You Don't Exist Any More

Lil' Ed & the Blues Imperials


2004-03-11 THU.
1971年に、あの Hound Dog Taylor and the HouseRockers のレコードを作りたい、という一心でAlligator Records をおっぱじめた Bruce Iglauer によれば、1980年代の後半に向かっての戦略として、まだ無名だが、将来の戦力になり得るタレントを発掘しようとして集めたグループやミュージシャンの中にこの Lil' Ed Williams がいたそうです。
その日三つのセッションを予定していた最後が彼らで、スタジオでのセッション経験が無いらしく、最初はダイジョブかいな?くらいに思ってたのが、いざ始めてみたら「荒削り」ながら光るものがあったため、スタジオの時間を延長してどんどんやらせたところ、次第に調子が上がって来たので、一気にアルバム一枚分プラス、コンピレーションに収録する分まで、まとめておよそ 30曲を 3時間で録音し切ったそうです。

Elmore 系のイントロ(音的にはちょい Hound Dog 入ってるかも)から始まる腰の据わったブーギは、やや勢いだけで突っ走ってるみたいなとこもありますが、でもヴォーカルは意外とステディに歌い込んでて好感がもてます。どーやらワタクシがあまり評価してない J. B. Hutto は彼の叔父にあたるらしいんですが、この甥のほうがいいなあ。
Chicago のウエスト・サイドで 1955年 4月 4日に生まれた Ed Williams(たぶん正しいフル・ネームは Edward ってんじゃないかと思うんですが)はその叔父をはじめとしたブルースマンたちの中で育ったおかげか、12才ですでにギター(おまけにドラム&ベースも、らしい)をこなしていたそうでございます。Half Brother って言うから異父兄弟あるいは異母兄弟と思われる Pookie ってのと一緒だったらしいですが、1975年にはともに Blues Imperials を作っています。
The Blues Imperials はウエスト・サイドのクラブ Big Duke's Blue Flame で初のライヴを行い 6ドルのギャラを分けあったそうです。その後もウエスト・サイドのクラブで軒並み演奏していたようですが、それだけで喰っていけるほどの収入とはならず、昼の仕事をヤメるワケにはいかなかったのでしょうね。
Ed はカー・ウォッシュで、Pookie はスクール・バスのドライヴァーを勤めながら毎晩クラブに出演していたのですが、そんな彼らの存在が Alligator Records の Bruce Iglauer の耳にまで届いたのが「転機」となったものです。

その当時 Bruce Iglauer は地元で新しい才能を発掘して The New Bluebloods というコンピレーション・アルバムにまとめることを考えていたのですが、その中に the Blues Imperials も含まれることになりました。
どうやら、実際に彼らのライヴも眼にしたことがあるらしく、スライド・ギターには一目おいたようですが、実際のレコーディングで、そのバンドがどれだけのポテンシャルを発揮できるか?については多少の疑問も持ってはいたようです。しかし、Hound Dog Taylor のために Alligator を興したことでも判るとおり、根っからのスライド・ギター好きらしい Bruce Iglauer は「ダメもと」くらいの軽いキモチで彼らをスタジオに呼んだようで、オムニバスに彩りを添えてくれれば充分、くらいの期待だったんじゃないでしょか。
しかし、実際に 1986年の 1月、3つのバンドに 4時間ずつ、と12時間連続でスタジオをおさえ、前ふたつは滞り無く終わり、そこに現れた Lil' Ed and the Blues Imperials は、初めてスタジオってものを見たらしく、しばらくは物珍しそうにしてたようですが、いざ音を出させてみたところ、Bruce Iglauer は、彼らのポテンシャルに気付いたようで、スタジオではあっても、一種のライヴの雰囲気で演らせよう、と音量も演奏の順番も好きなようにさせてみたそうです。The Blues Imperials の演奏はどんどん尻上がりに調子が出て行き、パーティション・グラスを挟んで対峙していた Bruce Iglauer ばかりか、レコーディング・エンジニア、立ち会っていた Alligator の社員もミキシング・ルームで踊り始めていた、といいますから一種の「お祭り騒ぎ」的状況の中で録音は進行したようで、結局コンピレーション用のナンバーどころか、アルバムまるごと一枚分プラス・アルファのテイクを録ることが出来たのでした。
この時のテイクから選ばれた 12曲が彼らのデビュー・アルバム Roughhousin' となり、今日のブルース You Don't Exist Any More もこのアルバムに収録されたナンバーでございます。
The Blues Imperials は、Lil' Ed のギターとヴォーカル、ベースに James "Pookie" Young、ドラムには Louis Henderson、そしてサイドには白人のギター、Dave Weld という構成です。

この Roughhousin'の後には 1989年の Chicken, Gravy And Biscuits、1992年の ...What You See Is What You Get(ジャケットからすると白人のサックス・プレーヤーが加わってるみたい)、1999年の Get Wild! 、2002年の Heads Up! があります。詳しくは↓
http://alligator.com/store/artist.cfm?ArtistID=013
でどうぞ。
permalink No.686

Search Form