Reconsider Baby

Lowell Fulson


03-08-30
えー、みなさま、いかがお過ごしですか?人生には様々なドラマがあるのではないかと思いますが、あなたはどうでしょ?
なんちて、ゴーインにオンナに捨てられた、なんてえ話に持ってこうとしてるのが見え見えでございますねえ。
そう、今日の1曲は、これまた名作中の名作 Reconsider Baby でございます。
ちょっとえがらっぽい(?)クセのあるギターで始まるのでございますが、この音を聴くと、つい
ティン・パンの鈴木茂が弾くノン・リヴァースのファイヤーバードの音を連想しちゃうんですよ。ネはクリアーなんだけど、なんかしら付加音があるみたいな独特な音。
それで奏でるシンプルなイントロに導かれて Lowell Fulson のちょっとやくざな、でもやらしくはないドライなヴォーカルが歌い出します。

ああ、お前が去ってくのを見てなきゃならないなんて!


てな感じの一番に始まり、次がこれまた応えそうですよ。

こんだけ一緒に暮らしてきたのに、別れなきゃならないのかい!


う〜む、オトコとしては、あの日々はなんだったのか?と考えちゃいますよねえ。
ここでまた Lowell Fulson のややトリッキーなギター・ソロが入り、ピアノと戯れた後、いよいよ三番です。

一度はオレのコト、愛してる、って言ってくれたじゃないか。なのにお前はココロがわりをしちまった、ってのかい?
なあ、もいちどよく考えてみてくれよ。も少し時間をかけてさ。


・・・ う〜ん難しいとこですねえ。以前 HP の方でも(そん時は Freddie King のヴァージョンでしたが)、オトコの側に、どーしてそーなったのか?ってえハンセーがいっこも見えん!これじゃあオンナは帰って来ないよねー。なんてコトを書いたんですが、そこキホンテキに大事だと思うんですよ。オトコはこれまでと同じ生活なのに、なんで急に愛想をつかされるのか判らん、と思ってるでしょーが、オンナにしてみれば、一定の許容量ってのがあって、そこに小さな不満でも積もり積もって、ある日、雪の重みで家がツブれるみたいに「来ちゃう」コトがあるんじゃないでしょか?
でもオトコってドンカンだから、そんな日々の澱(おり)が少しづつ溜まって来てるのに気付かないのよねん。

ホームページの Favorite Songs でも書いたとーり、そゆこと考えると、Freddie King のあのメッチャ深刻ったらしいヘヴィーな仕上がりがよけーアホらしくなっちゃうんですが、でも、あれはあれでなかなか面白い「行き方」ではございますよ。自分でやるときには、その Freddie King のヴァージョンでやることが多いですが、それは、みなさんオリジナル・スタイルに近いのでやってますから、変化をつけないとね、っちゅーことでございます。
HUNG DOWN HEAD CHESS/MCA MVCM-22011 などに収録されています。

Lowell Fulson は Oklahoma 州 Tulsa の Choctaw インディアンの居留地で1921年の 3月31日に生まれています(祖父が Choctaw インディアン、という資料があります。ただし ktateさんの「ブルース人名辞典」では、チェロキー・インディアン、しかも祖母が、と違っています)。
育ったのは Texas との州境に近い Atoka で、12才の時に叔父(あるいは伯父。英文の Uncle ではその違いが判りませんので)からギターを貰い、すぐに弾けるようになったようで、まずはハウス・パーティなどでアコースティック・ブルースを演奏するようになりました。
1939年には Texas 州 Gainesville で Texas Alexander* のバンドに加わっています。
そこでは後に彼が録音することになる多くのナンバーをモノにしたり、演奏に関する様々な経験を積むことになったようです。

*Texas Alexander:Alger Alexander. b.12 September 1900, Jowett, Texas( alt.1880 in Leona,Texas ) -d. 16 April 1954, Richard, Texas ( alt.1955 Houston,Texas ) Lightnin' Hopkins の従兄弟と言われる。楽器を弾かないブルース・シンガー。戦前からのテキサス・ブルースマン。


1940年代の中頃、California 州 Oakland における 2年間の海軍での軍役を終えて、そのまま San Francisco にとどまった彼はそのスタイルをさらに都会的なものに仕上げて行きます。
一般的な Mississippi → Chicago、という図式とは異なり、彼は第二次世界大戦中に Texas と Louisiana の隘路をくぐり抜け、ウェストコーストに辿り着いたのでした。
Oakland 勤務で知りあったプロデューサーの Bob Geddins の紹介によって、Big Town、Down Town、Gilt Edge 、そして Trilon などのレーベルに吹き込みを始めたのが1946年のことです。
1950年にはツアーを開始していますが、そこには Ray Charles も在籍していた、と言われています(ただし資料によっては初吹き込み以前に在籍していたかのように書かれているものもあります。また、Ray Charles 以外にも、ギターに Ike Turner、サックスに Stanley Turrentine あるいは King Curtis がいた、という記載もあります。3 O'Clock Blues の際の12人編成のバンドに Ray Charles が含まれている、とする説もありますが、Ray Charles の Biography ではツアーに同行した記載のみなので、1950年のツアー・メンバーから、とする説がやや優勢です)。
同年、3曲を R&B チャートのトップ10に送り込みました。Every Day I Have The Blues、Blue Shadows と Lonesome Christmas がそれですが、特に Memphis Slim の Nobody Loves Me をベースにした、と言われる Every Day I Have The Blues はご存知のように多くのブルースマンによって愛され、広く普及することとなりました。

前年には Aladdin Records とも接触はしたものの、1954年には Chicago の CHESS Records の "Checker" label と契約。そしてそこで吹き込んだ一曲によって目ざましい成功をおさめます。それこそが、本日のブルースとしてとりあげた Reconsider Baby なのでございますよん!
ジャンルを超えた名曲として、Rufas Thomas や Freddie King などのブルース畑のアーティストばかりではなく、Elvis Presley や Merle Travis(「Trouble, Trouble」)、 Lou Rawls(「Room With A View」として)、Foghat にクラプトンと、この曲を愛したアーティストは多岐にわたります。それだけ、この歌詞としっかり結びついた独特のメロディ(いやいや、ブルース業界では稀な部類ですぞ!こんなにしっかりした「曲としてのアイデンティティ」を持ってるっての)が多くの人たちに受け入れられた、ってことでしょうね。資料によれば、R&B チャートの 5位にまで到達しています。

彼と CHESS との関係は 1963年まで続いたようですが、1965年には Modern/RPM/Flair fame Records のオーナーでもある the Bihari family が所有する Los Angeles の Kent Records と契約。この Kent では、名前を Lowell Fulsom と綴っているようです。そしてリリースされて大ヒットとなったのが Tramp でした。1967年に R&B チャートの 5位にまで上り、これまた皆様ご存じのように Otis Redding によってカヴァーされることとなります。
1969年には Jewel Records に移籍しロックに接近した録音を行ったりもしていますが、同時期、Crazy Cajun や Granite などのレーベルにも録音をしていたようです。1980年代からは海外にまで進出し、その後も1990年代までツアーや、ヨーロッパのレーベル(おフランスの Blue Phoenix Records など)、あるいは Rounder や Bullseye Blues labels などにレコーディングを続け、1993年には W.C. Handy blues awards を獲得し、「殿堂」入り、また1995年には Them Update Blues( Bullseye Blues CD 9558 )がグラミー賞のベスト・トラディショナル・ブルース部門にノミネートされました。

1990年代の中頃から腎臓の機能障害から、週に三度の人工透析が必要になっていた Lowell Fulson は、1999年の 3月7日( alt.3/6 )腎不全と糖尿病、さらに合併症による心臓の衰弱などにより California 州 Long Beach で死亡しました。

なお、Lowell Fulson に関しては、すかさんの http://homepage1.nifty.com/bluesknk/flsn.html もご参照くだされば、桁違いにより正確かつ詳細な情報が得られますよん。






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