Soba Again

2002-12-14
とある日、「ぷ」さんとふたり、お気に入りの黒石市「ひさお庵」で美味しい蕎麦を食べておりましたところ、後方でなにやら語ってるのがおりました。
夫婦&姑らしき三人連れの中のテッペンハゲのオッサンが「いやあ、これなら"O"のほーが上だな、勝負にならないね、蕎麦の香りがこんなもんじゃないよ」、と辺りに聞こえるほどの(とゆうか「聞こえるように」)ホザいておられるじゃあ〜りませんか。
ワザとらしく「あの、青森の大野から浪館(なみだて)に向かって云々、と場所の説明までしてますから、はは〜ん、こないだ「油ソバ」喰いにった三内丸山の「とん吉」からヨーカドー行く時に右に見えた「O」ってえ蕎麦屋のことだな?と見当をつけまして、青森に行ったついでに「ちゃんと」行ってまいりましたよ。

弘前を十時半ころに出て、国道7号線を順当に北上(って実際は北東なんだけど)し、市内では雪で渋滞してるものでお店についたのが11時半でした。
青森市内は積雪の大半が道端に寄せてあるだけなんで、歩行者はヒドい目に逢ってますよ。
こりゃホントにドたっぷり降ったんだなあ!と実感(だってホンダ・ビートの車高を越える山積みの雪が狭くなっちゃった車道の両側に「壁」のように続くんですぜ)!
さて、「O」ですが角地の角寄りに店舗があり、残りの敷地がクルマ7〜8台は駐められそうな駐車スペースになっています。
店の入り口は道路に面しており、北国の店舗らしく、本来の入り口の前にもうひとつガラス張りの風除室とか称するらしい前室が付き、客の出入りに伴って寒風が吹き込まないようになっています。
入ってみると、我々がその日、最初の客でございました。
店内は全28席、左手には小上がりがあって、2卓・8席となっています。
実に喜ばしいコトに、店内は「禁煙」ですねえ。
マガジンラックには「お決まり(か?)」のサライなどが。

わたしはトーゼン「もり」を大盛りで、「ぷ」さんは「山かけ」を注文でございます。
するってえと、おやおや?他に客もいないってのに、まず「もり」が出て、しばらく「山かけ」が出てきません。
いけませんねえ。蕎麦職人として、どう、という前に「マネージメント能力」が欠落してるようです。
そーいえば、弘前の中華のお店でもこんなトコありましたねえ。
いろいろ頼むと、どの順番でどう出すか、じゃなく、とりあえず「作りやすい」モノから出てくるってえ店。だから3人で行ってバラでオーダーすると、運が悪いと他の2人ばっかし食べて、イライラして待つコトになります。
そこ?とっくにツブれましたよ。味だってたいしたこと無かったし。

ま、「もり」が先だっただけ、まだいいでしょう。
これが「かけ」系が先にだったら、ノビないように先に喰うしかないですからね、メチャメチャ気まずいですよ。
出てきた「もり」は水気たっぷり(というより水切りが悪すぎ!なっちょらん!)で、これなら「山かけ」を待ってもいっか・・・ 少ししてやっと「山かけ」も揃い、ようやく「いただきま〜す!」でございますよ。
蕎麦猪口と徳利は例の「翁」直系の「会心(青森市三本木)」に似たしつらえで、ツユそのものも、ややキレ重視で、初期の「会心」に少し似ていると言えないこともないですが、それよりは、やや浅薄な割り切り方を感じさせるものです。

ただし蕎麦のほうは、しなやかさに欠けた生硬な仕上がりで、無理矢理に良く言えば、コシがある、と言えなくもないのですが、明かに藤村和夫氏が「最近の弊風」と指摘する「ナマ煮え」です。
しかも、実際には山形などの郷土食としてのソバに比べれば「細い」のですが、硬直しているために、より「太く、無愛想」に感じてしまうんですねえ。
手打ちですから、太さに多少のバラつきがあり、その一番細いのに合わせて「上げ」ちゃってるのかもしれません。

近年、うどんでも蕎麦でも中華麺でも、やたら「コシ」を云々する傾向が見られますが、それに拘泥するあまり、蕎麦にあっては、本来の「ちゃんと茹でて、それを冷水でシメる」ことによって生まれる「コシ」ではなく、ちゃんと「茹でていない」ものを供する風潮が一部ではびこっているように思います。
また、そのような「不自然なコシ」にこだわっている店の多くが、「蕎麦」偏重で、ツユそのもの、あるいはツユとの調和に関して疎かにしている事例が見られます。

さて、山かけのほうは?ってえと、これまた対照的に蕎麦が「根性ナシ」で、いわゆる「バカ出汁(だし)」が利いてない、と言うか、旨味が少し薄いツユとあいまって、いささか焦点のボケた味となっています。
マズい!というのではないのですが、思わず「美味しい!」と声が出る、という域には達していないように思います。

ケッキョク、あのテッペンハゲが言ってた「蕎麦の香り」は、逆に「ひさお庵」の半分も感じられませんでしたねえ。
う〜む、あのオッサン、もしかするとこの店の関係者で、あちこちの店で、他の客に「聞こえるように」この店の方がウマい!と吹いてまわってるんじゃないでしょか?
そうすっと、中にゃあワタクシのよーに、どれどれ・・・ なんて、実際に来てみるバカも出てくるってワケで。ま、「もり」の大盛り八百円ってのはそんなベラボーな額じゃあないですから、テメエ、カネ返せ〜っ!なんてアバレたくなるほどじゃありませんが。

あそこ、もう行った?と尋かれて、え?知らない。っていうトコがイッコ減ったなあ、って程度の感慨はありますよ。
でも、ワタクシの究極の評価基準、「とめごろおさんを連れて行きたい、と思うか?」で行くと、青森まで蕎麦喰いにくんなら、トーゼン「会心」で、そこがモノ凄え混んでて入れそうもないなら、しゃーない、浦町の「与けい庵」行くか、ってんで、で、そこ休んでた!なんて時に、う〜ん、"O"ってのがあるけど・・・蕎麦ヤメて「すぱげ亭」で小海老とキノコの醤油バター喰おか?ってなるな、きっと。

おそらく近くに住んでるんなら、遠出もメンドクセーし、タマにゃあいっか?ってノリで行くぶんにゃあいいけど、わざわざ弘前から行ってまで喰うほどの蕎麦じゃあないな。ガッカリ・・・
あのテッペンハゲにダマされたね〜、蕎麦の香りなんてぜんぜんしないじゃん!とボヤいたら、「だって、あのオジサン、ひさお庵で蕎麦の香りがどう、って言ってたけど食べてたの天ざるだったよ!」と「ぷ」さん。
なに〜っ?こっちはヤツに背を向けてたからなに食べてたのか見てなかったもんなあ!
海老天を漬けちゃったツユで喰ってて蕎麦の香りがどうこう言えるワケないじゃん!
それ知ってたらわざわざ来てみるまでもなかったなあ・・・
permalink No.239

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