A Fool For You

Valerie Wellington


2004-05-03 MON.
Million Dollar $ecret がどちらかと言えば「正攻法」で Elmore James のスタイルの Independent Blues や、ウルフで印象的な Smokestack Lightning(彼女のこれがまたスゴく「いい!」)など、バリバリの「ブルースぶり」を発揮していて、もちろん、それはそれで悪くはないのだけれど(ザンネンながら別なアルバム Life In The Big City はまだ聴いたことがおまへん)、なにか、このひとにはもっと別なポテンシャルがあるのではないか?っちゅう気がしておりました。

しかるに、昨日、いいお天気に誘われて市内のおサンポに出かけたおりに、CD の(あ、アナログ・ディスクもありましたが)中古市ってのに顔を出してみたところ、Alligator の V/A で、例の The New Bluebloods( ALCD 7707 )があるじゃあ~りませんか!
そ、先日ただにいさんからお尋ねがあった際に、検索で出てきた Valerie Wellington が一曲だけ収録されてるコンピレーションでございます。
で、とーぜん Million Dollar $ecret には「収録されていない」この曲が聴けるワケですからこれは「買い」(ダレだ?それって中古で安かったからだろ、なんて言ってるのは?「そのと~りっ!」)です。

しょーじき一曲目の Kinsey Report 他にも「いい」曲がかなり入っておりましたが、この Valerie Wellington、Million Dollar $ecret で感じた「このひとには別な~」の、まさにその傾向のナンバーが収録されてたんですねえ。
あ、もちろん、それはワタクシ個人の印象でして、「いやいや、彼女のモロ Chicago スタイルのブーギがいいのじゃ!」なんて方もおられることと思いますが。

この A Fool For You はワタクシの「お好き」な例の構成、Ain't Nobody Business や、Night Life、Please Send Me Someone To Love、あるいは Guilty 、Same Old Blues 的なコード・プログレッションの曲で、いかにも American Conservatory of Music で 3年間クラシックのオペラ唱法を学んだらしい、朗々たる
I know, You told me, such a long time ago・・・と始まるスローなナンバーは、意外と淡々と進み、でも、ヴォーカルに込められた「強さ・しなやかさ」がそれだけにジンワリと効いてくるよな気がいたします。
バックは、正当派のギターで盛りたてる John Duich に、とってもキュートな、きらめく色彩を散らすがごとき(えどすりちゃまのとこでお馴染みの)有吉須美人のピアノもいいですね。
ベースは Nick Charles、ドラムが Brady Williams。

この Valerie Eileen Hall は Chicago で 1959年11月14日に生まれています。
オペラ歌手を目指して(とした資料が多いですが、その 3年間ってのが何歳の時なのかは「?」なまま)前述した Chicago の American Conservatory of Music でトレーニングを積んだようでございます。その後のことだとは思うのですが、15才でピアノを弾くようになっていた彼女は Lee "Shot" Williams*と出会い、ブルースへと軌道を修正したのかもしれません。

Lee "Shot" Williams ─ギターの Little Smokey Smothers と一緒に育ち、さらに周囲にはミュージシャンが大勢いたせいで、デルタのジューク・ジョイントに出入りするようになり、そこでブルースに導かれた、とされています。1954年には Detroit、1958年には Chicago へと移り、前述の Little Smokey Smothers と活動を開始しました。この時期に Magic Sam やウルフともやったことがあるようで、1960年代初頭には Magic Sam のバンドのヴォーカリストだったこともあるそうです。
初吹き込みは 1962年の Hello Baby と I'm Trying を Foxy レーベルにしたもので、続いて King-Federal や Palos、Gamma、Shama、Tchula などの他のレーベルにも録音をしており、1964年の?? Welcome To The Club、1969年の I Like Your Style などというヒットも出しています。また 1960年代の後半は Earl Hooker と行動をともにしていました。
その彼が Valerie に出会ったのは自身のアルバム( 1977年 Country Disco Roots )が出る前の 1974年あたりでしょう。


やがて Valerie(そー言えば、いつ Eileen Hall から Wellington になったんでしょ?そこら、どの資料でも発見できず「?」のまま)の存在は Chicago でも次第に知られるようになり、1984年には彼女のデビュー・アルバムとなった Million Dollar $ecret が出て、ローカルな存在から、一躍全国的な(多少のタイム・ラグはあるけど「世界的」な、と言ってもいいかも?)注目を浴びることとなったのです。
ところで、そのアルバムが出る直前の彼女及びそのバンド御一行様の、読んでるこっちも「凍えそうな」キョーフのツアー・リポート「Refrigerated Road Warriors 」が http://www.he.net/~blues/No_40/twist.html で読めます。ケッコー笑えまっせ(英文。これを Web 翻訳にツッコむとたぶんもっと笑えるのかも?別なイミで、ね)。

その 3年後、彼女は Alligator のコンピレーション・アルバム The New Bluebloods のために一曲を録音しているのですが、その曲がこの A Fool For You なのです。以後、日本にも何度か来ているのですが、その時期のワタシは、ちょーど余裕の無かった時期で、おそらくブルースからかなり遠い位置におり、その存在すら知らない、当然来日情報にも触れることの無い日々でございました。ま、仕方ないんですがね。
1992年には Life In The Big City をリリース。またこの年には TV ショウ Blues Goin' On にも出演、その時の録画は Oprah Winfrey's Harpo という媒体が保有しているらしいのですが、そのサプライ面は不明です。

そして 1993年(一部のサイトで 1991年に死亡、としてるのを見かけましたが、じゃあ Blues Goin' On に出てたのは「亡霊」?) 1 月 2 日、Illinois 州 Maywood で、脳動脈瘤破裂に伴う「くも膜下出血」で、わずか 33 才の若さで急死してしまいました。
彼女の墓は Illinois 州 Worth の Restvale Cemetery にあり、彼女の名前の上には "Beloved Daughter" の文字が刻まれています。
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