Knock On Wood

Eddie Floyd


2004-01-02 FRI.
いやぁウチのカミサンは出来たオンナでねえ、あたしゃシアワセもんですよ、ホント!なんてノロケて家に帰ってきたら「あんた!ちょっとコレなによ!」なんて楽器屋の請求書を突きつけられる・・・ 言ってるそばから、ってヤツですね。
ま、自慢とまでいかなくても、自分がいかに恵まれてるか、なんてえハナシを吹聴してるってえと「妖精」の妬みをかって、たちどころに逆の事態が起きるのだそうでございます。
ですから、ウッカリ自慢っぽいコトを言っちゃったときは「厄払い」に、スグに手近な木製品を「コツコツ」とノックするってえ習慣が「西洋」にはあるんだそうですよ。
それが Knock On Wood なのある!と。
この曲のバヤイも、自分にはもったいないような「いいオンナ」と愛し合うようになった、信じられねえ、っちゅー内容ですから、これがパーにならないように必死でそこらの木製品をコツコツやってることでございましょう。

ただし、一部では、縁起でもないことを誰かが言ったらノックする、と解釈しているようですが、それは恐らくキリスト教発生の前の民俗信仰で、魔除けとして「木に触る」(つまり Touch Wood )というものがあったので、それと混同しているのではないか?とも考えられます。
Knock On Wood の方は、アイルランドの古い伝承、幸運に出あったとき、木あるいは木製品をノックして、木の妖精に感謝する。が、アメリカに渡った時点で先の Touch Wood との摺合、あるいは混同が起きたのかもしれません。
本来のヨーロッパ系の伝承では、「感謝」が主体だったようなのですが、アメリカではそれに「厄除け」的な意味合いが加わったのでしょうか?

この Knock On Wood という曲については、Vanguard 時代の Buddy Guy のも好きなんですが、ここはオリジナルの Eddie Floyd を選ばせていただきましょ。
およそこの Knock On Wood、Ben E. King の「 Stand By Me 」やら Sam & Dave の「 Hold On 」同様、スーパーのワゴン・セールなんぞで売られてるソウル/ R&B『ベスト・セレクション』なんて CD には「必ず」と言ってよいほど収録されてますから、これを(曲名は知らなくても)聴いたことのあるひとってモノ凄い数になるんじゃないでしょか?
おまけに、この特徴あるベース・パターンやらヴォーカルのリフなど、そーとーにキャッチーですからねえ。この曲を始めたとたん客席がウォ~!っと盛り上がるのはまずマチガイないでしょ。

おかげでこの曲、いろんなミュージシャンに採り上げられてますよ。
先ほどの Buddy Guy もそーですが、Carla Thomas & Otis Redding、Albert King に Ike & Tina Turner、James Cotton そして Ella Fitzgerald!さらにあの David Bowie でしょ、Michael McDonald & Phoebe Snow、Georgie Fame、Melanie、Sir Douglas Quintet、Amii Stewart、the Spitballs、Boyz With Toyz、Jerome Richardson、Michael Bolton・・・
まだまだありそうですが、そこらおヒマな方、調べてみてくださいませ。

Edward Lee Floyd は Alabama 州 Montgomery で、1935 年( 1937 とする異説もある)6 月25日に生まれています。でも彼がそこにいたのはごく僅かな期間だったようで、なんと生後 6 週間くらいで、家族はすぐ Detroit に移ったもののようです。
彼のインタビューによれば、14 才のころ、Frankie Lyman and the Teenagers というグループを見て、自分もグループで歌ってみたくなったんだそうで。
彼には Robert West という(苗字がちゃうから母方の?)叔父さん( or 伯父さん?)がいて、当時はまだスタートしたばっかりの小さなレーベルに過ぎなかった Berry Gordy の Motown に張り合っていた二つのレーベル、Lupine と Flick を設立しておりました。その彼が作った(資料によっては Eddie Floyd を co-founder ─ 共同設立者か?でも co-pilot だと副操縦士なんだけど ─ としてますねえ)ヴォーカル・グループ、the Falcons に Eddie Floyd は参加します。

と、ここで The Falcons について少し。とは言っても、ワタクシこの手のヴォーカル・グループにはヨワいので(別に嫌いってことじゃありません)資料の受け売り、かつ、サイド・ストーリィと割り切っちゃって(?)複数の資料を突き合わせて整合性をチェックとかしておりません。この部分について興味がおありでしたら、ご自身でもケンキューしてみてくださいませ。
さて、その Falcons ですが、1955 年にスタートして、Robert West によって Mercury Records と契約したようなのですが、ケッキョク 1957 年までは、これといったヒットも無く、これじゃマズい(?)ってんで新たなリード・ヴォーカルとして Joe Stubbs( Four Tops の Levi Stubbs とは兄弟です。そ、原資料が英文なんでどっちゃが兄やら判りません)を招き入れ、これが良かったんでしょね、1959 年には大ヒット「You're So Fine 」を出しております。ただし Joe Stubbs はこの後 the Contours に参加するために Falcons を抜けています。そこで入れ替わるように入って来たのが、かの有名な Wilson Pickett でございました。スゴいでしょ?Knock On Wood の Eddie Floyd ばかりか Wilson Pickett まで在籍していたんですぜ。すんごいグループじゃん!しか~し、なんと、それだけではございませんのじゃ。そこにもーひとり有名人が揃うんですよ。
Wilson Pickett が入ったのが 1961 年ですが、最初 1956 年に the Five Scalders というグループにいたのが、1957 年に the Falcons に加わり、グループが解散した 1963 年まで在籍していた Mack Rice(なんでか「 Sir Mack Rice 」と「サー」付きで呼ばれてますねえ。なんで「サー」なんでしょ?そっちまで追い掛けてるヒマが無いよう)がもひとりの VIP。
え?知らん、て?でしょーねえ。あのねえ、このひとがあの「 Mustang Sally 」のオリジネイターなんだって!もちろん Wilson Pickett でみなさんご存知のことと思いますが、Mack Rice 自身の歌でも( Falcons 解散後の)1965 年に R&B チャートの 15 位にまで昇っておるのでございますよ。
その「 Mustang Sally 」ってのは、Ford Motor Co. から 1965 年にリリースされたスポーティなコンパクト・カー Ford Mustang と歩調を会わせるようにセールスを伸ばし、以来 Ford Motor Co. と Mack Rice は密接な結びつきのもとにあり、たとえば 2000 年の夏にアメリカ各地で公演した際には『 Mustang Sally 2000 Tour 』として、Ford Motor Co. の全面的なスポンサー・シップを得ておるのでございますよ。
それはさておき Falcons ですが、1962 年にはギタリストの Robert Ward 率いる Ohio Untouchables のバッキングを得て吹き込んだ「 I Found a Love 」が最後のヒットだったようです。1963 年には Wilson Pickett が独立し、それを機にグループは解散したのでした。
Robert West は the Fabulous Playboys というグループを抜擢し、「 Falcons 」の名を継がせましたがさしたる成功は収めなかったようです。
ところでその Falcons ですが、もうひとつの「縁」があったのでございますよ。
Ford からリリース(?)されていたセダンで FORD FALCON ゆうモデルが 1959 年からあったんですねえ。まさに FORD とは「ご縁」が!

とゆーワケで 1963 年には「栄光の」 the Falcons は解散してしまいます。Eddie Floyd は、Washington D.C.で Safice というレーベルをやっていた Al Bell のもとでソロでレコーディングをしたりしていたようですが、その Al Bell が Stax Records で働き始めたので、彼も Memphis に移り、ソングライター、そしてプロデューサーとしての仕事を開始しています。
この Memphis 行きの時期について、たいていの資料では 1965 年としているのですが、本人はインタビューで 1966 年である、と発言しています。しかし、それではその後の客観的な歴史的事実(なんつーと、めちゃオーヴァーやね)と「整合」しないんですよ。他にも 14 才の時ってのを 1959 年、なんて言ってますから(それだと 1945 年生まれじゃろうが!)このヒトの時間認識は多少マユツバなとこがおありのよーで・・・

ま、それはともかく、Carla Thomas━Memphis で 1942 年に生まれ、18 才で父の Rufus Thomas とレコーディング。Satellite label から「 Cause I Love You 」をリリースし、次いでソロ・シングル「 Gee Whiz ( Look at His Eyes 後に VeeJay )」がヒット。
ポップスと R&B の両チャートでトップ10入りという快挙をはたします。その Satellite が Stax になるわけですが、そこでは都合 6 枚のソロ・アルバムと Otis Redding とのデュエットで 1 枚をリリース)に「 Comfort Me 」などを提供していたのですが、いよいよ 1965 年、スティーヴ・クロッパーと一緒に作った Knock On Wood を録音しています。
これも本人のインタビューによると、本来は Otis Redding のために作られた曲で、彼はそのパイロット・トラックとして録音したらしいんですよ。でも、周囲が、う~ん、これ Otis にゃあ合わないんじゃない?なんて言うことでその件は沙汰止みになっちまったらしいです。ま、Otis Redding はケッキョク歌うことになっちゃうんですけど。

Knock On Wood は 1966 年に 28 位にまで昇りました。
同年、Wilson Pickett の「634-5789 」の共作者ともなっています。

さて、ここまでで、もー充分に長くなっちゃったんで Knock On Wood が出てきたとこまで、としちゃいます。ぜんぶやってたらまた連載になっちゃうけど、このひとはやっぱ Knock On Wood ですからねー!

あ、ついでに Stax についてヒトコト。
VeeJay と同様(ってあっちは夫婦でしたが)、Stax も二人の名前の合成です。
brother and sister とありますが、ここでは姉と弟、と判明しております。弟 Jim Stewart の Stewart、そして 12 才年上の姉 Estelle Axton の Axton、これで Stax っつーワケ。
1961 年に Memphis で開いた the Satellite Record Shop がすべての始まりです。
でも、詳しくはそのうちいずれ(ホントか?)。
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