Salty Bread

鬼ころし Blues Band


2004-07-26 MON.


昨年12月13日の Golden Cups の Mojo Workin' ってのがこの BLUES 日記で初めて採り上げられた日本のバンドに思えるかもしれませんが、あれってセッションの話のついでに出て来ただけで、彼らのナンバーをテーマにしたものではございませんでした。
その意味では今日のが「ニホンのブルースバンドの固有の曲」として初登場でしょね。

で、この「鬼ころし」ですが、かって Cavern Blues Band のドラマーとして活躍してくれた安在にゃんた龍朗が在籍する横浜のブルース・バンド (それも正攻法の!)なのだ。

さて、日本語で歌うブルース・バンドとくると、「おちゃらけ」が入ってるほーが聴いてもらいやすい、ってことなのか、お笑いの要素を盛り込む場合がけっこー多いんですが、この BCRB-0001 BLUE HEAT では、真っ正面から、マジな歌詞で勝負をかけてます。

確か⋯1970 年代だったと思いましたが、Bourbon Street Band とかってのが、同じように、標準語でのストレートなブルースってのにチャレンジしてて、それなりのプレゼンスはあったんですが、やはり「笑かす」ブルースほどには支持されてはいなかった、っちゅう歴史(?)もありましたね。
ONI KOROSHI のブルースは、その Bourbon Street Band みたいな方向とは違うんですが、やはり「ホンモノのブルースしか聴かん!」なんてえラジカルな層には、その日本語歌詞が「ケチ」のつけどころ(?)になっちゃうといけないので、本日はインストのナンバーをセレクトしておきましょ。

しかし、この「日本語で唄うブルース」っての、実は難しいとこでして、オリジナルのブーギを日本語で作ったこともあるのですが、それはやはり心理的な抵抗感がネックとなりました。
自分の母国語ではないブルースを聴いているこっちの耳には、「歌詞の意味」よりは、むしろトータルな「サウンド」として慣れているために、日本語の歌詞では、付随してくる意味の世界が「論理腦(?)」に侵入してきて、それに囚われてしまうんですよ。
ケッキョク、それによる「重さ」、「煩わしさ」を逃れるために「おちゃらけ」に走ったり、ワザと方言を使うことで故意に距離感を作ったり、という手を使うんでしょうが、この ONI KOROSHIは、そのへんを逃げずに真っ向から斬り込んできます。
ただし、それをすべてのひとが受け容れてくれるかどうかは別な問題なのでしょうね⋯
というワケでインストを、てな流れに見えますが、実は他にもファクターがありまして、それはこの曲だけは(一曲まるごとまでは行かないけど)ネットで「試聴できるから」なのですよ(と書い たのですが現在は YOUTUBE に何曲も上がってます)。

この Salty Bread ですが、いやあ、なんたって、にゃんたのドラムがいい!
その軽やかな「疾走感」と鮮やかなフィル・イン⋯やはりブルースのドラムはこうでなくっちゃ。というワタクシめの理想とする「リズムの在り方」を具現しとりますねえ(あ、でもネットで のサンプルは彼のドラム・ソロが始まる直前でフェード・アウトしちゃいますが)。
そのリズムの上で「唄う」ハープがまたムリの無いナチュラルなブロウに見せて、これまたなかなかに凝ったメロディ・ラインを描いて行きます。

庄司厚人のギターについては、手を抜かない仕事、って印象ですねえ。ギターはー本だけなんでサイド切ったりリフを入れたり、オブリを放り込んだり、と忙しくって案外このバンドでイチバン大変なポジションなのかもしれません。
なんたって、ワタクシの場合、バンド時代も、最近のセッションでも必ず他にもギターがいて(それも二人はザラで、ときには他に四人、なんてえこともあったなあ)、あまし苦労したことがないワタクシなんぞにしてみたら、このギターが次々と曲の進行につれていろんなことやってるの聴いてるだけで、尊敬してしまいます。
どうやら大阪の出身で 8・8 Rock Day の決勝戦まで進出し、1983 年に上京して音楽活動に入り、1993 年 にはハープの鈴木司と「鬼ころし」を結成しています。
2001 年にはアメリカで King BiscuitTime にも出演してるし、その翌年には Otis Clay のレコーディングにも参加してるなど、ケタ違いの「本格派」でございます。
実際、ギターが一本だけだと、「やること」多いんですよね一。
ワタクシなんぞ、タマにセッションなんかで、まだメンツが揃わないから、ギター・ベース・ドラムのトリオでとりあえず始めちゃお、なんてシーンを経験することもあるんですが、ネがロック出身なもんで、サイド切りつつもササっとスキを見て(?)オブリ入れて、ソロだと、これまた逆にコード・ワークも入れてく、なんて芸当が出来ないのよねー。
どーもワタクシのバヤイ、リードはリード、バックはバック、っつー「誤った」バンド観が植えつけられているせいか、リードとバックじゃ音量もト-ンもプレゼンスも、そしてなにより「ココロ構え」がちゃうから、その二つを交互に組み合わせるなんて「ムリじゃん!」てな発想になっちゃうんですよ。
だから Magic Sam の Ann Arbor の Sweet Home Chicago なんて、マチャオ君がコピーし始めたんで、こっちも面白がってやってみたりはしたんですが、どしても、ブーギを刻んでるとことリフ入れるとこの変わり目(その逆も!)で「ダンゼツ」しちゃいます。
ま、あたしゃあハナっからMagic Sam じゃないんですから、Magic Sam にゃなれない、とは思ってましたが、それが人格・個性のモンダイ以前に、そこらへんのスキルの差でもある、と判ったときにはいささかガックリ来ましたけど。
でも、考えようによっちゃあ、ドラムやベースが入ってる、って時点で、すでに「弾き語り」からのプログレッションてのが「分担」へと志向してるワケですから、さらにもう一本ギターを加えて分業化したって別にいいじゃん、つーことでして、ワタクシは自分ではバンド・ブルースを「ひたすら」志向することに決めたのでございます。
ま、そんなこんなで、このギターのように、苦もなくそれをこなしてるのを聴くと、やはり尊歌しちゃいますねえ。スゴい!

ハープの鈴木司は、以前エディ暮とも一緒にやってたことがあるらしいんですが、元々はギターだ ったみたい。それが手のケガでハープに移行したらしいのですが、「生え抜きの」ハーピストとは違う「軽さ」 があるように思えるのって気のせいでしょうか?
ま、ワタクシの印象としては、あまり「シカゴの呪縛(?)」に囚われていないよな感じですが、 彼らのライヴ・ステージとかを聴いているワケじゃないので、単なる「思い込み」かも。

ベースの藤沢健一は東京スクールオブミュージック専門学校 Bass 科講師なんですね。
最初は一ヶ月だけ手伝ってくれ、と鬼ころしに入ったらしいんですが、そのままになっちゃったみたい。
そして実質的に彼が「鬼ころし」のサイトの管理もしておられるようでございます。

ドラムの安在にゃんた龍朗は、たま~に里帰り途上などに弘前にも現れて、セッションにも顔を出してくれたりするのですが、やはり、別格のドラムを叩いてくれます。
確かに場数も踏んでいるし、広い範囲の音楽を聴いてもいるのでしょうが、やはり「彼ならでは」 の資質が、初めてやる曲であっても、ツポをハズさないドラミングの基になってるんじゃないでしょか?
どんなにいろんな音楽を聴いてても、また教室に通っても、さらに何度もステージに上がってても、ダメなひとはダメなままですからねえ。
そんだけドラムって、表面的な技術よりも、もっと生物学的な(?)資質や適性で決まっちゃうよな気がします。
首都圏におられる方でしたら、ゼヒ一度、そのライヴを聴いてみてください。

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