Snatch It Back And Hold It

Junior Wells


03-10-04
バーストするようなブレイク・インに続き、Junior Wellsの巧い(巧すぎる?)ヴォーカルが楽々とこなしていく。
もちろんバックのギターは Buddy Guy です。
でも、彼は「あの」特徴あるリフを弾き続けるので手いっぱいらしく、一切オブリを入れるなんてヨユーは無さそ。
替わりに大活躍してるのが Billy Warren のドラムです。
シンバル・ワークを刻みながらも要所要所にスネア・ロールやタム・ロールをはさみ、ジュニアのヴォーカルを盛り立てているのでございます。
時代を感じさせるボワンボワンの締まりの無いベースは Jack Myers・・・

困ったことに、ワタクシ、Junior Wells のヴォーカルは好きじゃあないんですよ。
あまりに自信ありげで、しかも実際そんだけのことはある「巧さ」が滲み出て・・・ いえいえ、ボタボタと洩れ出て来てますでしょ?そこらの「過剰感」についていけんのですわ。
で、さらに困ったことに、そんな彼の曲の「作り込み方」はケッコー好きなんでございますよ。

この Snatch it back and hold it ばかりか、アルバム Hoodoo Man Blues( Down Beat Magazine の1965年 R&B Album of the Year を獲得しています。Delmark PA-3014・・・もち、まだ TRIO RECORDS 時代のアナログ盤です。現在は P-VINE から CD で。PCD-1802 )に収録されている Good Morning School Girl ( Sonny Boy Ⅰのそれとはゼンゼンちゃう!)や You Don't Love Me なんて、ほとんどそのままの形で(でもハープ抜きなんで「自然に」アレンジされちゃう?)かって Cavern Blues Band でもレパートリーとして採り上げてたくらいです。

もちろん、Delmark 以外の、例えば VANGUARD VSD-79262 Coming At You なんてアルバムでも、 Stop Breakin' Down や Five Long Years、そして Little By Little なんて、ホント、曲としての完成度が高いのには感心いたしますです、ハイ。
VANGUARD のも一枚の It's My Life Baby だってそう。Checking On My Baby あたりにしても、実に完成度が高い。逆に、それやろうとするとコピーになっちゃいそでイカン!てなくらいでしょ(ブルースでコピーは「自己否定」でございますからねん)。

いわゆる「まとめ易い」スタイルなんですよね。
管の入らない、ギターをメイン(なんたってフロントにギター三人、はザラでしたから)にした構成であっても、あるいはピアノにサックスが入った構成でも、スグそれなりに応用が効くのでございます。もちろん、ハープが入ってもイケるのはとーぜんですし。
ただ、あのジュニアの呪縛がねえ・・・ 気を付けないと、ついついジュニアっぽく(つまり「巧そーに」?)歌ってしまうんですよ、これが。こっちはそんなに巧くないっちゅーのにもかかわらず!
それくらい、彼のオリジナルはキョーレツなのです。 良くも悪くもね。

ウチに「しんちゃん( Shinske the Night Train )」からもらったブルースのライヴを収録したヴィデオがいっぱい(しんちゃん、ありがと!スゴいベンキョーになってますよ!)あって、それ観ても、ステージ運び、演出、どれをとっても、すんごいウマい!
でもねえ、巧過ぎるんですよ。「おおっ!カッコいい!」で終っちゃうのよねー。ここまでよく出来てると。
もちろん、それは彼の罪じゃあないですし、どっちかってえと、ワタクシのシュミに合わない、ってだけのことなんですが・・・

1934年の12月9日、Tennessee 州 Memphis の John Gaston Hospital でひとりのオトコのコが生まれました(って、なんで今日は「おハナシ」口調やねん?)。
ご両親は Arkansas 州 Marion 近くの農場で働いておったそうな。
ジュニアは学校をズル休みしてソーダ・トラック(ってナニよ?なんて訊かないでちょーだい。ワシかて判りまへんがな。飲むほーのソーダなんだか、工業原料の苛性ソーダなのか、それもトラックってコトは積み込み?荷役?ううう、さっぱ判らん)のバイトしてたけど、一週間やって貰ったのがたった 1$50¢!それで質屋に行ってみたらハープが 2$なんで・・・ってエピソードはもうみなさまご存知でしょ?ところは West Memphis、ジュニア 9才の時のおハナシでございます。
あるいは1948年 C&T Lounge での Tampa Red との一件、はたまた Ebony Lounge での Little Walter との一件・・・

いえね、このヒトのそゆエピソード、もう、あちこちのサイトでまるで「忠臣蔵」みたく定本と化してますんで、いまさらここで書くのもナンですし、なんかちゃうこと書きたいなあ、ってんで彼の結婚なんてどう?
奥さんは Zearline McBeck。陸軍を除隊してきた1955年に結婚してるんですが。え?どーでもいい?んじゃ、しょ〜がない、彼の最期でも・・・
ジュニアは '97 年の春からリンパ節などのガンの手術や治療を受けていましたが、最終的には、昏睡状態に陥り、回復の見込みも無いことから、医師団は延命治療の放棄を決断、生命維持装置を取り外しました。
1998年1月15日、ジュニア・ウエルズ永眠。
シカゴの 71番街の葬儀会場では、棺の中にロイヤル・ブルーのスーツで装った彼の遺体とツバ広の帽子、さらには全部のキーを揃えたハープ一式と Tanqueray のジン一本が入れられ、葬送の曲は Billy Branch、Sugar Blue、そして Harmonica Hinds という三人のハーピストによって奏でられたのでした。

とゆーワケで、あまたあるエピソードはキョーミがおありなら、ご自分でお調べになってそれぞれ「カンドー」してくださいませ。Yahoo 検索で「 Junior Wells 」かけてみれば「い〜っぱい」出てきますよん!
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