのかどうかも判りませんが、そのヘンを通ることがあったら(しかも定休日の水曜じゃなく、ね)、ゼヒ寄ってみましょう。

あ、でも、ワタシは秋田県の蕎麦が全部「ダメ」と言うのには異論があります。
だって、(現在おやじさんの健康上の理由で休んではいますが)ワタシの知る限り、もっとも旨い蕎麦が秋田県北部の町にあるのを「知っている」からです。
と書くと、あ、それってウチのこと?なんて図々しくも誤解するヤカラがいるといけないので、ツブしときますが、その本荘市の蕎麦屋さんの HP に辿りつくひとつ前のリンクでススメている秋田県内の蕎麦店のうち北部の 2 店は行ったことがあるところでした。「K」市の「K」はまあ、ギリギリで喰えるレヴェルですが、「O」市の「M」は 店の構えにはカネを使ってて一見、それらしいですが、味は問題外でした。
こんなのを一緒くたにおススメしちゃうから「秋田県は蕎麦文化の不毛地帯である」なんて言われちゃうんじゃないの?
もひとつ、「N」市の「N」もマズかったなあ。・・・とこの三つをツブシとかないとね、あんたらのこっちゃないよ〜!って。

と、ここで話題にした本荘市の蕎麦屋さんでしたが、行ってみる前に、ご店主がお亡くなりになってしまいました。( 2009年)

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