Dark Road

Floyd Jones


2003-12-26 FRI.
Sunnyland Slim の、結構きらびやかなピアノに乗せて始まるユッタリとしたブルースですが、始まってスグ、多少ズッコケる方も多いのではないでしょうか。
つーのは、やたら多用される「裏声」に、でございます。う~む、やはりヨーロッパの山岳地帯を起源とする「ヨーデル」とは「違う」のでしょか?科学的な意味での発声学(?そんなガクモン自体あるかどうかも「?」なのですが)でブンセキするとアフリカ起源のものとの違いを指摘できるのかもしれませんね。

このある種、ヨーデル的な裏声での唱法は戦前までのブルース、とりわけカントリー系でよく遭遇いたしますが(あ、とは言っても、この Dark Road はバッチリ戦後の 1952 年の録音ですけどね)、ギターがエレクトリック化されて全体の音量が上がり、ヴォーカルもマイクを使うのが当たり前になっていったあたりから「裏声」が廃れていったのではないか?とヒソカに仮説をたてておりますがどんなもんでしょ?
初期のカーボン・マイクの場合、収録できる周波数の帯域が中音域をピークとして、その上下が急速にシェルヴィングしていたハズで、となると、裏声部分では「恐らく」充分な出力が得られなかったのではないか?と言うのがそのコンキョとなっております。
マイク無しのナマ歌ならば、その裏声部分が「強調」になっていたものが、マイクを通すと、逆に「遠ざかってしまう」ところがモンダイだったのじゃないか?ってね。
ま、これはワタクシの想像だけでございますので、引用される場合はひょっとしてフクロ叩きに遭う危険もございます。お取り扱いにはご注意くださいませ。

その Floyd Jones が生まれたのは 1917 年 7 月21日、Arkansas 州 Marianna です。10 代ですでにギターを弾き始めていたそうですが、あまり詳しいことは判りませんでした。
その彼が Chicago に出てきたのは 1940 年代の半ば、と言われております。いとこの Moody Jones、そして Baby Face Leroy Foster などと一緒に Maxwell Street で演奏をしてチップを稼ぎ、さらにそのヘンのクラブにも出演していたようです。
第 2 次世界大戦の終了によって「 Chicago Blues 」の隆盛がもたらされるのですが、彼はまさにその只中にいたことになります。まずハープの Snooky Pryor とともに 1947 年に Marvel にレコーディングを行いました。その翌年には 今日のブルースでもピアノ伴奏を務めている Sunnyland Slim と一緒に Tempo Tone に Hard Times を入れ、1952 年と 1953 年は JOB と Chess に、1955 年には Ain’t Times Hard を VeeJay に吹き込みました。

いつしかギターからベースに持ち換えて、その後もシカゴ・ブルース・シーンを支えたようですが、1979 年に、旧友たる Sunnyland Slim や Honeyboy Edwards、Big Walter Horton に Kansas City Red などと Earwig Records のセッションに参加しています。

彼の死は 1989 年12月19日のことでした。

1952 年、前述のとおりピアノ、Sunnyland Slim、サイド・ギターにいとこの Moody Jones、ドラムは Elgin Edmonds という顔ぶれで JOB に吹き込んだこの Dark Road は Testament の Master Of Modern Blues、他に、P-Vineの Robert Johnson Classics で聴くことが出来ます。
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