Kansas City March

Wild Jimmy Spruill


03-08-22
先日採り上げた Wilbert Harrison の Kansas City でイキのいいギター・ソロをブチかましてくれた Jimmy Spruill の便乗盤(?)でございます。つーか、あのギターのウケがいいので、ここはいっちょ、それだけで押してみっか?てなもんだったんざんしょか?
てなワケで(あ、ホントかどーか判りませんよん。あっしがムセキニンにそーだったりしち、って仮定してるだけですからねえ)こちらのナンバーでは、もう徹頭徹尾、彼のギターを主役に(とーぜん歌ナシ!)ゴリ押しでございます。バックにはピアノもいて、典型的なブーギウーギ・パターンを弾いているんですが、あまり目立ちません。なんたって、サイドを切るギターもやけに「張り切っちゃって」て、めちゃめちゃキレのいい(良すぎる?)特徴的なカッティング・パターンを貫いてますよ。さらにドラムはってえと、もしかして、ハイハットの上にタンバリン置いてねえ?っちゅーなんだか耳障りな付帯音がず〜っと鳴りっぱなしでげす。
でも、そんなの気にするふうもなく Jimmy Spruill のギターは炸裂しっぱなし。
かなりトレブリィなんだけど、あましサステインの無い音で、アーミングで音揺らしつつ、しかも時にグリッサンドも交えつつ、モロ元気よくトバしてまいります。
この音作りはもうカンゼンに「ギター」に照準を当ててますよね。
だから、普通だったら「ウルサイ!」ってド叱られそなサイドのカッティングも「あれでいい」みたい。ただ、これが現代のギター・フリークたちにウケるか?ってことになると、ちょとギモン。
現代のイロんなギターのスタイルの中でも、ワリと共通してる、ってのが「音伸び」重視、ってとこじゃないか?と思うんですが、そこ行くと、彼のギターは減衰がハゲしすぎるよな気がするのよねー。
ま、だから某「 I 」楽器店の自社ブランド「 M 」っちゅーギターみたく、積層合板ボディにチープなハムバッキングなもんで、音ショボイ、なんてヤツでバリバリ弾くと、こんな感じになる、と。

ま、音伸びがワルいギターだと、つい、手数が増えますが、この曲もそーなんでしょか?え?オマエなんかと一緒にすな?ごもっとも。

さて、多くのブルースマンたちの足取りを追ってゆくと、とーぜんメイン・ストリームっちゅうのが、ミシシッピー・デルタから北上(ま、途中 Memphis や Helena での道草もあるよーだけど)して Chicago へ、ってえ図式がよく知られてますよね。
そこいくと、ややこじんまりとした「流れ」ながらも、North、あるいは South Carolina 方面から New York へ、っちゅうアメリカ東海岸に特有のパターンも存在してるよーに思われます。

James 'WILD JIMMY' Spruill は、1934年 6月 9日、North Carolina 州の Washington で生まれているようです。ただ、このひとの経歴に言及した資料が殆ど無く、そっから先で判っているのは、どうやら1955年あたりに New York に出てきたらしいこと、あとはレコーディング・データと、1996年の 2月3日、North Carolina 州の FaytteVille で、心臓発作のために死亡した、ってことくらい。お手上げです。
ま、音がすべてを語ってくれてる、っつーコトにしておきましょ。
判ってる範囲では、彼が参加した最初の吹き込みは Charles Walker's Band With Guitar-James Spruill の Driving Home, Part 1 / Driving Home, Part 2( HOLIDAY 2604 )で1956年のことです。
彼の自己名義での初吹き込みは1957年(1959年とする資料もありますが、それは「"Wild Jimmy"」 Spruill 名義での初吹き込みであって、James Spruill and Band を忘れちゃいけまへん)の Honky Tonk Hucklebuck / Jumping In( EVERLAST 5004 )でしょう。
間にまた James Spruill and Band での Honky Tonk Hucklebuck / Jumping In( CEE JAY 581;1957年)と、Tarheel Slim の Wildcat Tamer / Number Nine Train にギターで参加した Fury 1016( 1958 )を挟み、1959年からは Wild Jimmy Spruill となって(?)この Kansas City March / Hard Grind を Fire に吹き込んでますよん( FIRE 1006 )。
Wild Jimmy Spruill としては、他に Scratch 'N' Twist / Slow Draggin'( EVERLAST 5017;1961年)、The Rooster / Cut And Dried( ENJOY 2006;1965年)。そしてタダの(?)Jimmy Spruill で Lonely Island / ?( CLOCK 1038;1960年)が、そしてちょっとだけちゃう Jimmy "Wildman" Spruill 名義で Country Boy / Scratchin'( VIM 521;1962年)があります。

アルバムでは、イギリス KRAZY KAT KK 7429( 1984 )、WILD JIMMY SPRUILL THE HARD GRIND BLUESMAN 1956-64 がリリースされています。収録曲は
Kansas City March / Hardworking Man ( B. Brown & his Rockin' McVouts )/ Hard Grind / Driving Home Pt.1 ( Charles Walker )/ Drafted ( Wilbert Harrison )/ Slow Draggin' / Rockin' With "B" ( B.Brown & his Rockin' McVouts )/ Scratch 'N' Twist / Hard Times ( The Slop ) ( Noble "Thin Man" Watts )/ Your Evil Thoughts ( Lee Roy Little )/ Charles Walker Slop ( Charles Walker )/ Jersey City ( Bobby Long )/ Believe Me Darling ( June Bateman )/ Scratchin' / Country Boy / Cut And Dried

彼が録音に参加したミュージシャンは他に
Jimmy Lewis / Elmore James / King Curtis / Billy Butler / Bobby Donaldson / Danny Moore / Odie Payne / Belton Evans / J.T. Brown / Johnny Acey / Paul "Huckle-Buck" Williams / Robbie Robertson / Charlie Musselwhite / Michael Bloomfield / Riff Ruffin / Melvin Lastie / Garth Hudson など、実に多岐にわたります。ま、こんだけカツヤクしてるワリには資料が無いってのがフシギです。

あ、そうそう、この FURY をやってる Bobby Robinson ってひとも Jimmy Spruill 同様に、東海岸の South Carolina 州から北上して New York に来ています。
1947年に New York に出て、戦後すぐ、Bobby Robinson は Harlem にレコード・ショップを開き、やがて数々の独立系レーベルが相談をもちかけるほどの権威ある存在となって行きました。
1951年には兄弟の Danny Robinson とともに最初のレコード会社を立ち上げ、Robin Records と名付けましたが、南部にまったく同名の会社があり、訴訟を起こされそうになったので、即座に Red Robin Records に変更しています。
彼は Morris Lane や Tiny Grimes、Wilbert "Red" Prysock などのレコードを作ることから始めたのですが、なかなか商業的な成功には結びつかず、苦戦していたようです。そんな時に、the Mello Moods、Vocaleers に the Du Droppers のようなニューヨーク・ドゥワップ・グループの隆盛を見て彼は戦線を拡大してゆきます。

Whirlin Disc( 1956 )と Red Robin は R&B 系の vocal group に、レーベルのフラッグ・シップかつディストリビューション・センターたる FURY(1957)を作り、FIRE(1959)はブルース、King Curtis を擁し、後にはヒップ・ホップもてがける Enjoy(1962)そして Everlast(1957)などが1960年代につながっていきます。それらのレーベルでは時々 Wilbert Harrison の Kansas City や Buster Brown の Fannie Mae、Lee Dorsey の Ya Ya なんてゆーヒットも出たし、Lightnin' や Elmore、King Curtis なんてそこそこコンスタントに売れてくれるアーティストの原盤もあってワリと順調でした(ただし、Wilbert Harrison の Kansas City に関しては SAVOY Records との契約残余でモメはしましたが)。
1970年代に入ると、彼はまた新しいレーベル、 Front Page Records もスタートさせています。
その豊富な原盤を活かして Elmore や Lightnin' の全集( ex.Elmore James "The Sky Is Crying─The Legendary FIRE/ENJOY Sessions" P-VINE PCD-2889/90/91・・・つまり三枚組。もちろん Jimmy Spruill がバッキングをしてる Rollin' & Tumblin' などが収録されてます)も発売し、マニアにもその存在を認知されています。

James "Wild Jimmy" Spruill、いまからほぼ 45年前のギターです。音的にはシンプルでストレート。でもその姿勢はアグレッシヴ!
なんだか今のギタリストってトーンはアグレッシヴでも、フレーズは手アカのついた使いまわしになってません?それと「まったく」逆だよね。


前線が接近中につきべらぼうな「暑さ」だよ〜ん、弘前は。
首都圏のみなさまはいかがお過ごしでございましょうか?こないだまでスイカしか食べられない・・・ と消え入りそーだった「Y嬢」もよーやく食欲が戻り、先だってはメデタく天丼大盛りを「完食」され、今日も今日とて豪華中華料理で宴席だそーで、まことにケッコウざます。
そーゆうワタクシは「なんでか」いまだかって、夏ヤセってのしたことございません!
バカはカゼひかない、が冬の季語(かあ?)だとしたら「バカは夏ヤセ」しない、てのが夏のそれかもしれませんよ。がははははは
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