I Got To Move

Homesick James


2004-07-16 FRI.

1973年 9月 9日の Ann Arbor Blues & Jazz Festival のステージの録音です。

意外とクリーンなトーンの「お上品な」スライドで始まるこの I Got To Move、Carey Bell のハープも利いてますが、Homesick James 自身のスライドも過不足無く、多少「地味」ながら、ユッタリとマイ・ペースにステディなブーギを進めて行きます。
ヴォーカルのキーはちょっと高めですが、ファルセットまでは行っておりません。
そして、とても自然な発声で、ミョーなテンションがかかってないのがいいんですよ。
もうそこには Elmore の呪縛は殆ど残っていないように思えます。

ところで、はっきり言って「この Homesick James がイチバン!」なんて熱烈なファンには一度も出会ったことは無いんですが、まさか皆無ということはないでしょね?
「あの」 Jimmy Dawkins にだって熱心なファン・サイトがあるくらいですから(えどすりちゃまが教えてくれました。見てビックリ!)、もしかするとどっかにセンプクしてるのかも?
でもねえ、ジミー君は良くも悪くも個性があるんですが、先日の Honeyboy Edwards 同様、この Homesick James はんも、そこまで熱中させる(?)ツヨい個性が無いよに思うんですよ。だからダメ、ってことじゃなくて、それがまたこのひとの持ち味なんでしょが。

とゆうワケで、あまり憎まれたり、嫌われることも無いかわり、彼のためならどんなことでもするぜ!みたいなファンも(たぶん)いないと思う⋯というより想像しにくい。
なんてシツレイなことばかり書いておりますが、それでも、彼が 1940 年代にデルタから Chicago に移り、エレクトリック化されてゆくブルースを「共に歩んだ生き証人」であることも確かでございます。
ただ、その点のみがやや強調され過ぎてて、「彼自身のブルース」っちゅうものへの「愛着」には結びついていかないみたいですがね。

James Williamson( alt; John William Henderson!)は 1914 年 5 月 3 日、Tennessee 州の Memphis からおよそ 50km ほど東に位置する( 2000 年の国勢調査では人口 2,500 程度、黒人の比率が 40%くらいの)町 Somerville で生まれています。
どうやら父親がドラマーだった、ということで、早くから音楽との縁があったんでしょね。
14 才ですでに人前で演奏できるようになっていたらしく、すでにポケット・ナイフを使ったスライドに馴染んでいたようです。
1932 年には Chicago に移り、すぐに活動を開始したようですが、一説では the Dusters というグループで Snooky Pryor や Baby Face Leroy Foster なども加え、時々はツアーにも出ていた、ということです。
そこでは Albert King がドラムだった、ってのは昨年10月23日の Jimmy Reed とこにも出てきてましたよね。ただ、Albert King が Chicago に出て来たのが 1953 年のことですから、ちょっと後のことになるんじゃないでしょか。

1955 年から 1963 年までの彼は Elmore James(いとこだ、と主張してますが)のバンドでサイドを務めていたのですが、彼によれば、Elmore にギターを買ってやったのも、ギターの弾き方を教えてやったのも「自分だ」っちゅうことらしいのですが、その割りには彼自身の演奏は「やや」地味なの、そこら「お人柄」ってもんでしょうか?もちろん Elmore 側の資料では、そういった記述には「いまだに」一度も遭遇してはおりません⋯
彼自身の初吹き込みは 1952 年の Lonesome Ole Train なのですが、しかし、彼の代表作と言える吹き込みは 1962 年の USA へのものでしょう。
しかし 1963 年に偉大なる(なんて形容詞をワタシが使うのは他にはいません) Elmore James が死んでしまった後はそのスタイルを継ぐか?とも期待されたようですが、それはムリっちゅうもの。Elmore も Hound Dog も、まさに One and Only の存在ですからね。いくら傍にいたからと言って、代わりを務めることは出来ませんよ。

やがて、彼の評価も落ちつき、彼が彼として受け容れられるようになって来るのは、Prestige Records に吹き込むようになり、ヨーロッパ・ツアー( 1973 年)の際にイギリスの Birmingham のレーベル Big Bear に Snooky Pryor と一緒に吹き込んだあたりからじゃないでしょうか。
Big Bear からは 1976 年にも Home Sweet Homesick がリリースされています。23:15

90才になっても、日曜の Rosa'sでアコースティックでブルースを演奏していたそうです。

その彼が死んだのは 2006 年12月13日、23:15、Missouri 州 Springfield の自宅で、でした。
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