Crossroads Hound Dog Taylor 03-08-04 | ブルース・イグロアをして、このブルースマンのアルバムを出すためなら新たにレコード会社を作りたい、とまで思わしめた男 Theodore Roosevelt ( "Hound Dog" ) Taylor。 でも、どーゆーワケかロックからブルースを眺めてる層には人気ありません。 なんでなんざんしょ。 ロック・ギタリストのみなさまからすると、スライドってえとオールマンで、ハウンド・ドッグのあのキッチャない和音のスライド・アップやら、我がいとしの Ted Harvey のミョーな(ミョーに、じゃなくね)手数が多いズンドコ・ドラムなんかが「美学」に反するんでしょかねえ・・・ ホントに Hound Dog Taylor and the HouseRockers の音楽ときたら、良くも悪くもめちゃめちゃユニークですからねえ。 好き嫌いもハゲしく別れるようでして。ワタクシは言うまでもなく「大」を二つ三つ付けたいくらいの「大好き」でございます。 なにしろ勝手に「スライドのお師匠さん」とキメつけてるくらいですから。 昨日の Oscar Woods はオープンGの Spanish Tuning でしたが、こちらは Vestapol Tuning のオープン E でございます。 ウッズはんは膝の上に寝かしてナイフ・スライドで弾いとりましたが、一方こちらはフツーの姿勢で、真鍮製のスライド・バーを指に嵌めて弾いてます。 でもいっちゃんの違いは、ハウンド・ドッグのはエレキ、それも極悪非道な(?)ゲッチョゲチョに歪んだサウンドだ、っつーとこかもしれませんね。 ワタクシもかって、伝説の「ぶぎうぎぶ」の「死ぬほど焼肉を喰うぞキャンプ」にテレキャス&超小型 Fender Twin(あの、006P 1本で鳴らすちびアンプ)を持ってった時に、試しにディストーションメいっぱい上げたら「うわっ!ハウンド・ドッグの音じゃん!」、ってんで、デルタ・スライドの金田クンと張り合ってスライド大会をやって以来「開眼(?)」しスライドが楽しく「なっちゃった」のでございます。 ハウンド・ドッグの 1st アルバムでは、シアーズ・ローバック/シルヴァートーン・アンプ( ALTECの10"を6発)を使ってたようです。 後には Bruce Iglauer によって Fender Super Reverbが提供されたみたいだけど、それにつなぐだけで「あの音」が出たんだって! こないだのキャリー・ベルがマーシャルでも JC でも自分の音を出してた、っての思い出しちゃいますね。さすが! でも、どうしてだか、あの歪んだ音でのスライド(それもメロ主体じゃなく和音チックなの)ってのは、ロック系ギタリストには人気ないのよねん。ま、いいんだけど。 時あたかも「ぶるうすまにあの巣」のMACさんが「一日一枚」でクリームの『BBCライヴ』を採り上げ、「お気に」の第4位に Crossroad を入れておられました。ほな、ワタクシも「呼応」してイッパツ Crossroad 選んでみよかな?ってえ時に、対照的なの、っつーことで目にとまったのが、これ。 ちょーど Oscar Woods でオープン G やったばっかしだし、Vestapol tuning のオープンEに言及するってのもオツかも?とゆうワケでございます。 この「クロスロード」は、ま、ロック系のギタリストには、そーとーウケが悪いんじゃないでしょか?でも、Elmore のもそーだけど、このスタイルの重心の低い、まるで骨盤がナナメ前・下方にグライドするよな(あのアメリカのジューク・ジョイントなんかの映像で、現地のオッチャンが踊ってるミョーなノリね)独特なリズムと、例のスライド!う〜ん、黒い!しかもエルモアよりさらに荒削りな、このハウンド・ドッグの「クロスロード」こそ、晴れ上がって急に暑くなった今日の夏日にふさわしい(って、なんちゅう理由じゃ!)のでございます。 その Hound Dog Taylor のギターは、ギター・マガジンによると日本製の KAWAI S-180 と SH-40V(弦高はかなり高そう!それぞれファースト・アルバムとセカンドのジャケ写から)らしく、それに1972年の Ann Arbor Blues & Jazz Festival では、これまた日本製の Teisco SPECTRUM 5 らしいのですが、異説( SevenSeas とかゆうプラックがヘッドにあった、と言う。KAWAI の OEM 先かも?)もあります。ともかく、かなりの数のステージをクラブなどでこなしてますから、時によってはどっかからチョータツしてきたギターなんてコトもあったりして?(一応 Fender も一本持ってたみたいなんですが、そのモデル名は不明です) ここで有力な情報をゲット!1972年あたりから、彼のギターの巻き弦はぬわぁ〜んと「フラット・ワウンド」だったんだって!(イグロアの証言)判る?フラット・ワウンド?つまり、ワタシのベース弦みたく、表面がツルっとしてて「滑り」がものスゴくいいワケ!そのぶん高いんですが、キモチ判るなあ。 で、そいつをオープン E にチューニングしちゃうワケですが、良いコのみなさまは昨日のウッズはんとこで書いたから判ってますよね? E-B-E-G#-B-E とゆーチューニングとなり、スパニッシュとの一番の違いは両端(つまり 6弦と1弦ね)がコードの「主音」である!っちゅーコト。これ、とっても大きいんですよん。特に1弦は効きます。殆どのバヤイはスライド・バーで複数の弦を押さえてプレイするんですが、時々混ぜたいシングル・ノートのスライド、ゼッタイ1弦でやるほーが気楽なんざます。そのぶんラフに出来ますから「多少」お呑みになっておられましても弾き損じ「にくい」のではないかと・・・ さてその Theodore Roosevelt ( "Hound Dog" ) Taylor ですが、1915年(本人の言。一説では 1917年) 4月12日、Mississippi 州の Natchez で生まれています。20才になるまで、ギターを弾いたことはなかったそうなんで、かなり晩くから始めたことになりますね。 主にデルタ周辺のジューク・ジョイントやハウス・パーティで演奏をしていた(本人へのインタビューによれば、Rice Miller に Lockwood、そしてワタクシが Ted Harvey の次に好きなドラマー、Peck Curtis 大先生と一緒にキング・ビスケットのシゴトもしてたそうです)ようですが、なにやら女性をめぐるトラブルに巻き込まれ、姉のいた Chicago に逃げ込んだみたい。 Chicago ではサウスサイドあたりのクラブやラウンジに出まくってたよーですが、レコーディングはマイナーなレーベルに2曲だけ、とあまりラッキーではなかったようです。そんな Hound Dog の運命はトツゼン大きく変わることになるんですが、その中心となったのが、有名な Bruce Iglauer です。 1969年、まだ大学生だった Bruce Iglauer は、シカゴのライヴで、ひとり飛び入りでプレイした Hound Dog を見ているのですが、その時は「たいしたミュージシャンじゃあない」という印象だったそうです。それが1970年の2月に Florence's Lounge で HouseRockers としてのステージを観て、そのパワフルでダンサブル、とことん楽しませるサービス精神( 2・3時間は平気で弾き続け、タマのトイレ休憩をはさんでケッキョク 5時間なんてこともあったそうで)などに「原石の輝き」を見出したんでしょうね。まさにシカゴのサウス・サイド以外では殆ど知られていなかった彼らのサウンドを紹介するために自らのレーベル ALLIGATOR を創設し、1971年から、計4枚のアルバムをリリースしています。 残り二人のメンバーですが、ローズ指板の Fender Telecaster を弾く Brewer Phillips は1959年に「就任」(ただし、昼のシゴトが多忙なときには代理として Lefthand Arthur Grey、Lefthand Frank、Lefty Dizz など、なんでか左利きのギタリストばっかが入ったそうです)。 舞台裏のでっかい段ボール箱の中で寝てしまい、第2ステージまで発見されなかった、なんてエピソードがあるドラムの Ted Harvey は1965年に「正式な」メンバーとなり、1975年に、ささいな冗談がもとで Brewer Phillips が Hound Dog Taylor に「撃たれる」まで続きました。9月から入院はしたものの、すでに癌が悪化して、死の床にあった Hound Dog Taylor を Brewer Phillips が見舞いに訪れ、和解したその二日後、Theodore Roosevelt Taylor は死亡しています。1975年12月17日、59才でした。「俺が死んだら葬式はすんな。パーティにしてくれ!」が口癖だったとか。 彼の愛用していた「あの」ギター二本は、奥さんの Freda によって Bruce Iglauer に贈られたそうです。1984年、ブルースの栄光の殿堂入り。 Crossroad が収録されているのは GENUINE HOUSEROCKER MUSIC P-VINE PCD-23054 です。このアルバムに同じく収録されている Kansas City では Brewer Phillips のヴォーカルが聴けますよ。 他に Hound Dog Taylor and the HouseRockers P-VINE PCD-23040 や、Natural Boogie P-VINE PCD-23041、Beware of the Dog P-VINE PCD-23053 なども聴いてみてねん。 さて、「トツゼンの夏」、でございます。いきなり気温がドド〜ン!と上がりました。やっぱ夏はこうでなくっちゃあ!クソ暑いけどさあ。で、おかげさまでネブタ祭も盛り上がっております。ちょっと前に見てきたんですが、とても4日目とは思えないギッシリの人出でございました。そしてちょうど目の前に来たのが、市内では茂森新町のネブタとともにワタクシのお気に入り、下新町のネブタでございます。 |
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No.470