Ted Jarrett & W.C."Red" Wortham

Nashville vanes


04-02-18 WED.
ええと、今日はまたちょと脱線して Nashville のミュージック・シーンに時おり顔を見せるふたりの男について。

最初はまず Ted Jarrett です。
Let's Twist ( Slow & Easy ) を Poncello Records のカタログに残しているミュージシャンでもありますが、ソングライターでプロデューサー、マネージャーでタレント・スカウト、しかも Champion、Poncello、Ref-O-Ree、Calvert、Cherokee、Valdot、Spar という数々のマイナー・レーベルを動かしていた重要人物でもあったのですが、ミュージシャンと違って、あまり研究の対象にはならないらしく、あちこちの資料に断片的に登場するのみで、全体像があまりよく見えてこないんですが、仕方ないんで、そういった断片だけでも少しっつ集めてみました。

彼の作品で最も成功したものは、1956年に彼が the Skylarks から「引っこ抜いて」自らの Calvert レーベルに録音させた Gene Allison(1934年 8月29日に Tennessee 州 Nashville で生まれ、ソロとして独立する前には、ゴスペル・グループの the Fairfield Four と the Skylarks で数年を過ごしています)の 1957年に吹き込まれた You Can Make It If You Try でしょう。この曲は後に Chicago の Vee-Jay Records の手に渡り、リリースされるや R&B チャートの 3位、及びポップスチャートのトップ 40入り、というヒットを果たしています。と、ここで、まったくの蛇足ながら、Sly & The Family Stone にも「完全に」同じタイトルのナンバーがあるのですが、そちらはモチロン Sylvester Stewart(つまりスライ・ストーン)の手になる「まったく」別な曲でございます。

1950年代の初めには、Excello の Ernie Young は自分のショップ、Ernie's Record Mart のために Roscoe Shelton や Arthur Gunter のレコーディングを開始していますが、一方の Ted Jarrett は Republic などの小さいレーベルに録音を始めています。そして、いまや Excello 経由で Ted Jarrett の集めた Nashville のコアな R&B、Earl Gaines や Gene Allison、Larry Birdsong に、昨日の Shy Guy Douglas などの音源を聴くことができるようになっったのですから面白いですね。
ただ、Ernie Young ほどのアクは無かったと思いますが。

1950年代の末には、これも Nashville の Charles Walker を自身のレーベル Champion に初吹き込み( Slave To Love、名義は Charles Walker & the Daffodils。でも、この Daffodils ってのは実在しないグループで、実際には同レーベルのミュージシャン、the Kinglets と Larry Birdsong なのだそう)させていますが、Charles Walker は 1962年、Chicago の Chess Records のレコーディング・アーティストとなりました。

また Poncello に吹き込んでいた Herbert Hunter のプロデュースも手がけ、I've Gotta Sit Down And Get A Hold Of Myself
Don't Pity Me、I'm So Satisfied
Make Me Know
Diddlin' & Daddlin'
Slow Twistin'
I'll Hold You In My Heart
La La La La
Your Cheating Heart(これってあの名曲と同じなのかなあ?)
I Can't Help It If I'm Still In Love With You
Doctor Feelgood
Happy Go Lucky
Push Away From The Table
Isn't It Wonderful To Dream

がカタログに残っています。

さて、もうひとりは、昨日の Shy Guy Douglas とこで登場してた Bullet / Sur-Speed と Delta Records の W.C."Red" Wortham です。
1940年代晩期まで Bullet Records にいたようですが、彼は 1950年代の中頃に Delta レーベルを引継ぎ、さらに独立したプロモーター、またプロデューサーとしてレーベルを運営しておりました。
その彼が 1950年代末には、いわば休眠していた Bullet レーベルを自分の Sur-Speed Records とともに甦らせ、さらに Nashville 周辺の超マイナー・レーベルの原盤を買い集め、カタログを充実させてゆきました。
その「集めた」原盤はいずれも「レア」なものばかりで、彼のような存在がいなければ、そのまま歴史の闇の中に消えていってしまってたことでしょう。そのカタログに名を連ねているのは

Levert Allison
Big C. & The Wizards
Larry Birdsong
Sherman Bratcher
Johnny Bragg
The Breakaway Five
The Cheques
John Colbert
The Dixie Travelers
Shy Guy Douglas
Robert Garrett
Willie Gunn
Thomas Henry
Doug Lane & The Soul Spinners
Art Mayes
The Music City 5
Mayf Nutter
Reverand H.L. Parker
The Reverand Dr. Picket
Rubin Russell & The Tempo Rhythms
The Rogues
The Sacred Four
George Williams Revue
Ruth Zion(以上 Sur-Speed Records )

The Big Three Trio
Dusty Brooks
Tom Douglas(あ、これ Shy Guy Douglas のことね)
The Fairfield Four
Slim Lay
Rhythm Rockers
Ernestine Woodward( Delta Records )⋯

でも、この W.C."Red" Wortham もやはり Biography が見つからず、ドコの生まれかも判らないのですが、それでも Nashville のレコード業界に重要なプレゼンスを持っているようです。

Ted Jarrett と W.C."Red" Wortham のふたり、確かに歴史の表層で光輝を放つ、というタイプではないかもしれませんが、このような Enthusiast が Nashville の底辺(?)を浚ってくれていたおかげで、むしろバック・グラウンドが鮮明に見えてくるような気がしています。
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