Do Right Baby

Ike Turner's
Kings Of
Rhythm



2003-11-24 MON.
冒頭、いきなりキレのいいギターが飛び込んで来ますが、これが Ike Turner のギターでございます。曲そのものはステディなウォーキング・ベースに乗ってジャズゥイ〜になる一歩手前で泥くさサイド(?)に踏み留まっておるような・・・(?)
ヴォーカルは Missouri 州 Sikeston 生まれで、Illinois 州 Cairo で Robert Nighthawk や Earl Hooker のドラマーだった Billy Gayles。デビュー・シングルとなった Night Howler は Lloyd Price が1952年に放ったヒット Lawdy Miss Clawdy のパクリでした。
彼は声のデカさを買われて(?)フロントのポジションを与えられたなんてえハナシもありますが、1956年の Federal 録音が有名で、Sad As A Man Can Be や Im Tore Up などがあります。ここでも伸びやかなヴォーカルでなかなかいい味を出してますよ。

でも、今日の主役は彼じゃなく、バックでプレゼンスあるトレブリィかつチャーミングなギターを弾いている御大 Ike Turner のほうね。
世間的には(ってダイブ上の世代のハナシになるでしょが)ブルースマンとしてよりは、Ike & Tina Turner としての知名度のほうがあるでしょ。その上、薬物中毒+家庭内暴力=離婚、そして元カミさんは解放されてココロ置きなくバリバリ稼いでる、なんて「ロクでもない」イメージのほが定着してるんじゃないでしょか。
おまけに先だっては日本でのステージ、結果的にはすっぽかしちゃったコトになっちゃいましたしねえ。

Izear Luster Turner Jr.は、1931年の11月 5 日、Mississippi 州の Clarksdale で生まれています。そこで彼は King Biscuit Boys に参加していたピアニスト、Joe Willie "Pinetop" Perkins が友人の Ernest Lane の家の地下室で練習しているのを目にし、ショックを受けます。
「いやもう、あんなに速く動く指を見たのは初めてだったよ!それまで、ピアノってものを知らなかったようなもんさ。やっとピアノってのがどんなもんだか判ったね。いったいどの指がなにをしてるのかまったく判らないんだぜ!弾いてみたい!って言ったら Lane のヤツ、『オレも!』。さっそくパイントップに頼み込んで、それからふたりで教わるようになったのさ。それが始まりだな」
ふうむ、まことに恵まれた環境だったんですねえ。おまけに時には Amos Milburn や Charles Brown までがそれに加わって、おおいに影響を与えてくれたと言います。さらに Ike の母もそれには理解があったというんだから、それで上達しなきゃあバチが当たる、ってもんでしょ。
そしてもひとつ、彼の音楽に影響を与えたのが Clarksdale の放送局 WROX の存在です。
当時はまだまだ人種的偏見から黒人は抑圧された位置にあったのですが、彼はナゼかその障壁を軽々と乗り越えられたようで、
「 WROX には John Friskillo って白人のディスク・ジョッキーがいて、自分でレコードを乗せ、ターン・テーブルを回し、コマーシャルもいれる、って仕事をしてた。その下の階がホテルでそこで働いてた俺は上のスタジオを覗きに行ってて窓越しに彼を見てたんだけど、なんだか下の階に行く用事が出来たらしいのさ。そしたら、まだガキみたいな俺を中に呼んで、ちょっとの間、替わりをしろ、ってんだな。ここが Stop で、こっちでスタートだ。こっちが終ったらそっちのここを動かすんだ判るか?てなもんさ。判るよ、って言ったら、その場に俺ひとりを残して急いで降りてっちまった。ドラッグストアに行ったんだな。そしたら、そこに局のマネージャーが来ちまったよ。そして俺が言われたことをちゃんとこなしてるのを見て(前からどうやるのか見てたしな)、キレる替わりに俺にそこで働け、と言ってくれたんだ。で、もちろん俺はやらせてもらったよ。でもまあ、ディレクターなんてものもいないし、なにを掛けるかは自由だったなあ。カントリーもかけてたよ。カントリーを一曲流したら次は R&B てな具合だったけど、そこら気にしたことはないよ。どっちだって自分の気に入ったのをかけられたのさ」
やがて彼はそこで Robert Nighthawk に出会いました。WROX からライヴを流したのですが彼はピアノで共演しています。
1940年代の終り近く、彼は自分のバッキングを務める若いスタッフを集め始めています。
「バンドは二つあったんだよ。The Tophatters ってのと、もひとつが Kings of Rhythm なのさ。その違いは譜面が読めるメンバーと読めないメンバーで分けてあるんだよ。読めるほうはジャズ寄りかな?でもそーじゃないほうはジュークボックスに合わせて演奏出来たんで Kings of Rhythm って名乗ることにしたのさ。」
ここらのメンバーにはバリトン・サックスの Jackie Brenston やホンカーとも言えるテナーの Raymond Hill あたりがいます。そしてこの Kings of Rhythm は1951年の 3 月 3 日、お馴染みの Sam Phillips の Memphis Recording Service で吹き込んだ Rocket 88 をもって「最初のロックンロールだ!」と主張していますが、ま、RocknRoll の本家争いはキリが無いのでここじゃあ「ほっとき」ます。

Jackie Brenston の名義で著作登録された Rocket 88 は CHESS から発売されるや、チャートを駆け登り、そこで Ike Turner のミュージシャンを見る目に注目した Modern RPM の Biharis Bros.はタレント・スカウトとして登用したようです。
彼自身の RPM 初登場は、1952年の Ben Burton のバンドにおいて自身のピアノと歌で Trouble And Heartaches に You’re Driving Me Insane という曲でした。実はそれ以前、1951年の 3月 5日には Sam Phillips の Sun Records に、当時のガール・フレンド、Bonnie と共に、それこそ「 Ike Turner and Bonnie Turner 」名義で Heartbroken And Worried( 2828 )と Im Lonesome Baby( 2829 )を吹き込んでいるのですねえ。このふたりがいつまで続いたのか、は不明です。少なくとも1953年の 8 月までは確実で、その後が・・・?

とゆうのも、このタレント発掘に関して登場してくるのがウワサの Annie Mae Bullock、え?ダレそれ?と言いたくなるのもムリはありません。なんでこれが Tina Turner という名前になるのか、判りませんよね〜。ま、それが1956年のことであった、と。
最初はバンドのメンバーだったのが、あのように変貌を遂げるワケですね。
ま、それはともかく、彼は RPM でも Ike Turner and Bonnie Turner として Looking For My Baby と My Heart Belongs To You の 2 曲を入れるのですが、「その時、ギターのヤツとモメちまって、で Bonnie はピアノが出来たんで俺がギターを始めたってワケ。Memphis に行った時に楽器屋の O.K.Houck に寄ってみたのさ。それが Fender のギターを見た最初だな。それにエレクトリック・ベース!そんなもん見たことも無かったよ!すぐ買ったね。そっからはもう練習あるのみさ。」この時、Ike Turner の甥のベーシスト Jesse Knight Jr.はエレクトリック・ベースを入手し、これがまた Kings of Rhythm のサウンドをさらに前進させることになります。

1954年あたりのバッキングの仕事から Fender Stratocaster(時々、間の「 o 」が無い「 Stratcaster 」と綴っているサイトを見掛けますが正しくは「 Stratocaster 」です)を使い始めているようですが、やはりそのアーミングこそがストラト、という認識だったようです。ことアーミングに関しては(後の Wilkinson や FRT は別として)同じ Fender でも Tremlock の Jaguar や Jazzmaster、もっとチープな Mustang、そして Gibson のアーム類全部、ビグスビィに London BURNS Buffalo のメカ、等々どれひとつその可変音域、安定性(万全じゃないけど、イイほうでしょ)で太刀打ちできないですからねえ。あ、ワタクシ個人としては Wilkinson がベストだ、と思っておりますが。

さて、1956年に Annie Mae Bullock を見出し、1958 年には結婚しちゃうんですが、そっから先の Ike & Tina Turner の時代はもはや「ブルース」というワクを超えた「スター」となってく時代なんで、そこらは皆さんもご存知でしょ。ついでに言うと Tina Turner が「出て」くのが1976年のことでございます。良くも悪くもひとつの時代が終ったなあ、って気がしたもんでした。
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