Marked Deck

Julius
"Mercy Baby"
Mullins


2003-12-08 MON.
みなさまは誰のヴァージョンでもいいから Hoochie Coochie Man を一度はやったことございますでしょ?あのトニックのまま延々と(はちとオーヴァーだけど)行って、やっとサブ・ドミナントに上がるってえ独特な構成、こりゃもうブルース界のジョーシキでございますから、この手のスタイルの代名詞として使われとるくらいでございます。
しか〜し、ブレイクがらみじゃなく、しかも Lightnin'みたく、ワシが変えたいときに変えるんじゃ!ってのでもない、いわば確信犯的最長不倒距離(?)にチャレンジしたんじゃないの?ってのが、この曲、Marked Deck( Ace Blues Masters, Vol. 2: 4th and Beale and Further South WESTSIDE WESM 554 に収録)なのよねん。

一番の歌じゃ、うん、フツーじゃん?って感じの「二つ目上がる」ごくマトモなブーギでございます。そして二番に入ると・・・ え?ええ?ええええ?ってなくらい B♭のままで行きます。ホント延々と行きます。どのくらい行くかってえと、「標準」の実に 6倍!24小節もそのまま行っちゃうのですよ!(さすがに 20小節目でベースが早トチリして E♭に行きかけますが、慌てて戻って来てるのよねー。あれ収録終ってから「おめえ、あそこでチェンジしかけたろー」なんてシバかれてたかも)で、よーやくサブ・ドミナントに上がって、そっからはフツーか?と思うと、トニックの後でなんと、もいっかいサブ・ドミナントに行って(つまり、そっからフツーの12小節のブルースでいう 5小節目になった感じ)よーやくまともなパターンになるんですよこれが。つまり、全体じゃ実に 36小節の構成になっておるのでございますよ。
う〜む、いいですねえ。A-A'-B ってえブルースの形式とは離れた、A が異常に発達した(つまりフーチークーチーだってそうじゃん?)っつうフォームもあり得るし、そこにもってきてテキサス伝統の(?) A部分を自由に好きなだけ突っ込むってえ美風(?)がこのよーな怪挙をなさしめたのかもしれませ〜ん・・・ってのはモチロン冗談ですから、本気にしないでね。

さて、ご紹介が遅れましたが、この Mercy Baby こと Julius Mullins はワタクシの大好きな Frankie Lee Sims のバックでドラムを叩いとったおっちゃんで、Frankie Lee Sims についちゃあ 7月26日付の日記をご参照下さいませ。この Julius Mullins もちょこっと登場いたしておりますよ。
この Frankie Lee Sims の ACE への吹き込み My Talk Didn't do Any Good / I Warned You, Baby( ACE 539 )は1957年、Texas 州 Dallas で吹き込まれていますが、そのメンバーのまま、引き続き Julius "Mercy Baby" Mullins をヴォーカルとするこの曲の吹き込みにナダレ込んだと思われますので、Willie Taylor の piano、B.J. Brooks & Jack White の tenor sax、そして guitarが Frankie Lee Sims と思われます。オープニングのギターがいいですねえ。さすが Frankie Lee Sims!

ただしカンジンの Julius "Mercy Baby" Mullins の Biography は「発見」出来ませんでした。
ってゆうか、そのヘンの資料が無いブルースマンってケッコウいますからねえ。先に資料が揃ってるのからやっちゃった、みたいなとこがあって、次第に霧深い奥地(?)に踏み込んで来ちゃうのはいたしかたないワケでございます。
ま、彼について他に判ってることと言ったら Ric にも Pleadin' / Don't Lie to Me というシングルがあり、さらに自分自身のレーベル(!) Mercy Baby でも一枚シングルがあるらしいのですが、そちらはちょっと曲数・曲名も不明です。
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