真似は・・・

2002-12-18
ドクター・ヤンヤのキーボード用のアンプ、ってことでちょっと国産各社のアンプをカタログでさらってたんですが、スグ自分のギター考えて脱線しちゃうんですよ。
キーボード用ってことになると、まず大事なのはフラットな周波数特性、で、それに伴ってノイズが少ないことが必要になります。そしてフォルテッシモからピアニッシモまでをリニアに再現するためのダイナミック・レンジの広さ、なんてとこになるんでしょうが、逆に考えるってえと、ギター用のアンプってのは、実にもう「ヤクザ」なシロモノですね。

大体「周波数帯域」がもうめっちゃ狭く、しかもヒトコブどころかフタコブラクダの背中みたいに「とんでもない」カーヴを描いてたりしてます。さらにトランジェント特性(つまり立ち上がりの「良さ」でんな)だって、なんじゃこりゃあ!てなクセがあったり、さらに最近多いソリッド・ステートなのに管球の歪みを造ります、とかってシミュレート回路を採用したアンプなんて、ピアニッシモがあるとこから「立ち消え」になっちゃったりします。

つまり、同じ「アンプ」ってえ名前ですが、オーディオ業界でいうそれとは「全然」ちゃうものなんですねえ。
本来のアンプリファイアは入力を忠実に出力に出してこなきゃいけないんですが、ギター用のアンプなんて、そりゃもう、オーディオ業界人が見たら気絶しちゃいそうなスペックでまかり通っているワケです。

オーディオ用のアンプにもトーン回路ってのはついてますよね?
ところがギター用のは、「効き」優先で、そこで位相歪みを出さないように、とかトーン回路内のライン・アンプでアタマを打たないように、なんてことをまるっきし気にしちゃいない、いや、それどころか積極的にそれも利用して「音」作っちゃおう、ってえダイタンなコンセプト(と言うと聞こえはいいですが、どっちかってえと、コスト管理のために「やむを得ず」採用した回路設計が「ケガの功名」で「いい味、出した」なんてのがホントのところじゃないか?ってニラんでますが)に基づいてますから、まったくの別物です。

ギター・アンプ界の「名器」たちは、ほとんどが「管球式」のアンプです。
唯一の例外としては、ローランドの「ジャズ・コーラス」シリーズでしょうか?(でも、このアンプ、デザインが悪いんですよ。もっとも、このアンプだけじゃなく、ローランドのギター・アンプって、どれもデザインはドンくさいんですがね)ソリッド・ステートのトランジェント特性の良さを活かし、アタックの再現性に優れ、特にストラトだとフェイズ・アウト・トーンなどの表現力は素晴らしいものがあります。
f 特もかなり「穏やか」なもので、逆に言えば、そこらあたりが「物足りない」と言われる所以なんでしょうが・・・
これまでに、特定のトーン・キャラクターを前面に押し立てて名声を獲得してきたアンプたちとしては、初期のブリティッシュ・ポップス・シーンに浸透していた VOX や、(特にツイン・リヴァーブの)Fender、皆様ご存知の MARSHALL や HIWATT に AMPEG なんて管球式アンプが有名です。

そこで最近、流行し始めているのが「シミュレーション回路」を搭載したマルチ・エフェクターやソリッド・ステートのアンプです。
デジタル技術をフルに活用して、「なんちゃってマーシャル」や「なんちゃってツイン」を皆様に、ってモノなんですが、考えてみりゃ、かえってチープですよね。だってキャビネットのサイズも違うし、背面開放と密閉、バスレフなんてエンクロージャーとしての方式だって違う以上、音の放射パターンだって違うんですから、スイッチひとつで「はい、マーシャル」なんて、そりゃ「甘い」ってもんです。普段ラジカセでしか音楽を聴かないヒトだったら、案外そんなショボいアンプでも、「あっ!ホントだ!マーシャルの音になった!」なんて喜んでくれるかもしれませんが、「あの」クラスのアンプを云々するなら、耳に来る音だけじゃなく、カラダに来る音圧も一体となった「音塊」としてとらえないと。

小手先の回路設計で、それらしくワザとナマらせた立ち上がりや周波数特性なんかをデッチ上げても、ネがトランジスタ(やモノによっちゃあ「FET」)の終段ですから、電圧でコーン紙をちょいちょいって動かしてるだけ。タマの電流でコーン紙をムンズ!と抑えこんで無理矢理(?)前後さす「馬力」にゃかなうハズもありません。
よく言われる例えですが、石のアンプは近くにいると耳にウルサイけど、客席の後方までは届かない。タマだとそばにいてもあまりよく聞こえないような気がするけど、会場内のスミズミまでガンガン届いてる。ま、それはキョクタン過ぎる例えですが、イチバンの違いはそこなんですよ。
そんなシミュレーション系のギミックが全盛のようですが、自家録なんかで、それらしい音にする程度ならともかく、少なくともライヴじゃあかえって情けない音になっちゃうコトが多いみたいですよ。

それだったらむしろ、素直な石のアンプで、その特性を活かしてクリーンな音を中心に、シミュレートじゃあなく、トーンやらオーヴァードライヴを活用した「音作り」で自分のトーンを築き上げるほーがいいような気がします。
なんだってそーだけど、「なんかのフリをする」のって、とってもミジメだからさあ。
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