Evil Hearted Woman Blues

Oscar Woods


03-08-03
1938年 8月13日の土曜の夜、Robert Johnson は Mississippi 州 Greenwood 郊外のジューク・ジョイントで演奏をしたあと倒れ、その三日後に死亡した(毒殺されたらしい、ってハナシがどうやらイチバン「人気がある」ようでございますが・・・ )、てなとこを考慮すると、1942 年にリリースされたこのナイフ・スライドの Oscar Woods の Evil Hearted Woman Blues を聴いたハズはない!とゆーコトになっちゃいますが、でも、この録音は1936年の3月21日に行われているワケですから、その「録音」そのものは聴いたコトなくても、その前後には既にウッズがこのフォームを完成させてて、どっかで「それ」を聴いたコトがあったのかもしれないんですよね。
なんてコトを考えたのも、P-VINE から出てる Robert Johnson Classics っちゅ〜 V/A にこの曲が収録されとるからでして、ま、よーするに、Robert Johnson の世界を構築するモトとなったもの、みたいなテーマで集めたアルバムらしいんですよ。そこら解説書いてる日暮さんも、この曲に関してはちと歯切れが悪くて、「敢えて探すとすれば・・・」っちゅう表現になってますねえ。

ワタシが持ってるCountry Blues Bottleneck Guitar Classics 1926-1937 YAZOO L-1026 にもその Evil Hearted Woman Blues が入っています。
さらに、Oscar Woods が Ed Schaffer のバックでスライドを弾いてる Shreveport Home Wreckers の Fence Breakin’ Blues( 1930 ) も収録されてます。
ところで、Home Wreckers って一瞬、「レッカー車」からの連想で、黒石市内でタマに見かけるカンバンの「家引業」ってナゾの職業、ま、たぶん家屋を解体せずに何mか移動させまっせ!っちゅうシゴトやないか?と思うんですが、それのシュリヴポート版?なんて思いそになりました。
でも Wrecker ちゅうのは解体業者なのねん。
で、さらに House じゃなく Home やから、ここは「家屋解体業者」じゃなく「家庭」を解体するワケでしょ?なんだかロクでもない集団?かも・・・

ま、それはさておき、Bob Brozman はその著書、The History and Artistry of National Resonator Instruments の中で
Oscar Woods は’20年代の初頭に、米本土を巡業していたハワイアン・ショーを観た後でラップ・スタイル(ヒザの上に寝かせる弾き方)に変わった

と書いているそうで(未確認)、どうやら、ハワイアン・スタイルのスライドがブルースにもたらした影響というものも無視することは出来ないようですね。
メロウで流れるようにスムースなハワイアン・スティール・ギターは’20年代あるいは’30年代にはもうすでにアメリカではメジャーな存在であって、Bob Brozman によればブルースばかりかジャズにも影響を与えている、とされています。当然、Oscar Buddy Woods もその影響下にあり、それはそのまま Black Ace にも受け継がれていることでしょう。
このふたりは共にスパニッシュ・チューニング*のオープン G、あるいはオープン D での演奏をメインにしていましたが、テクでは Woods が上だったようです。なお Oscar Woodsのギターは「Tri-Plate」というモデルらしいんですが、同社のサイトでも発見できませんでした。どうやら現行モデルではないようで詳細は不明です。(もっとも、それがメーカーによる正式なモデル名ではなく「通称」だったとすれば、中央にブリッジを持つリゾネーター・パンの他にボディのネック側で、そのネックを挟んで対称形に配置された小型の金属円板の二枚も含め「金属プレートが三枚ある」という意味での「俗称」であったのかもしれません)

*スパニッシュ・チューニング・・・ E-A-E-A-C#-E( 6弦→1弦 )のオープン A、あるいはこの関係のまま全弦を1音下げるオープン G を指す。一方の Vestapol チューニングは、オープン D(D-A-D-F#-A-D)や、それを一音上げたオープン E(E-B-E-G#-B-E)がある。ただし、この Spanish と Vestapol の二つは「ベーシックな」オープン・チューニングに過ぎず、実際には、さらに多くのオープン・チューニングが存在します。
ハワイアン・スティールの 8弦ギターあたりになると、全弦を同時に鳴らすことを「前提としない」チューニングがあり、3〜4本をセットとしてマイナー系和音や maj.7th まで出せるチューニングも存在します。また、同様にレギュラー・チューニングではないものの、オープンで弾くと和音にならない「変則チューニング」も存在します。
例えば、1弦あるいは 6弦の E を1音下げて D にする、「セミ・オープン G 」と「ドロップ D 」、有名なアルバート・コリンズの「Em( E-B-E-G-B-E こちらは和音になるのでオープン・チューニングと言っても良いのですが、スライドではないので、全弦を同じフレットで弾くことはなさそ)チューニング」などもありますが、そちらは「スライド」を前提とはしていないので、ここではちょっとカンケー無いっすね。


さて、この曲のキーが G だとすると(なんたってアナログ・ディスクなもんで、ピッチがちとアヤしいのです。タブン G )、コード進行は G-G( C )-G-G-C-D#-G-G-D-D#-G-D となりますが、2小節目は最初上がるけど、後半では上がらなかったり、あまりシビアじゃないのかもしれまへん。また、6小節目の D# は、5フレットでサブ・ドミナントのバーを、8フレットまでスライド・アップさせるものですが、あまりコード・チェンジ感を出したくないスムースな変化が欲しいバヤイなど(?)、別な手として、通常どおり 5フレットにスライド・バーを当てた状態で、2弦の 4フレット、つまりバーよりもヘッド寄りを押さえるとその弦だけフレット側に押し下げられることにより、中空(?)にあって弦と接触しているバーから引き離され(オーヴァーな表現やねえ)E から D# になり、C(ド)、D#(レ#)、G(ソ)っちゅう Cm が指一本で瞬時に完成するワケですわな。コイツで「代用」することも可能でございます。あ、弦高ピタピタの低めじゃああましジョーズに出来ませんよん。

正確な誕生日は判りませんが、Oscar Woods は Louisiana 州 Shreveport で生まれています。で、資料不足のため途中をガバっ!とはしょって、(はしょり過ぎ?)しゃーないので(ソロでの)レコーディング・データでお茶を濁すとしましょ。
1936年3月21日 Lone Wolf 名で吹き込み( New Orleans )
Evil hearted woman blues 60847;Document DLP 517, MCA MCA-3528, Yazoo L-1026
Lone wolf blues 60848-A;Document DLP 517, MCA MCA-3528, Paltram PL-102 など
Don’t sell it - don’t give it away 60849;Document DLP 517, MCA MCA-3528, Yazoo L-1032
1937年10月30日には Muscat Hill blues と Don’t sell it ( Don’t give it away ) を(ともに Document DLP 517 に収録)
1938年12月4日は Jam session blues、Low life blues、Token blues、Come on over to my house baby の 4曲。こちらも Document DLP 517 に収録。
1940年10月8日、Boll weevil blues、Don’t sell it、Sometimes I get a-thinkin’(別テイクも)、Look here baby, one thing I got to say を、Alan Lomax のために the Library Of Congress に吹き込み。こちらは Flyright SDM 260 で聴くことが出来ます。

他に、Document 5143 の Texas Slide Guitars Complete Recorded Works In Chronological Order 1930-1938 には、ソロでのレコーディング以前の Shreveport Home Wreckers での 2曲や、その後、Jimmie Davis( You Are My Sunshine で有名。後にルイジアナ州知事になった)をヴォーカルとして吹き込んだ 6曲、また Kitty Gray & Her Wampus Cats としての 1曲も収録されています(他にブラック・エイスが 6曲)。ま、誰がテキサスやねん!という感じなんですが。
1956年に Louisiana 州 Shreveport で死去。

参考サイト;
http://www.246.ne.jp/~bayou/sonny_behind.htm いちむらまさきさん解説の Sonny Landreth のページ。スパニッシュ・チューニングでの Dmaj9 など。
http://www.theiceberg.com/artist/26053/oscar_woods/ Oscar Woods artist biography



せっかくの日曜日でしたが、いちんちじゅう湿度の高い、「どよよん」な天気でした。雨も細かいのが地味〜に降り続け、ホントにムシムシするウェットかつダルな街並みは、それでも祭とあって人出はありましたね。ただ、こんな天気じゃ、遠くから来てる観光客はともかく、かえって近郊の農家のひととかが出てこないよな気がします。
この夏は、ってゆーより、まだ夏が来とらんぞ〜っ!なんてえ地域も一部にありそうなくらい、低温が続き、秋の収穫が懸念されるジョータイに近付きつつあるのですが、なんだかこのネブタ祭が、それを象徴してるよな気がして。初日だけは晴れましたが、その後、二日連続で小雨。五月ころ、気温が上がって夏のようになったりもしたけれど、その後は天候不順に閉じ込められて来たこの夏が、この三日間に凝縮されてるみたい。
じゃあ明日からの後半が、この秋を予言するものになるのかしらね?
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