もんじゅ

2003-01-28
核燃料サイクルの基本となる高速増殖原型炉の「もんじゅ」に対する「原子炉設置許可」の取り消しを求める行政訴訟に、高裁は原告側の主張に沿った「設置許可の無効」判決を出しました。まことに「正当な」判決です。
さて、新聞で報道された各界からの反応で、気になる部分を見つけました。
原子炉を推進する立場の近藤達男(材料工学)というヒトが
「判決はナトリウムと鉄の接触による鉄製床張り(床ライナー)の腐食の可能性の知見を欠いていたことなどを問題としている。80年に最初に申請された当時、そうした知見がなかったのは事実。後にナトリウム洩れ事故が起きてからわかったが、分析の結果、安全性への余裕は十分にあった。(中略)
新しい技術の発展のあり方を考えると、後になってわかってきた知見をもとに単純に違法とされるのはどんなもんか。(さらに続きますが以下略)」

この認識には重大な誤謬があります。
まず、ナトリウムも鉄も、1980 年当時に、既に存在していたマテリアルであるワケで、それが多様な条件下での接触により、腐食を生じせしめないかどうか?は「真に」安全性というものを考慮さえしていたら、長期の高負荷、さらに極限条件での耐久試験を行って確認し得ていたハズで、それを漫然と、通常の条件下での反応の範囲の延長として捉えてしまった点に、「安全性とは?」という根幹のところで、推進側に重大な過誤があった、という事を指摘しているのです。

つまり、あの時に気付いてさえいればこんなドジは踏まなかったんだから、気付かなかったコトを「どアホ」なんて言われちゃかなわん。って逃げてるわけでしょ。

でもね、モノは放射性物質に関連してるんですぜ。「考えてもみなかった」なんて言い訳はケッキョク「ありとあらゆる可能性に基づく検討がなされていなかった」ってだけじゃないの。そーゆうのを「言い逃れ」ってんだぜ。

科学技術によって、極めて危険な放射性物質も「安全」にコントロールすることが出来るという「信仰」はまったく根拠の「無い」ものです。
例えば、我々の科学は、地震をコントロール出来ていますか?
地震が起きてから、うわっ、こんなとこに活断層があったのか!なんて騒いだりしてる程度でしょ?
原発の立地については、やっぱり「当時の知見ではこの場所で地震の危険を予測することは出来なかった」なんて言い逃れちゃうのは目に見えてますが、基本は、「なにかあったらとんでもなくマズいことになる原発なんてモノを、地震を完全にコントロール出来る技術も無いクセに作っちまった」ってのが(違法とか言う前に)どアホでしょ。

ニューヨークでのテロみたく、航空機が「害意」を持って原発をヒットしに来たら?
それも稼動中の原発のコントロール部を狙って来たとしたら?
テポドンが命中したら?
特殊部隊なみの装備でテロリストが潜入して来たら?

非イスラム圏側の、「幾らテロリストといっても、こんなことするワケが無い」なんて常識が「もはや」通用しない、ということがあのテロで判ったハズでしょ?
これについても、「当時そのようなテロの可能性を想定することは出来なかった」で逃げ切るんでしょうか。
でも地震は昔っからあったんですからね。
おそらく、どんな直下型地震にも、放射性物質を「一滴たりとも」洩らさない、完全無欠な技術がテンコ盛りなんでしょうな。えっ?

ところで、冒頭の近藤達男氏ですが、それでも最後には
「一方、新技術自体の将来に疑問が生じたらただちに設計変更するなり、場合によっては廃炉にするぐらいの勇気も必要だ。」
と、「何がなんでも」推進ってワケじゃない、と柔軟そうなとこも見せてますが、新技術だけじゃなく、もはや「確立された」なんて思われてる原発自体だって、全廃すべきなんですよ。

これからも原発に地震はゼッタイに被害を与えないし、飛行機は突っ込まないし、宇宙からの隕石もゼッタイに当たらないし、テロリストも入れないし、操作ミスもゼッタイに起きないって保証出来る?

原発だけじゃなく、再処理施設は?
貯蔵プールは?

それ保証できるくらいの科学技術なんて「無い」んですよ、人類には。
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