You Don't Love Me

Magic Sam


2004-03-16 TUE.
この曲を初めて聴いたのは Junior Wells と Buddy Guy の演奏です。Buddy Guy のストラトのトーンが良くて、なんとかあの音を、と思っていた時期でございますね。
向こうは Stratocaster、こっちは Telecaster ですからハナから出るワケぁ無いんですが、ある日、ストラト用の 5ポジション・スイッチを入手したもんだから、それを利用して、フロントとリアの合成の際の位相を順相と逆相の切り替えが可能なようにしたら、かなり Buddy Guy に近い音が出て、ま、考えてみれば、この時っからやたらピック・アップの位相をいじくりまわす「悪の道」に染まってしまったように思います。

で、次に聴いたのが、ちょっとコンランしておりまして、Eddie Taylor の Ready For Eddie に収録されてたヤツか、あるいは Arhoolie が Harry Oster の Folk-Lyric レーベルのコレクションをまとめた Country Negro Jam Session(しっかしまあ、なんっちゅー無神経なタイトルだこと!まだ差別用語、なんてえ概念に気付きもしなかった「脳天気」な時代のなせるワザなのでしょうか?)に収録されたアコースティック・ギターによるユニークなリフをベースにしたヴァージョンのほうだったかもしれません。

この二つはエレクトリック&アコースティック(いまで言う「アン・プラグド」なんてえんじゃなく、ホントに「ナマ」なのじゃ)という違い以上に、そのリフの扱い、基本的なテンポそのものが「あまりに」違うんで、ワタクシのアタマの中でまったく別個の曲として存在しておりまして、そのせいか、どっちを先に聴いたのか?ってのが判らないんですよ。オリジナルの録音年次は Arhoolie が古いに決まってるんですが。
その Arhoolie の You Don't Love Me は、とめごろおさんと二人でやるアコースティック・ブルース・デュオでも採り上げておりまして、そのなかなかユニークな仕立てからケッコー「やり甲斐」のあるスタイルとなってます。

そんな時、地下で秘かに流通しておった Magic Sam の Ann Arbor でのライヴのテープがヒロサキくんだりにまで流れつき、そのアジマスの狂った音でようやく聴きとれる彼のライヴに「ただもんじゃない」ハクリョクを嗅ぎとったものです。特に Sweet Home Chicago は衝撃的でしたが、You Don't Love Me の、なんだか 2倍速みたいな(あるいは 3歩進んで 2歩下がるみたいな?)独特なリフにも強いインパクトを受けました。個人的にはこのリフが好きなんですが、でも、これでやっちゃうとモロ「コピー」になっちゃいますからねえ。やはり、自分でやるときは Eddie Taylor や Buddy Guy もやってるスタンダードなスタイルで。

ところでこの You Don't Love Me ですが、忘れちゃならないのはその最初のレコーディング・アーティスト、Willie Cobbs です。
Willie Cobbs は 1932年 7月15日に、当時は米作地帯でもあった Arkansas 州の Smale で生まれています。まずゴスペルに関わることで彼の音楽生活はスタートしたのでしょう。1947年には Chicago に移って Little Walter と出会い、その教えを受けて 1950年代の初頭にはどうやらブルース・ハープのキャリアをスタートさせていたものと思われます。その後、1952年から 1956年までは軍務についていた、ともいわれますが、資料によってはThe National Guardとしておるものがあり、ちょっと調べてみたのですが、それがなにを指すのかは不明でした。国境警備隊( The Coast Guard なら沿岸警備隊なんですが・・・)なんてえ存在もあましアメリカじゃ聞いたこと無いし。
1958年には Chicago に戻り、音楽の世界に入っています。1961年の You Don't Love Me のヒットが彼のブルース界でのプレゼンスを大きく変えました。
その後も数々のヒットを出してはいますが、後半生はむしろクラブ・オーナーや、バーベキュー・レストランの経営者として生きているようなところがありました。そんな彼が 1991年に Rooster Records から、彼にとって「初めての」アルバム Down To Earth を送り出しています。
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