One More Chance

Michael Burks


2004-05-22 SAT.



この曲が収録されているアルバム、I Smell Smoke( Alligator ALCD-4892 )のジャケットではナチュラル・フィニッシュ(でも、コリーナ材じゃなさそう。ボディはおそらくマホガニー・バックにメイプル・トップのラミネートで、そうなると当然エッジにはバインディングを回し、でも、Les Paul じゃないんでボディ表面はカンゼンにフラット!)の Gibson Flying V(指板はナトーか?)を絞り上げている Michael Burks ですが、この曲でもそのギターの音は「いかにも」な Gibson 系のハムバッキング・サウンドで、まさに最近の Powerhouse Blues と言われる、インテンシティのあるビートに乗せて、飽和感のあるギターが歌いまくる、っちゅう古き佳き時代のシカゴ・ブルースからすっと、これ、ロックじゃん!なんて言われそうなインパクトのあるギターとなっております。

でも、このヒト、他にもチェリー・レッドのフライング V に、ちょとキモチ悪いグラデーション仕上げにも見えるサンバースト(?)のフライング V も使ってますから、そのどっちかかもしれません。
ブラック・ボディに黒御影石みたいなミョーな模様のピック・ガードでメイプル・ネックっちゅう Fender Stratocaster で、そのヘンにあったガラスのコップでスライドかましてるシーンもありましたから、フライング V だけじゃないようですが、この曲も(どれにしろ)フライング V であろう、と思われます。
ただし、1999 年リリースの From The Inside Out(未聴)のジャケットではチェリー・レッドで Bigsby トレモロ・ユニット付きの Gibson ES 335TD(ドット・ポジション)も弾いているんですが、タブンこのストイックな「歪み」(?)はソリッド・ボディじゃないか?っちゅう気がいたしますのですよ。ま、ゼッタイとは言い切れませんが。

ま、なにはともあれ、Vasti Jackson のトレブリィなサイド・カッティングに Ernest Williamson のハモンドが滑りこんで来て、そこで Steve Potts のドラムがサクレツ(?)し、そこに斬り込んで来る Michael Burks のスクリュー気味のキラー・パンチ、ネがロックからブルースになだれ込んできたワタクシには実にココロヨいのでございますよん(ベースは David Smith )。
ヴォーカルでもブレイクをウマく使ってメリハリのある構成にしてるあたり、なかなかやりますねえ。ここはひとつウルチャいことを言わず、このナイフを突きつけて来るよなプレゼンスのあるギターを無条件に浴びてみてくださいませ。
隣近所との「お付き合い」っちゅうもんがありますから、なかなか出来ないかもしれませんが、これをお聴きになるときは、ゼヒとも、ユルされる最大の音量でお楽しみくださいませ(てなススメ方をするからヨケーにコンサヴァなブルース・マニアには敬遠されちゃうんだな、きっと)。

1959 年、Michael Burks がまだわずか 2 才のときに、その当時は( 1953 年から) Milwaukee の製鉄所で働いていた父の Frederick に、小さいながらも実際に弾くことが出来る「ちびギター」を買ってもらいました。( Frederick Burks は Milwaukee 時代、ブルース・バンドでベースを弾いていたらしいです)その父がつきっきりで教えた甲斐があって、父のマネをしてベ-ス・ラインを弾くなど、ものスゴい勢いで上達!(また彼が 5 才のころには、「俺が仕事から帰ってくるまでに、この曲をマスター出来てたら 1 ドルやろう」というふうに宿題を出していったみたいで、こりゃカンゼンに英才教育ですね)なんと 6 才の時には一時里帰りした Arkansas 州の田舎で初ギグもこなしたそうですからスゴい!

しかし、その父が 1970 年代の初めに製鉄所での事故で手を怪我してしまい、仕事をリストラされたのを機会に一家は Milwaukee に行く前に住んでいた由縁の地、Arkansas 州 Camden に移ります。
アコースティックでデルタ・ブルースを弾き語りしていた、と言う祖父の Joe Burks(多才なひとで、床屋、大工、航空機整備士でもあったと!)をはじめ、家族が協力して Camden に the Bradley Ferry Country Club という名前のキャパおよそ 300、というジューク・ジョイントを「自力で(!)」作りました。
Michael はとーぜんこの店に木曜から土曜までの毎晩出演して、いつしかハウス・バンドのような形態をとるようになり、Johnny Taylor や O.V.Wright などの単身で訪れるシンガーのバッキングも務めるようになりました。

ただし、この the Bradley Ferry Country Club は 1980 年代半ばで閉めてしまうこととなり、そこからは、お馴染みの Day Job( Lockheed-Martin )の技術者としてミサイル部品の組み立て作業に従事していたそうですが、1994 年にはやはりムシがうずいて(?)新しいバンドを結成し、地元のクラブや周辺のフェスティヴァルに参加するようになりました。
やがて、彼のアクトは次第に知られて行き、時にはフロリダから、またあるときはキャリフォルニアからもオファーが来るようになります。
さいわい上司がブルース好きだったこともあって、ツアーに必要な休暇を与えてくれた、といいます。

ところで、ある資料によれば、1990 年代中頃に彼が Atlanta に足を伸ばし、そこで Chick Willis( Robert L.Willis、1934 年 9 月29日 Georgia 州 Cabiness 生まれ。1972 年の最大のヒット Stoop Down Baby, Let's Your Daddy See で知られる。1928 年 1 月31日 Georgia 州 Atlanta 生まれの Chuck Willis のいとこで、その 1954 年のツアーに運転手、シンガーかつギタリストとして加わる。1956 年、初レコーディング)とジャム・セッションを持ったことで、さらにブルースに傾倒してゆくようになった。としているものがあります。
もちろん、そのような外的なシゲキを否定するワケではありませんが、むしろ、祖父や父の影響の方が大きいのでは?っちゅう気がしますねえ、ワタシは。

ま、それはともかくとして、バンドでの活動も順調になってきた Michael Burks は、1997 年にインディー・レーベルからついに念願の初アルバム、From the Inside Out をリリースし、それは Blues Beat Magazine の Best Recordings of the Year に、Michael Burks 自身も Living Blues の the Best Debuts of the Year に、Blues Beat Magazine では the Newcomer Artist of the Year に選定されました(このジャケットでは Gibson ES 335TD を構えてます)。
さらに 2000 年の Chicago Blues Festival に出演し、そこで彼を見た Alligator の Bruce Iglauer はすぐに彼を獲得し、その結果リリースされたのが Make It Rain で、これにより彼の存在は全国的に認知されるようになります。

そして 2003 年にリリースされた最新のアルバムがこの I Smell Smoke( Alligator ALCD-4892 )で、「やや単調」とか「もうひとひねり欲しい」なんて声もありますが、まだ 50 前ですからね。さらに精進を期待いたしましょ。

え?ワタシ?このままでもジューブン好きです!
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