Make Me A Pallet On The Floor

Willie Brown


03-08-05
さて、Hound Dog Taylor から一転、またまた戦前ものです。
1941年8月 Mississippi 州 Lake Cormorant 録音のカントリー・スタイルのブルース。
でもチューニングは Hound Dog と同じ Vestapol のオープン D(つまり1、2、6弦を一音下げ、3弦を半音下げ、ってえチューニングです)なのねん。

そしてこの曲もコード進行に特徴がありまして、キーは D なんですが、G-D-G-D-F#-G-D/A-D という構成になってます。
ミソは F# に上がるとこで、これのおかげで、曲調がとっても「明るい」感じになるんですねえ。
んっ?この響き、どっかで聴いたコトあるぞう?
そ、ご存知の方もおられるでしょが、San Francisco Bay Blues も「それ」でございます。
あ、でも、この 3度のコードさえ入りゃあ「明るい」響きになるのか?ってえと、決してそんなワケではないようでして、例えば、これまたみなさま良くご存知、あの Georgia On My Mind や Ain’t Nobody’s Buisiness でも、トニックから 3 度のコードに上がるんですが、その場合は独特の陰影を感じさせますよね?どうも、あのテのシト〜っとしたペースで、モーダルなメロを採ってゆく曲だと、コードの効果も違ってくるのかもしれません。

曲のタイトルにある Pallet ってのは「お絵描き」のあのパレットじゃあなく、(ソマツな)寝床っちゅうイミで、オレをオマエの寝ゴザ(敷き布団)にしてくれよ、っちゅう歌ざます。まあ、なんざましょ、お下劣ですわねえ。
そんなナンバーを「いい」テンポでサラっと歌ってゆきます。

Make me down, pallet on your floor.
I want you make me down, pallet on your floor.

1900年8月6日生まれ、なんてゆう記述も存在しますが、でも、それだと、1911年に Charlie Patton と出会った時には、20才くらいに「見えた」ってゆうのと「明らかに」矛盾いたしますねえ。それ考えると、ktateさんの「ブルース人名辞典」にある「1890年ミシシッピー州クラークスデイル生まれで、57年同州テュニカで死去」ってのが符合しそうですよ。
だって、ホントに1900年生まれなら、1911年じゃまだ11才ですからねえ。いくらなんでも、11才と20才を区別できんアホはおらんでしょ。
また、彼の写真は1枚も残されてないみたいです。いつ死んだのかも判らない(ktateさんの人名辞典では明記されてますが、他に、1952年12月30日、Mississippi 州 Tunica で死亡、としている年表も存在します)なんて解説も多いんですが、マチガイなく1941年以降であるコトは確かでしょ。だって、この曲の録音データが c. 24-31,August 1941( Alan Lomax の Library of Congress のために)となってるんですから。
「travel.nostalgiaville.com」によれば、1930年代から1940年代にかけて、Kirby Plantation を本拠地としてたみたい。ついでに彼が埋葬されてるのは、Mississippi 州 Prichard の Good Shepherd Church cemetery だそうで、そこまで判ってて生没年が判らないなんて・・・

1929年には Mississippi 州 Robinsonville に移り、「そこで」Son House と Robert Johnson に出会ったとも言われていますが、一部に見られる「1930年の Grafton でのレコーディング後、親友の Son House を Robinsonville に呼び寄せて」と言う記載はそれと矛盾します。だって、それじゃ、もうすでに「親友」なワケでしょ?ワケ判らん。
その Grafton でのレコーディング( 28 May 1930 )での M & O blues(スタンダード E )と Future blues(オープン G )は、The Legendary Delta Blues Session P-VINE PCD-2250 に収録されてます(実はこの時、他にも Kicking in my sleep blues と Window blues という二曲も録音したようなんですが、いまだにリリースされていないようです)が、ワタシの持ってるのは CREAM OF THE CROP という ROOTS の RL-332 っちゅうアナログ・ディスクで、Willie Brown はこの1941年の Make Me A Pallet On The Floor 一曲だけが収録されてます。

ところで、Willie Brown と Robert Johnson の関係については、1920年代後半、Robert Johnson は Willie Brown からギター・コードやストリング・スナッピング・ベース(右手の親指で掬いあげた低音弦が指板に叩きつけられ、独特の迫力を演出する奏法)、さらにオープン G チューニングも教わった、とゆーことになってます。また一説では Robert Johnson の Crossroad Blues の歌詞中に出てくる

─You can run, you can run tell my friend Willie Brown.─

ってえ一節が彼のコトだ、ってえ解釈もあるんですが、それは別人である、っちゅう説もあって、そこらは定かではございません。
ま、なんにしろ、Willie Brown についちゃ資料が無さすぎるんですね。
さらに事態をフクザツにしてるのが、どうやらギターで弾き語りをする Willie Brown ってのが全部で三人も「居た」らしいんですよ。
1941年のこの Make Me A Pallet On The Floor の翌年、1942年にも Alan Lomax は Library of Congress のために録音をしてるんですが、そこに、どうやらまったくの別人らしい Willie Brown ってのが Mississippi Blues って曲をレコーディングしてるんですよ。
デルタ・ブルースとしちゃあ異例なことにキー「A」からのブルース・ピアノのスタイルを真似たようなギターだったそうです。
そしてもう一人が William Brown Parth で、こちらもやはり Library of Congress に Ragged And Dirty East St. Louis Blues の二曲を吹き込んでいます。

ま、そんなワケなんで( Vcl/Guit.に限定しなければあと二人います。詳しくは ktateさんの「ブルース人名辞典」で!)Robert Johnson のCrossroad Blues で名前が出てくる Willie Brown ってのが一体ダレのこったか判ったもんじゃないのよねー。
しかも、音楽シーンにカンケー無い、タダの呑み仲間でそんな名前のヤツがいたのかもしんないし。ま、「この」Willie Brown だったらハナシは面白くなるんですが。
さらに、Born August 6. 1900 in Clarksdale, Mississippi.ってゆう記載も、残りふたりの Willie Brown のどっちか(ま、Willie Brown Parth は混同しない、とは思うんですが)の出生データだ、っちゅー可能性があります。

イギリスの『 Encyclopedia of Popular Music 』に登場する記述を紹介しますってえと(でもなー、これも「Born August 6. 1900 in Clarksdale, Mississippi.」って始まってますからねえ・・・別人の可能性も?)
『小作人の倅として生まれ、Charly Patton 並みの腕だった、っつう Earl Harris からギターを教わった。第一次世界大戦の時期には(1900年生まれだとしたら14才〜18才)William Moore( Virginiaのラグタイム系ブルースマンで、1927年の12月から1928年の1月あたりに Chicago で Paramount に16曲を吹き込んだ、ってえ William Moore でしょか?)と組んでて、その後の10年間は Memphis Minnie の「かたわらにいた」と。
Charlie Patton が1930年5月に Paramount に三度目のレコーディングをした時にはピアノの Louise Johnson や Son House とともに伴奏を務めました。
Charlie Patton の死後は Son House と組み、さらに Fiddling Joe Martin( Fiddlingとあるので、ヴァイオリン弾くの?と思われるかもしれませんが、Fiddlingってのは俗語で「ペテンにかける」っちゅーイミですからねん。弾く楽器もベース&ドラムだそーです)や Leroy Williams(ハーピスト)と組んだものは Library of Congress のために、Mississippi 州 Cormorant で録音されています。
その後ずっと Son House の伴奏を務めていましたが1952年には、心臓発作で死亡したデルタに戻っています。』( )内はワタクシのおせっかい「注」。

なんだか、しょっぱなの生年月日の「引っかかり」さえ無きゃ、ゼンブ信じられそーなんですが、ううむ。

permalink No.471

Search Form