Highway 61

2003-10-30 THU.

横長の Tennessee 州はその西側を Mississippi 河に阻まれ、ほぼ 60 度の角度で台形をなすようなカタチになっています。そのとがった先っちょにあるのが Memphis。
その Memphis から、ほぼ河と並行するように南南西に伸びてゆく Route 61(どうやらアメリカでは南北方向に伸びるハイウェイには奇数番号、東西に走るものには偶数を当てているのかな?)を辿り、Mississippi との州境を越えてすぐに Robinsonville はあります。
つまり、この街は Mississippi 州の北西の隅に位置しているワケ。河を挟んで Arkansas 州とも近い、というロケーションね。
現在では街の東側を新しいバイパスが南下していますが、当時の旧 61 号線は街の中心を貫いていたようです。現在はもっぱら「カジノ産業(?モノを生み出すから「産業」だよねー?ギャンブルはナニを生み出してるの?)」で成り立っているようですが、20 世紀も晩期になるまでは綿花畑が一面に広がる典型的なプランテーション地帯だったと思われます。

街の中心で東から来る 304 号線が 61 号線と交差し、そのまま Old Commerce Road として西方の Commerce に向かって抜けていくのですが、この道を辿り、堤防(と言ってもミシシッピー河のじゃなく、周辺の河川、あるいは水路の、だと思いますが)の手前で左に折れ、丘を一つ越えたあたりに Robert Johnson の母 Julia Major Dobbs と継父 Noah が働いていたと言われる The Leatherman Plantation があり、堤防に面した家で彼が少年時代を過ごした、と信じられています。しかし現在では、当時はあり得なかった光景が出現しているようで、それは Sam's Town Casino というギャンブルの殿堂(?)です。

ま、それはさておき、1929 年の 2 月には Robert Johnson は Virginia Travis と結婚しています。この若いカップルはやがて子供が生まれて、家庭を築いて行くハズだったのですが、翌1930年、出産がスムースに行かず、Virginia はわずか16才で死んでしまいます。彼の「家庭」への希望はこうして挫けてしまったのではないでしょうか。どの資料にも、この時に生まれた子供、というのが出てこないところを見ると、母子ともに死亡してしまったもののようですね。
この年の 6 月には Son House がやって来て Robert Johnson にも大きな影響を与えることにはなるのですが、この時期、彼のギターがさほど進歩をみせなかった、という背景にはこの悲劇が影を落としていたのかもしれません。
ただ、ある意味では音楽に関わることが「救い」になっていた可能性もあるんじゃないでしょか?
この時期 Robert Johnson は同じように Willie Brown( 8/5 Make Me A Pallet On The Floor で採り上げてます)にもつきまとい、全身でブルースを吸収していたようです。
しかしその割りには彼自身の「伸び」はイマイチだったようで、サン・ハウスの目には「ダメだこりゃ」と映っていたのかもしれませんね。
やがて Robert Johnson の姿が Robinsonville から消えます。

一部の資料では、いまだ会ったことがない実の父親を探しにハイウェイ 61 を南下した、ともありますが(でも Hazlehurst に向かったのならどっかで東にそれてハイウェイ 51 あるいは 55 に乗る必要がありますよね?)、その真実は 70 年を超える時間の隔たりによってもはやアイマイモコとしてしまっているようでございます。
この時、これまた伝説的な存在の Ike Zinnerman との出会い、ギターの修練、なんてエピソードが有名ですが、実はこの時、彼より10才以上も年上のココロ優しき女性、Calletta "Callie" Craft とも出会い、1931 年の 5 月には彼女と結婚しているのです。ただし、この結婚は秘密にされていたようなのですが。
Ike Zinnerman に師事したことがギターのめざましい上達につながったとする見方は、それなりに説得力がありますが、でも、もしかして、ここでひとりの女性と出会ったことが原因だった、あるいは相乗効果を発揮した、という可能性は無いでしょうか?

Robinsonville に帰ってきた Robert Johnson がトツゼン凄いギターを弾いたものだから、悪魔に魂を売ってギターの腕を手に入れた、というウワサが優勢になったようですが、これはそれ以前のブルースマン、例えば Peetie Wheatstraw や Tommy Johnson あたりが「ハクをつけるため(?)」に自分で言いふらしたのとは異なり、Robert Johnson 自身が肯定的にそれを語ったことはない、とい点で少し位相が違っております。Tommy Johnson なんてまことしやかに、悪魔との取り引きの仕方なんて How To 話まで語ってますから、Robert Johnson も自ら言うことはしないにせよ、一面ではそんなウワサでも「宣伝になる」ことを考えて、周囲のウワサをあえて否定しなかったのかもしれませんね。

というワケで、ワタシは「彼は悪魔と取り引きなどしていない」と思っておりますので、「伝説の十字路はドコだったのか?」なんて不毛な論議には参加いたしません。

ああ、今日もまたレコーディングまで辿りつけなかった・・・

permalink No.555

Search Form