Pocket Full of Shells

Frank Frost


2004-10-11 MON.


いやあ、実にいいですねえ、このリヴァーブの効かせ具合!
それもハープだけじゃなく、彼のヴォーカル、そしてギターにも「たっぷり」の一歩手前っちゅう豊かなリヴァーブがかかっておりまして、ワタクシなぞ、そこいらヘンに「ああ、南部じゃのう」と感じてしまうのでございますよ。

ま、以前 Willie Kent はんのとこで出てまいりました、「アホ声」っちゅーヤツ、しょーじきこの Frank Frost さんもその部類に入るんちゃいまっしゃろか?
さすがにこの録音からン十年もたった CX のミシシッピー・クロニクル(だったっけ?)での Frost はんはこのよーな伸びやかさが無いぶんアホっぽさ(シツレイだよね、我ながら)が薄れておりましたが、その分、多少ガッカリしたのも否めないワケでして⋯
ホントは「そこ」が彼の声の魅力なんですよね。
ま、ブルース的には(?)円熟した「シブさ」が出てきた、なんて言われるのかもしれませんが、こちらとしては、やはり、あのスっとぼけぶりにがかえって引き立つこの頃の声の方が好きです。

で、この当時の録音スタジオで使っていたのって、やはりスプリング・リヴァーブですよね?
ん?当時はディジタル技術があるワケないだろ、バカなこと言うな、って?

あのねえ、当時はスプリング以外に、鉄板にスピーカーみたいなマグネットとコイルを仕込んで、それをまたダイナミック・マイクの要領で他端で拾う残響付加装置や、全コンクリート造の、いっこも並行する壁面を持たない多角形の部屋にスピーカーとマイクを立てた「残響発生室」なんてえメソッドがあったんでございますよ。
そゆ歴史的な事実を知りもしないでする「知ったかぶり」は醜いよ。がはははは〜!

さて、スプリング・リヴァーブは特定の周波数にピークが来るよな特性があって、いかにも「リヴァーブかけました!」って感じがいたします。
鉄板は独特なゴロゴロ感(?)があって、残響自体が「唸り」効果を持つかの如く、自然に減衰してゆかず、大きくなったり小さくなったり(といっても、それほど長時間じゃないんですが)するクセがあって、ワザと違和感を持たせたい時なんかに使われたようですが、フツーはそれほど使われておりません。
最後の「残響発生室」はエコー・ルームなんて呼ばれたりもしておりましたが、使用するスピーカーとマイクの二ヶ所でナマるためか、やや高域の落ちた甘い音になる傾向があって、しかし、その自然な感じも棄て難く、スプリング・リヴァーブと併用すると、なかなかいい残響が作り出せます。
でも、その構造上、一定以上のサイズが無いと長時間の減衰が得られず、メジャー系の「儲かってるとこ」でもなきゃ、おいそれと作れるよなシロモノじゃございません。

てなワケで、ブルース業界、それも独立スタジオが音を録って、それをマイナー・レーベルあたりから出す、なんてえシーンじゃ、たいてーはスプリング・リヴァーブを使ってたんじゃないでしょか。
そして、南部諸州でのブルースの録音ではしばしば、リヴァーブが効果的に(場合によっちゃあ「過剰」とも言えるくらいに?)使われてて、むしろそのチープな「残響感」が、いかにも南部!っちゅう味になっているように思います。

同様に、シカゴあたりの、例えば Bluebird や CHESS なんてあたりじゃ、どんな機材(というより、周辺機材ですね、むしろ)が使われていたのか、ケッコー興味はあるのですが、あましそこらへんを詳しく記述してくれてる資料が発見できないんですよ。
ま、いまのとこ、ブルースの方から資料に入ってってますから、これが案外、録音機材の歴史、なんてえ視点で斬り込んでいけば出てくる可能性もあるかもしれませんね。
ただね、RCA や Columbia みたいなメジャーに関する資料は出てくるかもしれませんが、南部の独立スタジオあたりだとどうでしょうか?

Lake Charles の Eddie Shuler の Goldband や、New Orleans の Cosimo Matassa のスタジオ、Jay D. Miller の Crowley、Ville Platte の Floyd Soileau の JIN なんてえとこが判るとオモシロいんですがムリだろうなあ。

ただ、ワタクシはディジタル・リヴァーブも「嫌い」ではございません。
なにより、あの透明感がいいし、それに PANDORA あたりともなると、残響特性もアリーナ:ホール:ルームなんてえ減衰時間&減衰特性のちゃうのから選べるし、そこにディレイもかましたりすっと「自然なの」から「不自然なの」までかなり自由に作れて、そしてなにより、あの Eddie Taylor サウンドを楽しむときに、どんなにドたっぷりリヴァーブを掛けても異音を発するシンパイがまったく無い、ってのがいいです!

もっとも、あのスプリング・リヴァーブの「味」、あれはあれで時々欲しくはなるのですが。

これまでの「乳酸」に対する認識の代表的なものは・・・

『運動によってグリコーゲンやブドウ糖などが使われるときに同時に生成されるもので、この乳酸が蓄積すると、通常は中性に保たれている筋肉などが酸性に傾き、体に良くない影響を及ぼす。急な運動や激しい運動後の筋肉痛は、この乳酸の蓄積が原因のひとつと考えられている。』⋯
そう、これが「ジョーシキ」でございました。

しかるにっ!なんてリキむむこともないんですが、Science の 8 月号で発表された最新の研究によれば、それは「火災現場に集まった消防車を火災の原因と思い込むよなもの」らしーのです。

どうやら乳酸は老廃物なんぞではなく、エネルギー補給のサイクル「クエン酸回路」の収支が合わなくなった時に発動する別回路の主役なのだそうです。
乳酸はヒドロキシ酸の一種で、化学式 C3H6O3、示性式は CH3-CH(OH)-COOH、分子量 90。骨格筋の速筋線維に多く存在する M 型 LDH という乳酸脱水素酵素により赤血球においてピルビン酸から乳酸が作られます。
逆に、乳酸は遅筋や心筋に多い H 型 LDH という乳酸脱水素酵素によってピルビン酸に戻され、そのピルビン酸はこれも遅筋や心筋に多いミトコンドリア内でアセチル CoA となり、アセチル CoA 1 分子あたり 3 分子の NADH(ある種の酸化酵素)、1 分子の FADH2(電子のキャリアと思われる)、1 分子の GTP(筋の運動エネルギーに関わっていると考えられている物質)、そして 2 分子の二酸化炭素が放出される、という形でエネルギーと老廃物になって行きます。

つまり、通常の運動状態でクエン酸回路によるエネルギーの補給が枯渇しかけたときに速筋線維の M 型 LDH という乳酸脱水素酵素によりピルビン酸を遅筋のミトコンドリアに送りこんで「当座の」アセチル CoA の生成を助けるキャリアとなっているのが乳酸だ、ということになります。
したがって乳酸は「老廃物」ではないし、疲労原因物質でも無い、と。

ま、なんだかワケわからん単語がイッパイ出て来て、ウマくダマされてるよな気もしないじゃありませんが、なんにしても、乳酸を溜めないよ~に!なんて言ってきたのはナンセンスだったってえワケですね。
それより、筋繊維周辺の炭酸ガスをいかに効率よく血液中に持ち出させるか、がミソ、っちゅうことでしょうか?つまり呼吸によるガス置換を促進すればいいのかなあ?

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