I Need You So Bad

Magic Sam


03-08-16
もちろん、この曲はライヴじゃなく、スタジオ録音のだって、好きなんだけど、なんといっても、この Ann Arbor での、 San Ho-Zay から続く流れで、あのキャッキャッ!っちゅー(サルじゃないぞ!)ギターの音につづいて始まるこのテイクには、あの前ぶれだけでケツアツが上がってきちゃうのよねん。
ま、そっからナダレ込んでく You Don't Love Me もスゴいんだけど、いやいや、それなら Sweet Home Chicago だってめっちゃスゴいんだけれど、そんなコト言ってたら、全曲紹介になっちまいますからねん。
いちおー、この「BLUES日記」、今日のブルース、っつーことで一曲だけ、ってのをゲンソクといたしておりますもので。で、このアルバム Magic Sam Live Delmark 645/646 は今後も「必ずや」登場いたしますので、本日はその第一弾といたしまして、ワタクシも歌おうとチャレンジしたものの、歌ってみると、意外と難しくてミゴトにザセツしたこの I Need You So Bad でございます。
この Ann Arbor では彼自身のヴォーカル&ギターと、Bruce Barlow のベース、そして借り物のドラマー、Sam Lay という「たった」三人でのステージなのですねえ。それでこの熱気!この迫力!
歌を追っかけるカウンターをギターで入れ、かつ、そじゃないとこではリズムも切って、それで「手薄」感がゼンゼン無いんですよ!ま、それにゃあ、ワタクシ「ごひいき」のドラマー、Sam Lay の「手厚い」フォローも利いてますね。まるで、サイド・ギターがいないぶんワシが埋めちゃる!ってなイキオイでスネアの連打・・・ん?My Favorite の Ted Harvey 師もトリオ編成のコンボで叩いとるのねん。う〜む、ワシゃ意外と手数の多いドラマーも好きなのかもしれんて。(そー言えばアンケートの「好きなドラマー」とこにグレッグ・ビゾネットって書いたっけ・・・え?それ誰か、って?いーの、良いコのみなさんはそんなの知らなくても!)ま、トリオ編成だと、それドラムが引き受けるっちゅーの、ブルースじゃ当たり前なのかな?ってこんなコト書くとゴカイして、トリオ編成のとき、やたらリキ入れて「音量だけ」上がるドラマーいるけど、そじゃないのよん。手数を増やして、刻みを細かくすんの。ヘタなドラマーに限って音デカイ!これ世界のジョーシキ(あ、ブルースの、ね)。

さて、もひとりのベースの Bruce クン、なにやってるか、ってえと、これ、あんましコーケンしてないよな気が・・・ひょっとして「ヘボ」?マ、スラッピングもチョッパーも「発明」される前の時代ですから、ジャマしてないだけでも「佳し」としなきゃいけないのかもしんないけど、だとしても、ここオレだったら・・・とついつい思ってしまうこんなワタシにダレがした。
ま、そんなコトはともかく、ギターもいいけど、やはり Magic Sam の歌がいいんですよねえ。トレブリィなギターと対照的にウォームで滑らかで、しかも偉ぶってない!ヘンに作った声でもないし、しかしフシギなテンションで満ちています。やがて訪れる「死」を「我々は」知っているからそう思うのかもしれませんが、ホントに命を削るように吐き出されてくるヴォーカルのように思えてしまいます。

Magic Sam と来たら、やはり DELMARK の West Side SoulBlack Magic!ってのがジョーシキ(?)ですが、このライヴ、多少、音質に難はあっても、Magic Sam の「人間としての」全容がよりよく出ているように思います。ダレにでもススメられるものじゃないけど、でも、え? Magic Sam はライヴが好き?嬉しいなあ!と、蕎麦の一枚でもオゴろうかって・・・ウソウソ!

ただ、このライヴ、早くっからこの客が録音してたテープの存在は知られてて、遥かムカシ、とーほぐのブルース喫茶Cavern にまで、その何代目かのダビングされたテープが辿りつき、そのあまりの音質のワルさ(なんせダビングしたヤツにオーディオの知識がまったく無かったみたいで、アジマス調整さえすりゃこんなフェイザーで音変わってったの途中で変調を固定した、みたいなヒドい音にゃーならないのに、ってなシロモノでした)と「にもかかわらず」聴こえてくる演奏の熱気、ものスゴさ、みたいなものに圧倒された記憶があります。

確か、当時、某ブルース関係者の口から、このオリジナル・テープをレコード化してリリースすることは不可能ではない、ただ、サムの未亡人が版権を主張して(か、原盤著作権をタテにして)モメている。あの奥さんもおっ死んじまったら堂々と出せるんだが・・・みたいなハナシを聞いたキオクがあります。え?もしかして、それって言っちゃイケナイことだったのかな?ま、いいじゃないすか、ダレって言ってないし。ねえ?

Magic Sam、本名 Samuel Maghett は、1937年(ただし、その墓碑銘には1936年と刻印されています)2月14日 Mississippi 州の Grenada で生まれ、周辺で行われるパーテイなどに出演したミュージシャンを見て育ったらしく、最初のギターはやはりお手製でした。
そして 10代で Chicago に移っています。
彼は Homesick James のバンドに参加し、その時のステージ・ネームは Good Rockin' Sam でした。
1957年には初吹き込み。初期の彼の作品としては Cobra、Crash、Chief、そして Artistic に吹き込んだ All Your Love、Easy Baby や She BelongsTo Me などです。しかしレーベルが倒産した1959年、彼は陸軍に入るのですが、脱走兵として収監され、1961年には不名誉な追放処分を受けてしまいます。
Chicago に戻ったサムは CHIEF Record と契約、'60年代前半にいくつかの重要な作品を録音しました。しかし、本来、彼はライヴ・パフォーマンスにその価値を発揮するタイプのミュージシャンで、レコードをリリースするようになってからもシカゴのブルース・サーキットはもちろん、時には San Fransisco の Fillmore West や the Avalon Ballroom にまで足を伸ばしています。ただ、そのころから、徐々に彼の聴衆に白人が増えて来ていたようです。それが1967年に DELMARK からリリースされた West Side Soul と、1968年の Black Magic として結晶したのですね。

しかし最も大きな「事件」は、1969年の8月に行われた、伝説の Ann Arbor Blues Festival への出演でしょう。
ここで初めて Sam を知った人も多く、この新しい才能の出現に大いなる期待が寄せられたのですが、その真っ最中、まさにその頂点で、その年の12月、Samuel Maghett は心臓発作のため死亡してしまったのです。
「オレはウェスト・サイドのバーベキュー・ブラザーさ」とインタビューに語っていたサム。でもカネが無くてロクなもんが喰えなかった、というハナシもあります。それで健康を害したんだ、と。ワタシは彼の未亡人ってのがどんなだっかは知りませんが、彼の墓石には

Beloved Husband
Samuel G. Maghett
(Magic Sam)
1936-1969
"Magic Sam" was a Chicago blues musician; a singer, guitarist and songwriter.
He recorded two albums, West Side Soul and Black Magic,
and died of a heart attack at the height of his career.

と刻まれています。Beloved Husband ─ 大切な夫・・・ 残された妻にそう言わしめるよな家庭であったのでしょうね。





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