隠語の森

2003-05-12
この世には、ホントにいろいろな趣味ってのがあって、それについて語る言葉ってのも、その世界を知らない人間にとっては「さっぱ判らん」てなもんでしょね。

例えば「エアリー・ディスク」、「相反則不規」、「タブレット粒子」、「アクチベーター」、「減力剤」・・・と並べたら、一体なんの話しなのか、フツーのひとには判りませんよね。ま、それに「コマ収差」なんて用語が加わると、ん?ひょっとして、なにかレンズ関係?と気付くひともいるかもしれませんが(ムリかな?)、これが「写真」に関わるものだ、と判るのは、よくある、「カメラ」のマニア程度じゃあムリで、本気で「写真」を突っ込んでやってプロでもなきゃ、知ることも無い「概念」でしょう。
同じように、趣味としての「釣り」にしたところで、ヘラ鮒とソルト・ウォーターのルアーじゃあ、もうあまりに違い過ぎて、共通語がほとんどないのねん。(ワタシはシー・バス狙いのルアー)
また、ワタシの趣味の中じゃあ、一番カネかかってる(?)と思われる「自転車」の世界だって、ママチャリとはあんまり接点がありません。「クリップレス・ペダル」、「ディレーラー」、「バデッド・スポーク」、「スモール・フランジ」、「セルフ・センタリング」、「チタン B.B.」・・・こんなの、タダの自転車にはカンケーないことばっかりですからねえ。

と、急にこんなこと書き出したのは、あるひとのネット上の日記を見てたら、ワタシの知らない趣味の世界について語っている一文に行き当たり、そのワケ判らなさに思わずカンドーしてしまったからなのです。
どんな趣味の、あるいは職業の世界にも、そのような独特の言語体系があり、それらが伝達し合っている(であろうところの)内容に対し、ある種の羨望を覚えてしまいます。そこには部外者にとっての「暗号」でしかない「用語」のヒミツが潜んでおり、逆にそれによって相手が自分と同等か、あるいはそれ以上のレヴェルまで行っているのか?までが判ってしまうワケなのねん。

特に技術屋同士の話しでは、それがとても重要なのです。
もうだいぶ前のことになりますが、弘前市内の某多目的ホールの設計に関わった際、付帯するギャラリーの天井構造について、設計者とクライアント側の話し合いが持たれたのですが(とうぜんワタシはクライアント側のアドヴァイザーとして同席していました)、こちらのギャラリー監修者に建築関係の知識が殆ど無く、設計側も話しの持って行き方に困っておりました。
そこで、「グレーティング」が使えませんかねえ?と切り出してみたところ、設計者も「ああ、やっとハナシが判ってくれそうなヒトがいた!」と、ホントに「ホっ」とした表情をしていたのが印象的でしたよ。
その一事以来、クライアントと設計者の橋渡しとして、クライアントの「実に抽象的な」要求を、いったん図面化してこっちサイドで検討してから設計者に伝えるようになり、お互いのストレスがだいぶ減ったものです。

その以前から、リスニング・ルームの設計や施工についての「無線と実験(ああ、懐かしい!ずいぶんベンキョーさしていただきましたねえ、この雑誌には)」の特集号を買って来てベンキョーしたりしておったので、建築カンケーの知識がケッコー蓄積しておったのが良かったのですね。また、一時期、インテリア・デザインも手がけていた(いろんなコトやってますねえ、我ながら・・・)もんで、フィニッシュ系にも関与することが出来ました。
もっとも、さすがにその後はグラフィック系に集中していたため、最近の施工関係の知識にはたぶんズレているものと思われますが。
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