Chiken Stuff / Hop Wilson

03-07-06
なんだかユルユルのインストが始まり、唐突なブレイクにシャウトってほどでもないひと声が「 Chiken Stuff! 」・・・何事も無かったように再開されるインスト・ナンバーはダラダラと進み、ときおり「コケ〜コッコ、クワ〜!」てな鶏の声(もちヒューストン版江戸屋猫八、いやさヒューストン屋トリ八?)をバックにしつつも、いけしゃーしゃーとタルいテンションのテキサス・シャッフルが流れてゆく・・・ Hop Wilson ってのは、スティール・ギターでブルースを演奏してるんですが、おそらく最初に吹き込んだのがこの曲のハズ。
他にもラップ・スティールの名手(迷手ってえ説もある?)としちゃあ Freddie Roulette ってえ国宝級のがいるんですが、このホップ・ウィルソンもなかなか聴かせてくれます。最後のころにゃあかなりブっとんだ演奏で楽しませてくれましたが、これはホントの初期の作品です。

やはりスティール・ギターって言うとみなさま、真っ先に思い出すのは「ハワイアン」でございましょ?
あの、美しい和音がきれーに上がって来る独特の感覚。そうよねー、スティール・ギターってのは、こーでなくっちゃ。うぷぷ。
しっか〜し!ホップ・ウィルソンのこの音はなんざましょ?まー汚い、っちゅーかお下品っちゅうか。と、そゆ方々がマユを顰めちゃいそなハンパにクランチがかった音。さっすがブルースですねー。ダウンホームですねー。「聖なるものと俗なるもの、その二者択一の二元論ではなく、聖であり、同時に俗でもある、つまりその両方を併せ持つのが人間で、それがブルースである。」と言っちゃいますが、さよう、その音にしたところで、「汚くする必要があって」そーなったんではない、ナチュラルに歪んでるんですよ。だって人間ってみんな歪んでるっしょ?・・・とミョーにセーシンロンみたくなっちゃうとヤなんで、このくらいにして、と。

『もし今、Houston の Dowling Street を流してみれば、かってのブルース・ラウンジが、あるものは都市再開発のために、あるいはただ単に経営不振でたたまれたりして、どれも姿を消してしまっているのに気付くでしょう。
Lightnin' Hopkins や、Juke Boy Bonner( Weldon H. Phillip Bonner. 22 MAR. 1932-29 JUN. 1978 ) 、Hop Wilson たちが出演していた、20年ほど前の黄金の日々の Shady's Playhouse は、もはや記憶の中にしかない。・・・』
このような書き出しで始まる Hop Wilson & His Buddies STEEL GUITAR FLASH! のライナー( by Ray Topping 1988 )。
それによれば、ホップ・ウィルソンはヒューストンから100マイルほど北上した、Texas 州 Grapeland で、1927年( ktateさんのブルース人名辞典では、1921年となっています。このヘンを問い合わせてみたところ、『シェルドン・ハリスの"Blues Who’s Who"、レコード・インフォーメーション・サービスの"Blues Record 1943−70"とも、1921年4月27日としています』とのことで、ここでは一応、Ray Topping の「説」をとっておきますが、1921年という線も考慮しておいてください) 4月27日に生まれています。本名は Harding Wilson。両親を入れて15人の大家族はほど近い Crockett に引越し、この頃にはハープを吹いていたようで、それがナマってハープ→ホップとなったとか。
当時のテキサス東部は豊かなブルースの遺産にめぐまれており、そんな中で Blind Lemon や、白人音楽のヒルビリーやウェスタン・スウィングに触れ、次第にスティール・ギターによるブルースへとシフトしていったようで、彼が最初にスティール・ギターを兄から譲ってもらったのは12才の時でした。
1946年に軍役から Crockett に帰って来て、’50年代に入るとすでにミュージシャンとして生計を立てていたそうですが、1949年にルイジアナ州からヒューストンに移ってきていたドラマーでシンガーでもある King Ivory Lee(1931年9月13日、Louisiana 州 Washington 生まれ。本名 Ivory Lee Semien )のバンドに参加しています。
この頃(正確には1958年に入ってすぐ)、ホップ・ウィルソンとキング・アイヴォリー・リーは、MERCURY や CHESS ともルートを持ち、熱心に「素材」のサーチをしていたヒューストンのスティーヴ・ポンシオ( Steve Poncio、Lester Williams の最初の吹き込みでローカルヒットとなった Winter Time Blues を、勤務していた Houston のレーベル MACY'S でプロデュースし、のちに Lester Williams の Specialty での 1952年のヒット I Can't Loose with the Stuff I Use にも関わったとされる)の薦めで、GOLDBAND Records に送り込まれました。
この時に録られたのが、今日の一曲、インストの Chiken Stuff (GOLDBAND 1071)で、ACE CDCHD 240 に収録されてます(別テイクも入ってるよん!)。

'70年代の初頭まではあまりすぐれない健康をおして数々のギグもこなしていましたが、1975年8月27日、入院先のヒューストンの復員軍人援護局病院で死亡しました。彼は、その故郷、Grapeland の、ステーツ・ハイウェイ 227 を東の Refuge に向かう途中の Mt. Zion 墓地に眠っています。
ま、それにしても、スティール・ギターでブルースっての、スライドからさらに特化してるワケでしょ?ダディ正井から「やってみんしゃい」って Guyatoneの6弦スティール・ギター渡されてんですが、いまだモノになっておりませぬ。メンボク無い!




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