タカサゴ

2003-02-17
そばの散歩道というサイトで、弘前市内の蕎麦屋の記事を発見しました。リッパな建物で、接待などにはハクがつきそうなタカサゴという店です。それによると、ご先代は「洋画家」を目指していたらしいのですね。そのせいか、芸術方面の交友がさかんだったとか。
現在の店主である三代目は神田「やぶ」で5年ほど修業をして来たらしいのですが、蕎麦はともかく、ツユの姿勢にその名残りが感じられるような気もしないではない⋯かな?
でも、その記事で一番オモシロかったのは、1989 年にお亡くなりになったご先代が、「そばを旨くしようなんてしないように。お客様はこの味で来てくれているのだから」と三代目に教えていた、というところでしょう。
「二流の味を 120%(?)」が現在のモットーのようです。
たしかに、このタカサゴ、ワタクシが親しい友人などに送る「My 蕎麦ランキング」では

A:蕎麦好きと「ワタシが認定する」人をゼヒ連れて行きたい店
B:近くまで行ってるなら、そこそこ喰える、って店
C:まる6時間ほど、なにも喰ってない時ならいいかも?って店
D:いかなるキジュンをもってしてもモンダイガ〜イの店

っちゅーパーソナル・ランキング・リストがあるのでございますが、A は黒石ひさお庵、青森の会心、そして現在は休業中の「たむら」などでしょうか(注;青森市・三本木にあった翁直系の「会心」は、現在廃業しておられます。いまなら代わりに弘前「一閑人」と「万作庵」、青森「無垢」、大湯「満月」が黒石「ひさお庵」と同様、このグループに入るでしょう。ただし個人的には「ひさお庵」が A++ !;2012 JAN.)
これでいくとココは B グループですね。
それも「一力」や「ますみや」を B++ と B+ とすると「 B-(マイナス)」クラスで。

実は、この店の場合、以前から店舗のたたずまいに比して、味が意外とルースだなあ、とは思っていたのですが、上述のサイトを見て、ま、大げさに言えば「謎が解け」ましたよ。
なるほど、「二流の味を120%」ねえ。
味を追求するのではなく、その他のサーヴィスやらフンイキなどで他店とは差別化して行こうという戦略でしょうか?たしかに、そのイミではこのタカサゴ、市内でも傑出したプレゼンスを持っています。
なかなか由緒ありそうに「見える」その店舗は、実は弘大医学部の付属病院を拡張するため立ち退きの移転補償金で建てた新築で、まだ三十年ほどしか経っていないのですが、まるで藩政時代からの屋敷を改造でもしたかのような店構えは、大事な「お客様」などを案内するのにはうってつけでしょう。

やはり、蕎麦に限らず、いちおう接待する以上は、(相手の「格(?)」にもよるでしょうが)相手に「お、これは下にもおかぬ扱い、ってヤツだな」と思わせなきゃマズいでしょ。
いくらウマいからって、某食堂なんかに案内したんじゃ「なにココ?そのヘンにあるタダの食堂じゃん?バカにしやがってえ!」てなコトになりますからねえ。
したがって、そんなふうに、「カタチにウルサイ」自意識過剰な(そのクセ、味の違いなんてほんとに判ってるワケじゃない)客を案内するなら、おのずと行く先は限定されてくる、と。

そのイミでココはまっこと接待向き、と申せましょう。
近くの指定駐車場にクルマをとめて、門から踏み石を辿って玄関へ、というセッティングからして「スゴそう」ですからね。
ガラガラっと開けて入った土間には低いテーブルが並び、庶民ども(?)が銘々蕎麦を楽しんでおる。それを横目で見て、ささ、こちらへ、と座敷への上がり框へ誘い、厨房から顔を見せた店のものに「三人」などと常連っぽく声など掛けて、奥の庭など見えるあたりにぐいぐい進み、上座をゆずってどっかと座り込む。
天ざるなど頼んでおけば、なかなかすぐには出てまいりませんから、ご商談なり密談なり談合なり(?)の時間も充分にございますぜ。
というワケで、この店、政治家や実業家もよく出入りしておられます。
また、もっとウェットな、「風情」で選ぶなら、弘前公園の西濠に面した「野の庵」(こちらは創作「津軽そば」と普通のもりそばとのセット・メニューになるようですが)も、「隠れ家」的たたずまいでよろしいかと。

ただし、ワタシの知人で蕎麦に限らず「味より雰囲気」なんてえタワゴトをぬかすのは皆無でございますので、とーぜんタカサゴはしばらくご無沙汰いたしておりますね。
時たま思い出したように、「もしかするとココロを入れ換えて、ウマくなってるかもしれない」なんて(年に一度くらいかな?)行ってみたりもしてましたが、上述のサイトにあった店側の「二流の味を120%」っちゅーモットーを知ってしまったからには、これからは安心して(?)チェックせずにいられる、ってものでございます。

永いこと行ってないお店が「最近ウマくなったよ!」なんてひとさまから教えられるのは避けたい、とゆうヘンなギム感から、「マズい」と判っている店でも時たまチェックに行く習慣があるんですよ。

でも、逆の「最近、味が落ちた」って風聞は、まったくアテになりません。
同業者にコビを売る客のリップ・サービスを「いいこと聞いた」とばかりに流布させる手合いが多いですからね。
考えてみりゃ、これほど悪質な営業妨害はありません。
それ聞いたら「行くのヤメようか?」となって、ホントに味が落ちたのかどうか確認出来なくなるでしょ?あるいは「どれどれ」、なんて行ってみる人も先入観があるもんだから、「そう言われれば、そうかもしれない」ってなっちゃうんですね。
もちろん、人間が作っているものですから、様々な要素により、さらに、その時々で仕入れなどの関係で味も変動します。それをすべて「最近、味が落ちた」と切り捨てる、ってのは感心しませんね。
そういう繁盛店を「苦々しく」思ってた他の店を喜ばせるだけですよ。
繁盛するにはワケがあるのにね。

あ、そうそう、「弘前でおススメの蕎麦屋さんは?」と尋ねてタカサゴと答えるようなかたはアテになりません。
もっとも、コイツにはココで充分(つまり、味よりも「建物の立派さ」とかを重視する「半可通」だ)とアナタを視ている、っちゅう可能性もありますが!
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