MICHAEL TIMMINS

2003-03-17
さて、ひき続きカウボーイ・ジャンキーズです。

ヴォーカルのマーゴ・ティミンズの兄で、ギタリストであり、ソングライターでもあるマイケル・ティミンズは、このアルバムでの方向を、どうやら「音を整理して、可能な限りカンケツに仕上げる」に絞ったようで、そのせいか、誰が聴いても、どの楽器がどんな音を出しているか、充分に聴きとれるような気がします。

五曲目は「Come calling ( his song ) 」。かってのマーク・ノップラーのダイアー・ストレイツを思わせるユルユルのリズムに乗せて、ややテンションを上げた Margo のヴォーカルが、距離感を漂わせてダウナー系の歌詞を繰り出してきます。シンプルに表現するとしたら、ちょうど、ジャニス・ジョプリンと正反対のベクトルを持ってますね(だから好きなんだな?)。
どならず、りきまず、クレバー、クール。この曲は別ヴァージョンで後ほど、もう一度、登場します。

続く六曲目は「Just want to see」ですが、またストリングスも加わったややドラマティックな作りになっています。
ああ、この感じ、どこかで聴いたことがあるような・・・ああ、Mylene Farmer(ミレーユ・ファルメール)の「Nous souvendrons nous」だ!いや、あっちはもっと超スローだったなあ・・・ま、でも曲のたたずまいみたいなもんが似通ってるよな気も。
そっか、このヴォーカルの「温度」が似てるんだな?
ギターのソロ(?)は、むしろ、ジェファーソン・エアプレーンの「Today」に似てるかも。

七曲目には「Lonely sinking feeling」。伸びやかなヴォーカルで珍しくメロディアスなナンバー。ここでの Margo Timmins はカントリー歌手的な歌い方を時たま見せています。内容的にはやや重めの歌詞のためか、タイトルどおり、沈み( Sink )込んでゆく感覚。

八曲目は「Angel mine」。アコギのストロークから始まる、どことなくナッシュヴィル系の香りが漂うナンバー。珍しくマイナーの和音がはっきり聴きとれる。この曲では John Keaneのペダル・スティールがさらにいっそうカントリー・フレヴァーを付け加えています。

九曲目の「Bea’s song(River Song Trilogy:part II)」では、極限までシンプルなギターに乗せて、音的には、ちょっとクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルみたいな世界が。とは言っても、やはり Margoの、むしろココロの内側に向かうかのような視線は、例え、いま、目は地平線から昇り来る火星を恋人ごしに眺めていたとしても、「世界は内面の投影である」かのような逆転した因果律を思わせます。

十曲目は「Musical key」。これもアコギのストロークから。
マイナーの曲調はある意味、ポルトガルのファドのような陰影をまとい、父と母の憶い出を静かに語ってゆく。
ファドと限定するとまた、狭くなり過ぎてしまうのだけれど、もっと広汎なヨーロッパ的「哀愁(?)」があるように思います。
とは言っても、クランベリーズの世界あたりとはまた対象的な存在ではあるのですが。クランベリーズには濃厚に感じられる独特な「フェミニズム」、そのヘンがまるっきり感じられないのです。また、これ以外の曲は全て Michael Timminsの手になるものですが、この「Musical key」だけは、妹の Margo Timminsとの共作となっています。

十一曲目「Speaking confidentially」ではリズムがソリッドに刻まれる上に、Margoのヴォーカルが語るように歌い、いささかドラマティックですらあるストリングスが秘められた内面の世界を飾り上げています。Michael Timminsのギターのフィード・バックを挟んで、そのまま「Come calling(her song)」に移行。五曲目の「Come calling(his song)」の超スロー・ヴァージョンとも言えるこれは、より暗示的に、より内省的に、より静諡に、求心的に螺旋状に落ちてゆくようなアーティステックな曲になっています。ここでの Michael Timminsのギターも、他の曲と同様に、「ギター・フリーク」が聴いても、そんなスゴいコトはしてないように思えます。でも、同じようなギターを弾くことが出来るか?と言われれば、これはかなり難しそうです。サル真似でいいなら、コピー小僧が、その通りはなぞれるかもしれないけどね。
どうも、このCOWBOY JUNKIESは、その細部までを細大洩らさず聴き込んだほうが面白いと思うので、ヘッドフォン・ステレオで聴くのがおススメ。なんちて、それは実は方便で、ホントはヘッドフォンで「脳」そのものに染み入ってくるような「音場」が、この音楽には向いていると思うんですよ。ま、ムリにおススメはしませんが。ってその前に COWBOY JUNKIESそのものもムリにおススメは出来ないかも。ちょっとコアすぎって感じ?(あ、半疑問形!)

ラストは「Now I know」。フォークのようなスタイルを持っているのですが、歌われている世界は極めてパーソナルな、心の闇に踏み込んだような、それでいて不思議な軽さを併せ持った曲になっています。

ライナーによると、Michael Timminsは「どんなフレーズを弾くか?」よりも、「いかに弾くか(あるいは弾かないか)?」、そして一音に、魂を込める、という意味でブルース・プレイヤーを尊敬しているのだそうです。
ううむ、ワタシゃあ、そんなリッパなプレイヤーにはほど遠いようじゃのう。
ま、それはともかく、この COWBOY JUNKIES、誰にでも薦められるってもんじゃないなあ。

一応、ロックってえコトになるんでしょうが、たとえばリッチー・ブラックモアなんかをロック、と思ってるヒトにゃあゼッタイ受け入れられそもないでしょ。
ブラック・ミュージック好きにもウケなさそだし、かといってフォーク系のヒトにもダメそう。カントリー好きには「暗い」なんて言われそうだし、パンク系にゃあ「おとなしすぎ」って言われ、ポップス派にゃあ「とっつきにくい」かな?

こーしてみると、500円でワゴン・セールにかけられちゃうのもムリ無いか?めちゃめちゃコアな世界だもんね。
それを二日連続で採り上げんだから我ながらいー度胸してんなあ。
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